77話:リリィ奪還作戦 その4
ギャング組織のボスから得た情報を元に7番城街にある繁華街地区に訪れた。あそこからここまで約10分は掛かった。ニンジャランをしなければおおよそ30分は掛かったと思うので短縮に成功できたと言えるだろう。ただ、リチャージ時間が必要なので2時間後にはなるが。
「燃費の悪さは目立ちますが大丈夫でしょうか?」
「致し方がないわサトナカちゃん。事が事だからね」
「そうね。私でも1時間に1度で抑えているからまぁ無理はしない方が良いわ。私が教えたのはあくまで貴方の体力を考慮してでの話しなわけだし」
それなら何か別の移動手段を用意すべきだったんじゃないのかと思ってしまったが、逆にこの服装で乗っていると目立つって言われたから何も言わなかったが。せめて竜車はあっても良かったのでは……?
「それは兎も角。ここから先はアマノジャクの幹部が支配している繁華街よ。気を引き締めて仕事に取りかかりましょう」
「腕が鳴るわね。ついでにいい男も探さなきゃ」
「しっ、仕事ってレフィア先輩が言ってらっしゃるのに何言ってんすかっ!?」
とても余裕のあるルナ先輩である。
「構わないで新人。この人の言っていることをいちいち受け答えしてたら切りが無くて疲れてしまうわよ。ほら、行くわよ」
「りょ、了解です……ははっ」
「はぁ~ん待っててあたしの王子様っ!!」
「これからリリィ先輩を救出するのに……」
多く人の行き交うど真ん中で、両手を胸の前で組みんでキラキラと目を輝かすルナ先輩を見て思わずボソッとぼやく自分である。その先輩をおいていこうとするレフィア先輩の後に続いて、俺も彼女の背中を追いかけるように歩き出す。
「デボラの酒乱のお店はこのエリアって聞いたのは良いんですけど。どこも酒場ばかりで分りづらいですね」
「よく見回しなさい。あなたの情報が頼りなのよ」
「りょ、了解です……!」
責任重大だ……! でも1つ聞き忘れていたような気がして思い出したのだが……。
「……やべぇ、店の場所の詳しい目印とか教えて貰ってなかった」
「ん、何か言った?」
「いえ、なにも!」
いまの独り言をレフィア先輩に聞かれなくて良かった……! とりあえず。こういう時は現地での情報収集をすべきだな。
「レフィア先輩ちょっとここで待って貰えます? 少し情報を煮詰めたいので近くの人達に聞いてきてみます」
「だったら私もついて行くわよ」
「あいえ、先輩のお手を煩わせるのもいけませんし。それにルナ先輩と一緒に居た方がいいかと思いまして……」
はぐれることはしてないけど、ルナ先輩が絶賛男あさりに夢中になっているからだ。あれは放っておけないし、むしろ目立ちすぎだっ!?
「ねぇ、そこのあなた。私と飲みに行かない?」
って言いながら手当たり次第に通行人の男達に声をかけているからだ……。マジで節操ないっていうか……、度胸の塊というのか……、分らん……分らないぞ先輩の言動が……!?
「そうね。ええ。そうね。私は君と一緒に街を歩きたかったのだけど。あの人のお守りに徹するわ」
「すっ、すみませんね」
そう頼み込んだらレフィア先輩がムスッと表情を変えて不満を漏らしてしまった。なんかごめんなさいね手際の悪い後輩でっ!?
「じゃあ、行ってきます!」
そそくさとその場を離れるように走り去った。背後からチクチクとした視線を感じるのは気のせいだ。うん気のせいだよ自分。
「にしても。いろんな店がひしめいているかんじがすごいな……」
まるで東南アジアの屋台街道のようだ。揺らめく煌煌とした照明の仲で、屋台とか普通の建物が入り交じって商いをしているところが面白い気がする。ちょっとしたつかの間の観光気分を体験中だ。
「らっしゃいらっしゃい! 上手い肉の串ができたてだよー!」
「さぁさぁ世にも珍し麺料理が立ったの3ダラーで食べれるぜ!」
「北東の氷でキンキンに冷やした麦酒はいかがー」
あぁ、どれも全部並んで買い食いしたな。仕事中なのがもの凄く寂しくて残念である。ちょっと羽目外して麦酒でも……。そう立ち寄った先の屋台で俺は一杯だけ買って飲んでしまった。
「――んく、ぁああああああああああああああああああ、うんまあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
なっ、なんという至極の一杯なんだっ!? こんなにキンキンに冷えた麦酒は初めてだぞっ!?
「もう1杯いかがですーおにーさん」
「是非もう1杯!」
「よっ、にーちゃん。よかったら俺んとこのパイタン麺もどうだい!」
酒に麺……なんて悪魔的な響きなんだ……!! ここは大阪の食い倒れが出来る場所なのかよっ!! 最高じゃないかっ!! 物価も安くて沢山食べれるのは本当にありがたい話だな!!
「ふぅ……ちょっと腹一杯になったな……」
さて、最初に忘れてた事をやらないとな。腹ごなしは出来たことだし。仕事の再開だ。
「すみませーん。ちょっと聞きたい事があるんですけど」
「んーなんだー?」
通りすがった屋台の店で、上手そうな焼きそばみたいな料理を作っているおじさんに声をかけてみた。
「ここらへんで偉い美人さんとお酒を飲めるお店があるって聞いたんだけど。そこはどこかな? デボラの酒乱っていうお店なんだけど」
と聞いてみると。
「んー、あんた。ちょっと厄介な店に行こうとしているようだな。危ねえからやめておけ」
忠告を受けてしまった。それでも俺はやり遂げないといけないので。
「その美人さんにどうしても会いたいんです……!」
すこし言葉を強くして訴えかけると。
「そうか……。おめえさんはそこまでして女に会いたいって言うんだな。分った。店の場所は教えてやる。だがな。その店は普通の店じゃないんだ。会員制っていうやつで誰でも入れないようになっている所だから。ようは必要な物を用意しないとそこには入らせてもらえないんだよ」
「その必要な物は……」
カードとかだろうか。
「ほら、コレがあの店に入ることの出来る専用の会員様カードだ」
やっぱり。自慢げにおっちゃんが手に持って話をしている金色のカードがそのようだ。
「それはどうやったら手に入ります?」
「そうだな。それ相応の金を用意しないとむりだと思うぜ」
大金が必要になるっていことか。どうする?
「ちなみにいくらです?」
「そうだな。300ダラーだな」
意外とリーズナブルかも。もっと倍額の値段かと思った。
「購入場所はそこのお店でいいのか?」
「ああ、そうだな。とりあえず行ってみるといい。それとついでにこれ買ってけ。3ダラーの情報料をもらうぜ」
「ありがとうおじさん」
手提げ袋に入っている容器の入った料理と引き換えに、おじさんに料金を手渡してそのまま教えて貰った道順を辿ってデボラの酒乱の店に向かっていった。
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