73話:採取クエスト『新型の弾薬に必要な精製素材をあつめよ』その3
まるで今の自分は冒険者の様な気分を体験しながら廃墟の街を歩いているかのようだ。
「俺も一度は魔法とか使って勇者みたいな事をしてみたいな」
というよりも、そもそも俺が転生するときに女神様みたいなのと出会うことはなく、そのままこの世界に来たわけだから無理な話だったな。まぁ、おかげさまで金欠で生活しながらも楽しい狩猟生活を送れているわけだし満足かな。
「うーん、今頃あいつらどうしているかな?」
実は今回の任務ではサンデーとホワイエットが一緒に参加している。今は都市から離れた専用のキャンプでのんびりと休んでいるに違いない。連れてきた用途としてはまぁ、アルシェさんからの交換条件で荷物を運搬する為に使わせろというお願いから始まった事で。
「連れてきたのはいいけど。ここまで連れてこれないのはちょっと不味いかも」
お世話に関しては大丈夫だ。あいつら勝手に周辺の動植物を取って食べると言っていたから問題はなさそうだ。こんなへんぴな場所にわざわざハンターはくる事はないので。狩猟被害に遭う事はないだろう。単純に俺の元に来る事が心配なだけだ。
「後方支援要員って名目でルーノ職長には説明したけど。他のメンバーはあいつらの変身する姿を見てビックリしてたからな……」
特にレフィア先輩が一番見てはいけない物を見てしまったみたいな顔をしてたしな。ははっ……。思わず拳銃を出してあいつらに襲い掛かるかと思ってヒヤヒヤしてたぜ……。
「あれかな……? ヤポムの木は情報だと旧公園に植樹されていたってルナ先輩が言ってたし。あれだろ」
独り言を話しながらあちこちのエリアを歩いて30分が経っていた。既に活動予定時刻の3分の2を費やしており、あまり長居して居られない状況に立たされている。そんな中で見つけることに成功した? と思うと少し荷が軽くなった気分だ。
「……よし」
銃を構えて周囲をチェックして安全を確認。入る直前に何かに出くわすということはなさそうだ。このまま施設の中に入ってもよさそうだろう。
「こっちはこの服だからモンスターとは戦いたくはないかな……」
対人用に作られた衣服ということもあり、それ以外の相手には通用しない代物だ。無理をせずに安全第一で採取作業にとりかかることにしよう。
「……これだな」
手元に渡された絵を元に照らし合わせ、ようやくヤポムの木を見つけることができた。こいつの表皮と枝が複数必要になる。俺はすかさず腰元に用意しておいた伐採用のマチェットを使い、適当な大きさにカットしつつ素材を集める作業を始めた。
「こうたたっ切るとバイーンてしなるのか。まるでゴムの棒に刃物を振っている感じだな」
そう体感しつつ手際よく採取して10分が経過。少し予定時刻より5分弱ほど遅れてしまっていた。急がなくては。
「表皮の削り方は……こうか」
刃物の峰に左手を、持ち手に右手を携えて、角度を調節しながら木の表面に刃を立てて少しずつ下に滑り降ろしていく。すると、
「おいおい、刃に合わせて形を変えやがった」
刃先が思うように食い込まない。どうしたものか……。
「これがダメなら。これでどうだ! ふんぬっ!」
――スコーン!
少し大きな音を立ててしまったが。上手く木の表面に刃を食い込ませることができた。あとは刃の角度を変えてさっきの要領で削っていこう。
それから5分が経過し。ようやく目的の素材を集め終えることに成功したのだった。収集した素材は、全部背中に背負うために用意したバックにしまって保管してある。これで両手が塞がることはないだろう。多少パンパンになっているが大丈夫そうだ。
「とりあえず。この場所を後にするか。どうもさっきの音で近くのモンスターに気づかれたみたいだしな……」
――グェ! グェ! グェ!
「鳥がしゃがれた声を出しているみたいな鳴き方をしているな」
鳴き声的に軽く翻訳すると。
『おい、あっちで変な音がしたぞ。ついてこい!』
「くそ、これって群で行動するモンスターじゃないか!」
まぁ、素早く気づけたので今すぐに離脱すれば問題はなさそうだ。いまはそのモンスターの群と相手する暇はないからな。俺はそのまま素早く来た道を思い出しながら地下水路に戻ることにしたのであった。
俺は自然に満ちあふれてしまった旧公園の中へと脚を踏み入れた。
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