27話:指名依頼クエスト『砂漠の臆病者 サンド・ライノスタートルを狩猟せよ!』♯7

――エリア10『切り立つ崖の下にある小さな砂漠』


 空から地平線にかけて茜色が差し掛かりつつある事に気づく。


「夜になるまでには間に合わせたいな」


 そう思いながら、俺は地面にトラップを仕掛けている所だ。サンド・ライノスタートルとの戦闘は過激極まりつつあり、正攻法だと自衛に徹するばかりになりがちだからだ。


「よし、これで足止めができるな」


 サンド・ライノスタートルとの戦いの中で少しだけ分った事がある。


「臆病者でも怒れば周りが見えなくなるようだし。余裕だな」


 怒ればトラップ通じるようになると言うことだ。相手はモンスターだしこれなら何度やっても通じそうだ。


「とはいいつつも……。あと10発しか手持ちがない」


 さっきまで必死に銃弾を当て続けていたせいか。弾約管理を怠っていた。


「今日はトラップでダメージを与えてあとは銃弾全部急所に当てたら逃走しようか」


 計画的な作戦。とりあえずやることは決めた。あとは――


「ふぅ……待ち伏せしようか……」


 身を隠す場所を考えることにしよう。俺は急いでエリア9に続く入り口から約100メート離れた場所にある岩陰に隠れ、そのまま待ち伏せをする。


 それから10分が過ぎたところで前方から――


「……来た」


 手負い姿のサンド・ライノスタートルが、ゆったりとした足並みでエリア9の出入り口から姿を現した。かなりの銃弾をあの装甲に当ててやったので、所々表面が削れており、いまから仕掛けたトラップが上手く作動すれば、相手にとってかなりの痛手となる筈だ。


『ぐるる……』


 傷が痛むのだろう。心苦しいところがあるけれど、ここはグッと堪えて我慢だ。仕事だしな……。


「よし、そのまま足を踏むんだ……」


 出入り口から離れて59メートル。そこに仕掛けてある支給用対モンスタ地雷にいま、もうあと3歩の所でサンド・ライノスタートルがその右の前足で踏もうとしている。そしてついに――


「あぁ……バレたか?」


 あと一歩の所でサンド・ライノスタートルが歩くのを止めてしまった。なぜだ……?


 当たりを見回す素振りを見せている。となると……。


「俺の存在に気づいたか……?」


 いや、これでも存在を悟られないようにしてはいるのだけどなぁ……。


「なら、ここから狙撃で当ててやろうかな」


 この距離なら狙える自身はある。すかさず俺はライフルを構えて地雷に狙いを定めた。支給用対モンスタ地雷には踏みつけると、直接銃弾で起爆させる事が出来る機能が備わっている。


「発火弾を使おう」


 不発だなんてあり得ないかもしれないが、慎重に考えるとあり得そうだ。


「ふぅ……」


 息を研ぎ澄まし、冷静に狙いを調整する。距離は目測で約120メートル前後。風は吹いていない。ずれは心配しなくてよさそうだ。


「…………ッ!」


――ズドンッ!


 そして――


『ビュゥアアアアアアアアアアアアアアァッ!?』


 サンド・ライノスタートルに地雷が襲いかかる。さらに。


「これでもくらいやがれカメ野郎ォ!」


 容赦なくサンド・ライノスタートルに向けて銃弾を当て続けてやった。そしてついに。


『ビィウ……ビィウ……ビィウぅ……』


 サンド・ライノスタートルはそのまま地面に崩れ落ちて息を引き取ったのだった。

 



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る