75話:リリィ奪還作戦 その2

「どう調子はどうかしら」

「これは……いいモノですね……!」


 非殺傷の弾薬の威力は想像以上のモノだった。試し撃ちにと誘われてルナ先輩と同行し、ジェスタが経営する店の所在地を知っていると思わしきギャング組織の戦闘員を相手にとり、その威力を目の当りにした俺は、感極まる気持ちで戦っていた。これが俺のまともな対人戦闘のデビュー初日でもある。


 俺達がいまいるギャング組織のアジトは元貴族の屋敷だ。現在の戦場は窓から外の景色が見えている廊下での戦闘。立ち位置としては逆Zの形で交戦中だ。彼らがこの場所を根城に活動しているという情報を聞きつけたレフィア先輩が作戦を立案し、それを受けて俺とルナ先輩が現場にいるわけで。


『おいどうしてあの黒服連中がここにいるんだよっ!!!?』


「大分ビビってますねギャング組織の人達」


 そう言いながら相手の攻撃に応じて銃を構えて発砲を繰り返す。


「そうよねー。だって何の見当もつかない理由で自分達の拠点が襲われていからね」

「なんか申し訳ない気分で銃撃戦をしている感じがしますっと……! あっぶねぇっ!?」


 鼻先数センチの先にヒュンと銃弾が過ぎ去っていった。


「やっろうふざけやがってっ!」

「サトナカちゃん。以外と銃撃戦を楽しむタイプの男の子なのね」


 自分でも気づかなかった性格をルナ先輩に見いだされることとなった。俺が人を撃つことを楽しんでいるだって……? まるでアニメに出てくる主人公のようじゃないか。


「でも仕事だからやるしかないですよね。あれだけ先輩達が自分に言ってきたんですから」

「ふふふっ、まぁ私達にもその責任はあるかしらねっと」


――ズダンッ!!


『ジョニーがミンチになりやがったっ!!!! 畜生あのアマ。容赦しねぇぞっ!!!!』


「あらやだ。あたしあの男の人から熱視線をうけちゃっているわね。嫌いじゃないわ!」

「仲間を撃ち殺されたのだから当然のことですよ」


――カシュ、ズドン!


『リックスが気絶しやがった……! なんだあのスナイパー!!!? 全然スナイパーしてねぇぞっ!!!?』


「それ一番気にしてる所だからなっ!?」


 とりあえず。あの野郎に一発頭に銃弾をぶち込んでやった。狙いは寸分狂わずに命中。日頃の行ないが良いような気もするな。それにしても鎮圧弾の威力は凄いな。手足以外の箇所に着弾できたら一発で気絶させられるのだから凄いとしか言いようがない。


「さっすがサトナカちゃん! 貴方の狙撃の腕には惚れ惚れしちゃうわ!」

「ネメシスに居る上で。狩をするハンターとしてこれくらいの芸当はできないといけないってレフィア先輩と。もう一人の師匠に教わっていたんですよ!」

「なるほどねぇ。ちなみにその師匠って女なのかしらっ!?」

「何をいきなりそんな質問するわけなんですっ!?」


 唐突な質問を投げれて思わず手元が狂ってしまい。狙っていた相手とは違う場所に弾丸がそれてしまった。


「それでどうなのっ!?」


 まるでルナ先輩が近所の叔母ちゃんみたいなしゃべり方を俺にしてきている。


「女の人だとなにか不味い事でもあるんですかね……?」


 と答えたらショットガンを地面に落とし、口元に両手を当てて、


「サトナカちゃん……あなたの両手は幾つあるのかしら……」


 そう言葉を返してきた。何が言いたいんだ????


「へっ、何の事です? 普通に2本あるじゃないですか」


 と答えると、ルナ先輩はやれやれといった感じで両手を肩まで挙げて首を振った。知らんがな。思わず言葉にだそうかと思ったけど、困惑した表情で留めておく事にしておこう。


「ふふっ、今後のサトナカちゃんの恋路が気になっちゃったからついお姉さんからかっただけだから気にしないで頂戴ね。そこまで深い意味はないからねー」

「あのさあ……」


 からかい方が極端すぎるんですよねぇ……。と、そう無駄口みたいな会話をしつつも戦闘は続いており。


「あら、あいつら機関銃を持ち込んできたわね」

「えっ、大分頭がヤバイ奴が来たって事ですよね……?」


 あんな鉄の塊をこちらに向けられて平然としていられる訳はなくて。


「逃げるわよ。場所を変えて再挑戦よっ!」

「やっぱりそうなるんですねっ!!!?」


 地面に落としたショットガンを拾い上げたルナ先輩が、敵とは反対方向に走り出す。


――ズドドドドドドドドドド!!!!――


『やっちまえぇ!!!!』


「何がやっちまえだくそがっ!!」

「悪態をついてないで場所を変えるわよ!」


 了解と短く答えてルナ先輩の背中について行く。するとその途中で、


「待たせたわね二人ともっ!! ここは人狩り専門の私が変わるわ!!」

「レフィア先輩っ! 殿をしてくださるのですかっ!?」

「そうよ! だから早くギャング組織のボスを生け捕りにしてきなさい!! 合流地点は事前に伝えたアジトでね!!」

「了解です!!」

「頼んだわよレフィアちゃん!! 無事でねっ!!」


 援護に来てくれたレフィア先輩がニンジャランで俺達の来た道へ向かって拳銃を両手に走り出していった。

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