71話:採取クエスト『新型の弾薬に必要な精製素材をあつめよ』その1
「よっと!」
屋根の上をニンジャランでスタタタと伝い走りながら目的の場所まで向かう。今から向かうところはモンスターが生息している区画だ。なお、この廃墟都市ではモンスターが人間の中を徘徊するような事を防ぐために、専用の防御壁が設けられている。
「犯罪者の建てた違法建築物が本当に役に立っているのか?」
物珍しさもありながら奴らの悪さは何処まで際限がないのやらと呆れながらも、実際に目的地に近付くにつれてモンスターが漏れで出てきているような様子は見受けられないので機能しているのだろう。
「よし、そろそろだ。あれだな」
前方の奥深くに見えてきている超巨大な灰色の壁。あの向こう側にはモンスター達が住んでいるという。どんなモンスターが住んでいるのだろう。まだ見たことのないモンスターを見れることに嬉しさ反面、プライベートでウォッチングが出来たら良いのになと言う悲しさ反面の気持ちだ。
「さて、あの壁をどう乗り越えようか」
壁との距離約200メートルの所で立ち止まり、前方の景色を手で仰ぎながら眺める。
爆破で穴を作るっていう手もある。けど、それをしてしまえば人間の住むテリトリーに小型のモンスターが侵入する可能性がある。悪人だからいいというわけでもないし。そもそも復興する時の妨げにもなりかねないので、今回は持ち込むことはしなかった。
「確かレフィア先輩の情報だと、壁を抜けて向かい側にいける地下通路があるんだっけ?」
アマノジャクが所有する違法に作られた地下通路があるのだとか。そこを使って行けば通り抜けることができるらしい。
「まさか悪人の作った物に頼るだなんてな。複雑な気分だけど。使えるなら利用するのがセオリーなのかな」
あまり気が進まないけど他に手段はないのでやるしかないわけだし。
「うーん、どこだどこだ。地下通路に通じている建物って」
ヒントみたいな事をレフィア先輩から口答で伝えられたのだけど。酒場ってどこの事をさしいるんだ?
「酒場っていうからには札とかがあるはずだよな」
廃墟でも整備された物は目につきやすいはずだ。ここから目を凝らして見渡しても見えないとなると。
「地道に探すしかないのかな?」
ただ素直に一々一軒を調べる訳にはいかない。時間がないんだ。俺に与えられた所要時間はたったの3時間だけ。段取りを考えると1時間半が限度になりそうだ。
――20分後。
「あっ、ここか。上からだと完全に死角になっていたわけだ」
本当に苦労した。目的の場所は路地裏にあったのだから見つからないわけだ。とりあえず手入れされた扉に触れて中へと入っていく。
「うぁ、だれも居ないって思ってたんだけどな……ははっ」
「誰だぁおめぇ!?」
「侵入者かっ!」
ぶっ、不用心すぎたかも。廃墟だからだれも居ないと思ってたのが不味かった。俺の目の前にタンクトップ姿のマッチョで厳つい顔をした怖そうなおっさん達がテーブルのイスに座り、俺を見て驚いた様子で声を上げた。どちらも片手にはカードを手に遊んでいる最中だったようだ。なんか……ごめんなさい!!!!
「あっ、あれぇ。ここ酒場じゃなかったのかなぁ?」
「あん、悪いがここはとっくの昔に閉店してるぜ」
「じゃあ、なんでおじさん達はここでカードゲームをしているんです?」
「んなこと決まってるだろ。俺達はここのオーナーから頼まれて管理してんだよ」
「つまり警備員さん達なんですね……? おつとめご苦労様です」
とりあえずオーバーにお辞儀をして敵意なしのアピールを振りまいておこう。銃撃戦とか勘弁してほしいからなっ!!?
「ああ、そういうことになるな。だからとっとと店から出て行きな。ここよりいい歓楽街はいくらでもあるからそっちで遊んでいきな」
「そうですか……それは残念です……」
ターゲットは2人。片手には武器にはならないカードのみ。腰元には拳銃がホルスターで携えてあるな。利き手に物を持っているなら対応は遅れるはず。俺はそっと右手を背後に回しながら恭しくしつつお辞儀をしておき、そのまま手に触れたそれを抜き取ってコロンと前へ投げつけた。
「やっ、やばいっ!!」
――バシュ!! キィイイイイイイイイイイイイイン!!!!
「めっ、目ガァっ!?」
「くそガキ何をしてくれとんじゃぁっ!!!?」
「ごっ、ごめんなさい! 今は急いでいるんです!! ちょっと痛いけど我慢してくださいねっ!?」
――バコッ!! ドスンッ!!
「ハゲブッ!!!?」
「おっ、おいアリに何しやがったっ!?」
「えっ……その銃のお尻の部分で殴って気絶させただけですよ?」
「ふっざっけんなぁてめぇっ!!」
「1つ取引をしません?」
「あぁんっ?」
「この先にある壁を通り越せる地下通路ってここからどうすればいけます?」
「んなもん自分で調べろよばーか! けっけっけっ」
「そうですか……残念です」
うん、相手する時間がないな。なにか有力な情報が欲しかったんだけどなぁ……。仕方が無いか。
――バキッ!! バキッ!!
「ふぎゅっ!?」
「よしっ、制圧完了っと。はぁ……人を殴りたくなかったなぁ……」
殺すとまではいかないで良かったけど。これはこれで胸に響くな。とりあえず目を覚まされて仲間に知らされてしまったらいけないので、拘束具を使っておっさん達を身動きできないようにしておいた。
それから少し時間をかけてしまったが。キッチンの床下スペースに隠し階段があったので入ってみると。
――ザアアアアアアア。
「ここがそう……なのか……?」
地下通路に辿り着いたようだ。
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