49話:指名依頼クエスト『沼地の主・泥岩竜 マドロックドラゴンを狩猟せよ』その2

 ボルカノ沼地の環境構成は主に乾燥地帯が2割、沼地帯が8割となっており、その要因として、ボルカノ火山から沼地に来る熱波によって引き起こされている雨が原因とされている。1日の半分を雨が占めており、それによってもたらされる大地への恵みは大きく、様々な生き物達がその恩恵を受けようと地に根付いている。


 マドロックドラゴンが担っている自然界での役割は主に、泥のかくはんと植物への肥料の供給である。そして常時増えやすい甲殻種を大量に捕食する事で、生態系の保全を担っているのだ。


「モンスターとひと言いってもいろんな役割がある奴ばかりなんですね」

「ああそうだねカリトくん。ちなみにこの沼地限定になるが轟雷獣というモンスターが引き起こす自然現象は。多くの草食系モンスターの恵みをもたらしてくれる変わった肉食獣種のモンスターなんだ。持ちつ持たれつの関係と言うべきなのだろう」


 以外と奥の深い知識を聞きながら、俺とミステルさんは現在エリア3に訪れていた。ここは昆虫型モンスターの宝庫ということもあり、マニアには高値で売りさばける希少な昆虫が生息していたりする。昆虫採取もいいけど、いまは仲間との行動中なので余暇で楽しむことにしようと思った。


「そうそう。このエリアに生息するヌマチカブトという昆虫型のモンスターはね。君の狙撃銃の弾薬を強化してくれるという変わった素材になれる奴なんだ。よかったらここで少し寄り道してみるかい? ちなみ強化で出来る弾薬は『徹甲弾』だ。貫通弾と違ってより一掃の貫通力でもって相手の堅牢な甲殻を貫く事ができる。貫通して体内に入れば、変形した弾頭が中で肉質にダメージを与える。ようはとても素晴らしい弾薬なんだ。いまの君が持っているボルトアクションライフルでも装填が可能だよ。おなじ貫通弾の規格として扱われているからね」

「一応聞いておきますが。今回のマドロックドラゴンを相手にそれは有効なのでしょうか?」

「有効なのは言えるね。ただ、ちょっと力を持て余すかもしれないかな。お守りみたいな形で一発くらいは作っても大丈夫だと私は思うな」

「じゃあ、出来れば作り方を教えて頂けるとありがたいです」

「そうなるとベースキャンプ内に置いてあるリロードツールを使っての調合になるかな」

「じゃあ、お昼くらいにそれをつくりましょう!」

「うむ。とりあえずメモなりするようにね。先輩の教えてもらった事は一字一句もらすことのないように。特に弾薬調合は分量をひとつでもミスをすると失敗するから注意が必要だ」

「了解です!」


 という事ですこし寄り道になってしまったがヌマチカブトの昆虫採取を執り行なう事になった。結果として手に入れることができたのは10匹だけだった。とりあえず昆虫用の捕獲袋を用意して中につめこんで保存しておく。あとは背中に背負っている背嚢につめこんでおしまいだ。


「よし、このままエリア5に向かうことにしよう。もしかするとこの時間は日光浴をしてる最中かもしれないな。なんどか仲間のハンターの達が仕事をしているからその事前情報を元に導くと。うん、間違いなくいるはずだ」

「確固たる自信ですね……」


 俺にはそんなことなど出来ないな。いまの自分には行き当たりばったり出たとこ勝負で精一杯だ。


「じゃあいきましょうミステルさん。エリア5の乾燥地帯エリアへ」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る