78話:リリィ奪還作戦 その5
「ここが言ってた店か……」
金色に輝くネオンのような明りに照らされたピンクの豪華な建物。既に空は暗くなっていたので眩しく感じる。
「いらっしゃいませお客様」
「あの初めてここの店に来たんだけど。どうすればいいかな?」
「かしこましました。本日は当店を初めてご利用いただきまして誠にありがとうございます。それではこちらの書類にサインと入会費300ダラーのお支払いをお願いいたします」
「おう」
おじさんに言われたとおりの内容で間違いはないようだ。だがそれは置いておいて……。
「あの……どこかでお会いしたことありませんか……?」
髪型と服装は違うけど。顔つきが知っている人物と似ているような気がする。
「…………いえ」
「ロッソ先輩ですよね?」
「そのような人物は存じ上げません」
「…………」
どう見ても声も同じだ。うん、ロッソ先輩がここの店のカウンターで受付けのボーイになりすましているようだ。
「リリィ先輩がここに居ること知っていたんですね」
「うっせぇ新人。いまの俺は入りたてのボーイなんだよ! 頼むからお前と話してるところをオーナーに見つかったらやばいんだよ!」
ロッソ先輩がボソッと小声で受け答えをしてくる。オーナーという事はジェスタか?
「わ、わかりましたロッソ先輩。とりあえずここの中に入らせて欲しいです」
「ああ、丁度手を借りたいと思っていたところだったんだ。俺だと身分の違いってやつでリリィに会うことが難しいんだ」
「えっ、お店のスタッフ同士でそんな決まりがあるんですか?」
「うん。だからお前に頼みたいといっているんだよ。ほら、いま新規だけどVIPカードを作ってやった。お前の紹介してもらったおっさん。知ってるだろ?」
「あっ……」
つまりロッソ先輩も同じようにおっさんから教えて貰ったわけか。いったい何者なんだあの人。まあいいや。
「あの人。ここの店長なんだ」
「……ええっ!?」
屋台のおっちゃんが個々の店の店長ってなにそれっ!?
「ああ、詳しくは元店長だ。ジェスタが強引に奪い取ってしまったからああやってその日暮らしをしているんだとさ。それでわけを話したら手伝ってくれたわけだ。一応他の仲間が来たら同じように紹介してくれって言っておいたからさ。ほら」
「あっ、ルナ先輩とレフィア先輩!」
「あら、ここに居たのね。私達を放っておいてなにしていたのかしら?」
「んもぅサトナカちゃん! あなただけ抜け駆けってズルいわよぉ!」
「自分だけなんか楽しんでてすんません!!!!」
その場で振り向いて平謝りするのだった。
「それとロッソちゃん」
「うっすルナ姉」
「私達心配してたのよ」
「うっす、後でなんでも言うこと聞くから今は見逃してくれよ」
「ん? 今何でもするっていったわよね? じゃあ仕事終わりに美味しい料理でもご馳走になろうかしらね」
「ロッソ! 私も美味しい物と可愛い服。買ってよね! 言い訳は聞かないから!」
「うへぇ……ダブルでやべぇ……」
「どんまいですロッソ先輩。ちなみに自分はいいですよ」
「お前の優しさに甘えさせて貰うぜ……ははっ」
とりあえずロッソ先輩が無事で良かった。
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