59話:里中 狩人の新しい相棒『セイバー』の進捗 その1

 夜の仕事を終えてから2日後くらいになり、カミルさんから俺宛の手紙がホテルのカウンターに届いていた。


「あら、彼女さんからラブレターなのかしら?」

「いえいえ、そういう関係じゃないですよ。武器屋とお客の関係名だけです」


 受付けのおばさんにからかわれながらそれを受け取り、俺は自室に戻って中身を開いて読んでみた。


『おう、ちょっと試作品を作ってみたから一度店に寄って見てくれ』

「早いな仕事が。さすがカミルさんだ……」


 普通、銃ってこんな早く作れる訳がないと思っていたが。カミルさんの場合だとこんなに早く物が作れるわけか……。とりあえず今から店に行ってみようか。


「とりあえず。弾薬だけは持っていこう」


 いつも使っている武器はホテルの預かり所にあるのでそのままにしておく。でもそろそろネメシスの福利厚生の一環で寮に入れるようになるので、いつかは自分の銃を収納できる家具を用意しないとな。


 ということでホテルを出てそのままカミルさんの店に直行した。


「こんにちはカミルさん。いますー?」

「おうカウンターにいるのにその言い方はねぇわ」

「ははっ、まぁそうですよねすみません。あっ、そうそう手紙見ましたよ。銃の試作品ができたそうですね。覗き見に来ました」

「うん、その用意は既に出来ているぜ。とりあえずついてこい」


 カミルさんは俺に背を向けカウンターを離れて、店の奥へと行ってしまった。それに後に続いて俺も彼女の後を追っていく。


「ここは射撃場ですか?」

「ああ、そうだぜ。ここはモンスターの模型を使って銃を試し打ちが出来る場所になっている。模型は対応したモンスターに合わせた甲殻と疑似肉質が使われているから、狩りでつまずいたときにはもってこいの場所だぜ」

「知りませんでした。こんなに良い場所があっただなんて」

「まぁ、武器屋によっては試し撃ちは別の店でやってくれとかの場所もあるからな。よかったな。あんたがここの客でさ。ちなみにこの店での射撃場の利用は無料だ。よりよい物をいろいろと使ってもらいたいというパパの思いがあってね」

「いい心がけだと思いますそれ。今後も贔屓にさせてもらいますね」

「おうよ。ミステルからまた聞いたぜ。あのサンダービーストを手なずけてしまったってよ」


 あっ、もうカミルさんに知られていたのか。


「ええ、まぁその偶然だったんですけどね」

「それをサラッと言えるお前がすげっつうの。あいつが見込んだ限りのいい男っていうわけだ。だったらこちらとしては有望な上客になる奴かもしれん」

「要するに俺の懐を狙っているっていうわけですね」

「あったりめぇだろ。こちとら金もらってサービスしているからな~。まぁ、それはまた今度にしようぜ。今日はそのセイバーっていうお前の名付けた銃について話すことにしようか」


 ボルトアクションライフル『セイバー』。意味は倹約家という言葉が込められている。ぶっちゃけいうと思いついた言葉の中で響きが良かったのもその1つだった。


「とりあえずホラ。こいつを見てくれ」


 カミルさんが射撃場の台の上に置いてある木箱を開けて中身を取出し、そのまま両手にもって俺に見せてくれた。

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