42話:裏の正義を貫く者達
リリィの仕事によって猟犬を裏で操っていた大貴族の名前が暴かれたことにより、後発でオフィスルームにて待機していたルーノ職長率いる小隊は現場へと向かおうとしていた。
「という事でリリィの仕事で貴族の名前が判明した。的について王家からは押し入り強盗で殺されたかのように処刑をしろと命令が下されている。それ通りに仕事をこなしていくぞ」
「うぃっす」
「うふっ、任せて頂戴。ルーノ職長の為にあたし。頑張っちゃうわ!」
「その意気込みで頼んだぞ二人とも。私は職業柄表に出ている身分だ。となると、今回は実質二人の仕事になる」
「で、名前はなんていうお貴族様なんだ?」
「廃墟都市を領地にもつ貴族院ナンバー4のアルーシャ・レン・エルバード公爵だ。なお、猟犬の壊滅を素早く察知したようで姿くらましを計っているらしく、王家を裏切るつもりのようだ」
「その情報はどこから入ってきたやつだ?」
「屋敷に潜り込ませていたスパイからの情報だ。信頼できる」
「用意周到ね。もしかしてこうなることを分っていたのかしら?」
やたらにスムーズに話の展開が進んでいくのを疑問に思ったルナはルーノ職長にそう問い掛ける。
「貴族院に加盟する爵位を持つ貴族達には必ず隠密の諜報班が屋敷に1人だけ派遣される。これは貴族の身の安全保障や、今回のように汚職を行った者に対する制裁のために常駐させる為にあるわけだ」
「要するに良いことしていれば味方してくれて便利な奴。逆に悪さをしていれば牙を剥いてくるヤバイ奴なんだわけだな」
「まさしく王家の飼い犬だよね」
「かという俺達も王家の飼い犬だけどな」
「お喋りはこれくらいにしておこう。そろそろ現場に向かうぞ。場所はアルーシャ邸宅だ。既にスパイには偽の情報でエルバード公爵を引き留めてもらっている」
「どんな風に引き留めているんだ?」
「エルバード公爵は若い女が大好物だ。あとは察してくれれば良い」
「まさしく女の敵ね!」
「予約の出来ない高級娼婦をアルバードがそちらに寄越していると情報を流させた」
「リリィちゃんの事ね」
「リリィも大変だな。今日で2回も嫌な仕事をするだなんてな」
「あらぁロッソちゃん。リリィちゃんの事が気になるのぉ?」
ロッソの言葉に反応してルナがからかう。
「バカを言うなルナ姉ぇ。ただの後輩のかわいがりなだけさ」
「ふーん、早くしないとあの子。新人ちゃんを食べちゃうかも」
「またあいつの年下好きの話かよ」
「いいじゃない恋バナくらいはさせてよぉ」
という流れが続いて行き、
「さぁて、仕事はじめますか」
「ふぅん、私の筋肉が闘争を求めてるわぁ! 私のこの鍛え上げたマッスルなプロポーションでいい男達を卒倒してあ・げ・る♥」
元気のいいルナ姉だと思いながら苦笑しつつ、ロッソは両手にしているショットガンのポンプレバーをガシャコンと動かして弾丸を装填する。
「で、どう侵入するんだ?」
「決まってるでしょ? 押し入り強盗の恰好しているだからやることはひとつよ」
そう言ってルナは手にしていた覆面マスクをすっぽりと被ってサイドチェストのポージングをしている。なんとも滑稽だと思いながら笑いを堪えているロッソ。彼もまた同じように覆面マスクを被って準備万端でいる。
「目標はあくまで的を始末することだけど。ついでに証拠品の押収もするからね」
「ああ、そうだなー。ついでだからの強盗なわけだな」
「そのほうがなにかと都合が良いっていうわけね」
「ボルカノの憲兵達にバレないといいんだけどな」
「そこはルーノ職長が表だって根回ししてくれるはずよ。多少の心配はなくてよ」
「じゃあ、そのつもりでいくかルナ姉」
「いつでもオッケーよロッソちゃん」
こうして二人による強盗に見せかけた暗殺がいま始まろうとしていた。
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