57話:3人目の仲間との対面

「げぉっ!? ご主人がまた新しいメスを連れてきた!?」


 沼地から街に戻ってモンスター牧場の厩舎に戻ると、サンデーが俺の隣にいるサビを見るなり驚愕する。


「初めましてじゃ。あたしはサンダービースト族の王女であり、主殿から頂いた名はサビと申す者じゃ。みたところお主はサンドフットドラゴンの族の者であるサンデーのようじゃな」

「なんで私の本当の姿と名前がわかるんだ!?」

「俺が事前にサビに紹介していただけだ」

「うむ、そうである。これから長い付き合いになりそうじゃからここはひとまず人間でいうところの握手とやらをしようではないか」

「初めてだからいろいろとよくしてやってくれサンデー」

「むむむ。ご主人の命令とならばこの子と仲良くできるように頑張るよ」


 うーん。あまりサビの事が気に入らなかったのかな? これからの付き合い方次第でどうにかなるだろうし喧嘩さえしなければいいか。

 とりあえず種族の垣根を越えて互いに二人は歩み寄って握手を交した。


「ご主人様! せっかくサビちゃんが新しく入ったからここの牧場の事色々と案内してもいいかな!?」

「おう、いいぞ。ただしサンデー。お前も一緒にだぞ?」

「おうわかったぜ!」

「よろしゅう頼むぞえ」


 ちょっとお嬢様っぽい言動をしているのがサンデーにとっては好かないのかな。そんな感じが受け取れるな。まぁ、慣れたらでいいし。無理だったらちょっと考えてやらないといけないか。


「して主殿。ここは家畜が寝起きをする場所なのかえ?」

「いや、今日からお前とこの2人で住む家だ」


 そうサビに言葉を返したら、彼女は不満げな態度を露わにした。


「ここはどう見てもあたしに相応しい場所ではないのじゃ。主殿はみて気づいてないのかえ? あちこちに穴が開いておる。冬になれば寒くなるのはいやなのじゃ」

「いや、ここは火山都市だから冬はこないぞ」

「それはそれじゃ。あまり放っておけば傷んで崩れてしまいかねないともうしたいのじゃ」

「要するにあれか? ここじゃなくて王女に相応しい部屋を用意しろと?」

「サンダービースト族は常に孤高の存在じゃ。人間のいう個室というものがあるなら用意ねがいたいのじゃ」


 前の世界で見聞きしたことのあるモノで例えるならばあれか。ペンギンを日本で育てるときの注意点みたいなものか。飼育環境を改善しろと彼女は言いたいのだろう。


「できればそうしてやりたいのだがな……」

「なんじゃえ?」

「ここのオーナーに1度聞いてみないといけないんだ」

「ほう。ここの持ち主がおるというのかえ? てっきり主殿の所有物かと思っていたぞえ」

「いやいや。そんな金持ちじゃ無いから持つだなんて出来ないさ。借りてるんだよ。アルシェさんっていうこの街の偉い人が持っている土地と建物なんだ」

「じゃあ、今すぐにでも行って参れ。良き返事を期待しておるぞ。さぁ、ホワイエットちゃん。あたしと一緒にお散歩にいきましょうねー」

「はーい。サンデーお姉ちゃんも一緒に行こう!」

「おう、よろしくなサビ」

「うむ。お主もどこかあたしとにた風格を感じるな」

「さぁ、どうなんだろう。私はそう言ったのは疎くてね」

「…………ふむ。あたしの碧眼は何でも見通す目じゃ。そなたとは一度心を開いて話し合いたいのう」

「いいぜ。よし、じゃあいこうか。ってなわけで俺達もアルシェさんの良い返事を期待しているからな。じゃあな!」

「おっ、おう。いってこーい」

「いってきますご主人様! 大丈夫だよ。きっとご主人様なら頑張ってアルシェお姉ちゃんを説得できるよ!」


 あの人が首を縦に振って厩舎の改装工事を承諾するのだろうか?

 そう思いながら手を振りつつ彼女達が厩舎を後にして外へ散歩に行くのを見送るのであった。


「今日からサビの抱えている問題と向き合わなければな……」


 既に少し胃がキリキリとしてストレスが溜まってきている。


 あの出来事は結局俺の仲裁を介して、ミステルさんとサビはお互いに勘違いをしていたと言うことで関係は修復する事ができた。未然に防ぐ事ができたと言うべきかな。

 ミステルさんは彼女の正体を知らないので、俺の躾が出来ていなかったという責任問題で納得してくれた。


『仲間にしたばかりの子なら多少はさっきみたいなことはあっても仕方が無いさ。うちのクランに入ってくる若い新人の中には時折そういった子もいたりするから気にしないで』


 じゃあ、なんでサビに銃を向けたんだと聞きたかったが。これはあくまで憶測に過ぎないけれど。本当は撃つ気はなくてただとっさに銃を構える仕草をしただけなのではないだろうかと思っている。

 彼女は俺よりも格上のハンターだ。みだりに銃を向けたりはしない。つまりあれは威嚇行為によるものなんだと思う。


「サビはかなり手を焼かせてくれたもんだな」


 彼女はミステルの恰好と臭いが酷似していると言って、頑なに仕返しをしたいと俺に強く何度も求めてきた。


『あいつじゃ。あいつがあたしを傷つけたのは間違いないのじゃ。主殿お願いなのじゃ! この身がどのように主殿に支配されても。せめてあやつに一矢報いたいのじゃ!!』

『他人が聞いたら誤解するような事をサラッと言うなよっ!?』


 王女なのに気安く自分の身体を差し出してくるだなんて。一生のお願いだったんだろうな。でも俺は、


『残念だが。あの人は別人だ。サビを傷つけた相手は別にいる。ああいう服を着ている人は街に行けば沢山いるんだ。容姿だって似ている人はたくさんいるし。臭いは女の人だからな……』


 彼女に曖昧だけど優しい嘘をつくことにした。ごめんなサビ。お前とミステルさんが殺し合う所を俺は見たくは無いんだ。


 他人のそら似。そう言い聞かせて彼女にはミステルさんに対して王女の寛大な対応で許してやってして欲しいと頼んだ。姿は似ていても彼女が君を傷つけたとは言い切れないだろうと言葉を添えて頼み込んだ。


『条件じゃ。またあの肉をたらふく食べさせてくれるのならば条件をのもうぞえ』


 取引は成立した。寿命が何年縮まっただろうかと思いながら、2人には謝罪の握手をしてもらうことになって事は終息につくことができたのだ。


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※改稿のお知らせ 56話:撃退狩猟クエスト『沼地下層エリアに現れし轟雷獣を撃退せよ』その3 適切な睡眠時間は大切ですね……(汗)

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改めて誤用や誤字脱字などの推敲をしました。もし宜しければ改めて読み直して頂けると嬉しく思います。

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