61話:ネメシスの制服に袖を通し、新しい住処に落ち着く。

 セイバーライフルの話を終えた俺はその日の夜にネメシスの仕事に出ていた。今日は俺をメインにした入団式が執り行なわれる日である。


「レフィア先輩。自分はどうすれば良いですか?」

「いつも通り自分らしくやっていなさい。堅い式典じゃないんだから」

「そう……ですよね」


 うん、いろんなジャンクフードがテーブルの上に並べられたリビングでそういったのやるもんじゃないよな。それに取り囲むように先輩達がソファーに全員座り、談笑していてとても楽しそうだ。これだったら余計に緊張しなくて済みそうだ。


「さぁ、そろそろ式典を始めようか。ささやかながらテーブルの上に料理を提供させてもらった。これ全部私からの驕りだ。遠慮せずに食べるといい」

「さすが職長だ。感謝するぜ」

「ありがとーございまーすルーノ職長うふふ」

「さっすがぁルーノ職長! いい男だわ。嫌いじゃないわ!」

「ありがとうございますルーノ職長。この恩は仕事でお返しいたします」

「んもうレフィアちゃんはお堅いこと」

「ははっ、いいじゃないか。そういう所がこいつの良いところだぜ?」

「うふふっ、レフィアちゃんかわいいー」


 あぁ、凄く癒やし展開だ。仕事とは打って変わってこういう先輩達の面をみるのって良いかもしれない。


「あの、ルーノ職長。今日はこんな素晴らしい式典を開いて頂いてありがとうございます!」

「うん、君がこの組織に来てくれてスタッフ全員が明るくなったと私は思っているよ。これからも先輩達と一緒にネメシスが目指す目標に向かって努力と研鑽を怠らないようにね」

「よろしくお願いします!」

「じゃあ、この流れで入職式の中盤いこうかな」

「さんせー!」


 何だか学生みたいなノリだなあ。嫌じゃないけどね。


「では、サトナカ カリトくん。君にはこのネメシスの仕事をする上で必要となってくる物をこの場で与えることにしよう。まずは制服だね。帽子は基本的にアルシェさんが来たときや。国の行事で必要になってくるから無くさないように。もちろん任務中は貸与する制服を絶対に着用することを忘れないこと。防弾防刃対爆性能のある素晴らしい装備だから気に入ると思うよ。靴も忘れずに履き替えることだね」


 結構細かくルーノ職長に話されたけど。ようは仕事の時はこれを着て任務にあたというわけだな。


「ちなみに武器に関連する装備一式は自分の好みの物を調達しなさい。給料入っているでしょ?」


 あっ、やべぇ。


「そうですね……。ちょっと時間が掛かりますがこれに合ったモノを探してみようと思います」

「ふーん。ちょっと訳ありな用でお金が掛かっているのかなー?」

「ふぁっ!?」


 含みのある笑みを浮かべながら俺を見てくるリリィ先輩。嘘を見抜かれてしまったのか!?


「もし困ったらお姉さんがお金。だしてあげるからねー。いつでもいってねー」

「リリィ。そうやって弱みを握っておかしな事に巻き込もうとしないの」

「ふふっ、そう言った覚えはないよーレフィアちゃん」

「でた。レフィアとリリィの喧嘩」

「恋する女達の戦いっていつ見ても嫌いじゃないわ!」

「そういうあんたはどうなんだよルナ姉ぇ」

「うふ。そういうのは女の秘密よ。もし知りたいならあとでトレーニングルームに付き合いなさいよ」

「いやぁ、今日の俺っちはチートデーのつもりだからパスだ」


 と話が盛り上がってしまったので。


「はいはい。そこまでだみんな。今は主賓の新人くんを持ち上げるんだ」


 といいながら手を鳴らして間に入るルーノ職長。


 とりあえずその後に俺はネメシスの制服。デザイン的にはクールな感じだ。スーツと学ランが掛け合わされた黒服と、赤、緑、黒、青のZ旗の模様を背景に、女神ネメシスがライフルを抱きかかえているという、これまたカッコいい感じのデザインが施された徽章が着いた黒のベレー帽だ。明日からこの仕事をするのに必要なものとなるわけだな。楽しみだったりする。


「あとコレだね。はい。無くさないように」

「カッコいい手帳ですね!」


 ルーノ職長から次に手渡されたモノは、ベレー帽の徽章と同じデザインのバッチのついている黒革の手帳だった。持っているだけで高級感があるのが感じられる。


「そのバッチがネメシスの紋章だ。意味は邪悪を退ける正義を掲げる女神だ。君はその一人としてここに正式にメンバー認められたわけだ。よろしくねカリトくん」

「よろしくなサトナカ!」

「うふふ、よろしくねカリトくん!」

「これから仲良くしましょうねサトナカくん!」

「ふん、足を引っ張らないようにね新人」


 先輩達の言葉を受けて俺は嬉しくなり。


「はい! よろしくお願いします!」


 満面の笑顔でそれに答えたのであった。


 式典が終わりその場で解散することとなって、俺とレフィア先輩は街に出ていた。今日から自分の寮に移り住むことになる。


「ここが今日から新人が住む寮よ」

「清潔感があっていいですね」

「まぁ、リリィとかが自主的に建物とか土地を綺麗にしているからね」


 えっ、それって施工業者がいらないっていうわけじゃないか。すげぇな先輩達。


「あんたもアジトの中で1つくらい得意な役職を見つけなさいよね。いまはルーノ職長から雑用係の役職を与えられているけれど。基本的にうちの組織は自主的にいろんな役職をやっているから。やれることをみつけなさいよね」

「事務とか出来た方がいいですか?」

「駄目。それはルナとリリィの仕事だわ。ルーノ職長から直々にメインで任命されているから出来ないわよ」


 なるほどね。と感心していたところ。


「あーっ、新人くんと隣の部屋だー。これから色々と仲良くしようねー」

「あっ、どうもリリィ先輩。よろしくお願いします」


 丁度リリィ先輩が帰ってきたようで、彼女の住んでいる部屋は俺の部屋の隣にあった。


「白々しいわねまったく」


 とレフィア先輩がリリィ先輩に対して、どこ吹く風の態度を取りながら言葉を漏らす。

 対してリリィ先輩は含みのある笑い声を漏らしつつ部屋へと入っていってしまった。


「なんでエッチな視線で俺を見ながら部屋に入っていったんですかね……」


 と疑問に思ってレフィア先輩に話したら。


「夜。絶対に戸締まりしてなさいよ。この辺は物騒だから」


 と言葉を返してきた。忠告なのかな? 


 さらに、


「いい? ここでは地震、火事、雷、隣人の夜這いには気をつけるのよ。言わなくても誰を指しているかは分るわよね?」

「いま最後に変なの混じってません!? 地震より一番不安な物混じってませんっ!?」


 あの声で夜這いかけられたら明日から生きていけなくなるなんて辛すぎるって。


「言ってるでしょ。あの子はどんな手段を投じてでも恋がしたい奴なの。新人があの子の事をどう思っていようが。あの子にとっては年下の男の子は全部自分の物って思っている奴だからね。特に、仲間になって好きになってしまった奴はね……」

「言いたいことは大体分りました。とりあえず気をつけておきますね」


 俺の気持ちなんてどうでもいいっていう恋は好きじゃないなぁ……。好かれるのは嬉しいけど。一方的な恋愛ってゲームやってたときにも感じてたが。


「俺は遊びで恋愛はしたくはない男です。真面目にその人を好きになったら死ぬまで愛する。そういう理想の恋が自分はしたいんですよ」


 リリィ先輩には申し訳ないが。いまは貴方の事を女性としては見れないです。


「だったらそれをそのまま私にじゃなくて。あの子にいってやりなさい」

「いつか言える時がきたらいいます」

「真面目っていうわりに残酷なやつよね君は。女の私から言わせてもらうけど。そいうのって時間が経ってかだと手遅れになるわよ。私の友達はそいうので傷ついて闇に堕ちてしまったから。くれぐれも夜道は後ろに気をつけることね。女に銃を撃たせないで頂戴ね」


 レフィア先輩が自分に対する評価を下げてしまったような気がした。てか脅し方が怖すぎるって。レフィア先輩相手に銃撃戦は敗北を意味すると思うんだよ!


 と思いながらも俺とレフィア先輩はその場で分かれて1日を終えたのであった。


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