69話:ポリス組織『アマノジャク』の幹部を追え! その4

「すみませんルナ先輩。俺、勝手なことしてしまって」

「その事はいいわ。いったでしょ? 私はあなたの若さに賭けてあげるからって言ってるんじゃないの」

「それも自分が先輩の言う後輩の人と似ているからなのですか……?」


 俺は俺だ。後輩の人と一緒にしないでくれよ先輩。


「それもそうね。あなたの行動があの子とよく似てたし。背中の面影も似てたからかしら。あの時の事を後悔しててね。それで今回は追いかける事にしたのよ」

「よく分りませんが。追いかける事をせずにその人を亡くしたのですね」

「素敵な子だったわね」


 そう言葉を返すと少し顔を曇らせたまま頷くルナ先輩だった。


「さて、暗いお話を吹き飛ばすような事をいまからしましょうか!」

「はい!」

「いい返事よサトナカちゃん! じゃあ、今の状況を軽くおさらいしましょうか」

「よろしくお願いします!」


 室内に設けられた2つのソファーに座って対面になり、俺とルナ先輩は話を始めた。ないようはここで起きた事について、そして今後の作戦計画の練り直しだ。


「あなたのハンタースキルには目を見張る物があるわね。足跡の種類と数を特定して何が起きたのかについて把握できるというのは素晴らしい事よ」

「はい、俺の所見で言える事は。大体これくらいになりますね……」


 このもやっとした気持ちはなんだ? わからない。あの高級品の靴は二つだった。あーもうっ! 訳が分らないぜっ!! 要は2人の幹部がいて、多分だけど、リリィ先輩とロッソ先輩が座席に座っていた幹部を暗殺か尋問しようとしていた際に、扉にあった足跡の人物と取り巻きが現れたからそれで何かのトラブルがあった。ルナ先輩とも離してたが、これ以上の事は分らないままだ……。


「それでね。リリィちゃんはおそらくもう1人の幹部について行ったのかもしれないわね。理由は分らないわ。現状、私達には互いの安否を連絡する手段がない状況だから何も私からは話す事ができないわね。小型の鳥を使ってアジトに連絡をとりたいけれどそれさえも用意できてないわ。ほら、闘技場で戦う時に持ち込めなかったでしょ。それ以降はアジトに戻る事なんてしてなかったから」

「じゃあ、自分達はどうすれば良いんです?」


 と半ば諦めムードで話をすると。ルナ先輩が指を立てて横に振り笑顔を浮かべて。


「ロッソちゃんを探しに行けばいいのよ」


 手がかりの人物であるロッソ先輩の所在地を探ることを提案した。


「でも、ロッソ先輩はどこに? 足跡を見る限り、単独で部屋を出た要ですし」

「彼の事だから単独での作戦をとることはしないわよ。いくつかあるアジトで。つまりこの近くにあるアジトに行けば彼と出会える筈よ」


 何もしないよりは良いかもしれないということか……。だったらやるしかないだろうな。


「わかりました。物資の補給もかねていきましょう先輩」

「その思いっきり。若くて良いわね……」

「そうです? 普通だと思いますよ?」

「私ももう少し若かったらあなたのように熱い思いでがむしゃらにやっていたかもしれないわね」

「いまでもルナ先輩がその気になれればきっと上手くやれると思いますよ。自分なんてぽっと出の引きこもり男だったのが今はこうして何故か不思議と上手く生きてやれているんですから。まぁ、ヘマをする事は多いんですけどね。ははっ」

「ふふっ、そういう謙虚な考えはお姉さん嫌いになれないわね。いいわ。私もほんの少し頑張ってみようかしら」


 こうして俺とルナ先輩は闘技場を後にし、そのまま近くにあるアジトの幾つかを訪れてみることにしたのであった。そして、


『わりぃな。リリィの力じゃもってせいぜい2日くらいが限界だと思う。あいつの声の力には決定的な弱点があるからな。いまは側にいる幹部を騙せてはいるはずだが、大人数の場合だと不味い事になりかねない。みんなには悪いが。俺の落としどころを探してくる。追伸:ジェスタという幹部の女に気をつけろ。あいつはヤバイ。覚悟があるなら俺の残した手元の資料を活用してくれよな』


「ロッソ先輩の置き手紙ですよこれ……」


 闘技場から離れて数キロ先にある3つめのアジトで、俺はロッソ先輩の残した置き手紙を見つけて手に取り、ルナ先輩に分るように声で読み上げた。ロッソ先輩はルナ先輩の予想とは違った行動を取ろうとしているようだ。


「……彼らしくないわね。彼から感情的な熱意を感じるわ」

「つまり頭にきてですか?」

「そうとは違うわね。仲間思いの彼だから。おそらくリリィちゃんの特性を思って少しでも速く行動に移そうと私達よりも先に向かったのだとおもうわ。行き違いになってしまったわね……。無事だと良いのだけど」

「そういうば思ったのですが。今回のポリス組織はそんなに手強い相手なのですか?」

「そこらのギャングよりも計り知れない組織よ。見たでしょあの闘技場での出来事。あれを普通にやってのけるくらい裏社会の勢力のなかでもナンバー3に格付けされている奴らなのだから……!」

「……ナンバー3ですか」


 あまり実感が湧かないけど。今俺が仕事で相手をしている組織の規模がどれほどの物なのかはある程度は理解することができた。


「つまり金持ちのポリス組織なんですね」

「ええ、そうなるわね。だから気をつけて仕事をこなしていかないとミスがあれば命がかかってくるから。ごめんなさいね。まだ入りたてのあなたに酷な仕事を押しつけてしまって。少数精鋭の私達にとって、今のサトナカちゃんは大事な戦力なの。だから」


 と言葉を区切り、ルナ先輩が指を俺に向けて突き出して、


「死ぬ気になって仲間を救う覚悟を持って生き残りなさい!!」


 そう俺に熱意を込めて伝えてきた。


「はい!!!!」

 

 俺はその場で力強くルナ先輩に返事をするのだった。

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