72話:採取クエスト『新型の弾薬に必要な精製素材をあつめよ』その2

「くそっ、ここまじでダンジョンみたいに入り組んでるな……」


 臭い。そして地面が汚いのダブルパンチに鼻がおかしくなり、気分が優れない。

 この地下水路は悪人達によって違法に建築された場所である。ボルカノにいつも見ているように綺麗な筈もなく、いつ崩落してもおかしくない感じがしてて怖い。つまり。


「ここはできれば通りたくはないかな……」


 しかし帰り道はここしか知らないので、再び訪れることになるのだが。


「うーん一本道というより、いくつかの道を掘って迷いやすくした感じなのかな……?」


 歩きながら考えること数分。大体の地下通路の全体像は理解できた。行き止まりをワザと複数箇所作り、侵入者の体力を奪っていくタイプのダンジョンのようだ。正解ルートは一本道だけなので、間違えさえしなければ余分な時間を費やすことなく向かい側にいけそうだ。


「ここが例の区画か……。大分街並みがボロボロになってるぞ」


 壁によって遮られた区画の街並みはまるで古代遺跡のような景観をしている。至る所にツタのような植物が建物の外壁を侵食しており、さらには手入れされていないこともあって、屋根の崩落している建築物がおおく見られる。


「この場所にある『ヤポムの木』の表皮と枝を沢山あつめないとな。あとは出来れば痺れ毒の持つ生き物とか植物があればいいかも」


 ルナ先輩に提案された新型の弾薬は『鎮圧弾』というゴム製の弾を使った非殺傷弾薬のことだ。これを使う事で殺傷せずとも気絶などの状態異常の攻撃で対象をダウンさせる事が出来るらしい。いつも実弾を使っている身としては、効果がどのような物なのかが分らないので気になるところだ。もしかすると今後の狩に役に立つかもしれない。


「いちおう念の為に通常弾と貫通弾をできるだけ持ってきたのはいいが。どんなモンスターが生息している分らないから気をつけておかないとな」


 もし見つかれば問答無用で戦闘が発生するだろう。気を引き締めて挑むしかない。


「採取クエストってこんなにハードな内容だったかな」


 と考えていたところで。


――ザザッ。ドス、ドス。


「おっ、あれは」


 縦長の顔に爬虫類の目。四足歩行で歩く、胴長で長い尻尾を生やした中型のモンスター。


「確か……ロックリザードだったよな」


 草食系の爬虫竜種モンスター『ロックリザード』である。今のところ俺の存在には気づいていないようで、のんびりと地面に生えている雑草を餌にして食事を楽しんでいるようだ。


「たまにはモンスターウォッチングがしたいな」


 ずっとこのまま見ていたい気持ちはある。でも今は時間が押しているので今回はスルー。


 そのまま俺は目的の素材になる木を探し続けたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る