26話:指名依頼クエスト『砂漠の臆病者 サンド・ライノスタートルを狩猟せよ!』#6

――エリア9『切り立つ崖の荒れ地』


『ビィユウウウウウウ!!』


「来るならかかってこい!」


 サンド・ライノスタートルの突進攻撃が迫ってきている。時速20キロの速さで俺に向かって走るその様はまさにサイそのもの。


――ズダン!――ガシャ――ズダン!


「くぅう! あの邪魔な甲羅さえなければ楽に倒せるのになぁ!」


 一発が重いライフルの銃弾をもろともしないあの鋼鉄の甲羅はカメのようだ。


「まるで俺がいた世界の装甲車じゃないか!――おっと」


――ズザアアッ!! ドッドッドッ。


 タイミングを合わせて突進攻撃を回避する。するとサンド・ライノスタートルは通過して約5秒で180度旋回しながらドリフト回転をし。再び突進攻撃の構えを取り出した。


『ビィユウウウウウウ!』


 構えながらの威嚇。まるでこれは。


「893やマフィア映画でよく見る人対車のアクションシーンだな」


 そんなふざけたギャグを言っている場合じゃなかった。隣にミステルさんがいたらはっ? って顔をされそうだ。だが俺はふざけるのをやめない。


「グレネードであの堅い甲羅を剥がせるかな……?」


 物は試しというし。手持ちのグレネードの数は10個ある。


「ピンを抜いて直ぐに投げつける。よし、グレネード!」


『ビユゥ……!』


 サンド・ライノスタートルは鉄の球体が投げつけられたことに警戒しているようだ。その隙を逃さずに。


――ズダン!――ガシャ――ズダン!


「くっ、やっぱり頭を狙っても無理か……」


 頭部を覆い隠すようにして甲羅があり、闇雲に俺は弾を無駄に使ってしまった事を少し後悔する。


「考えている場合じゃないな……!」


 そうあと2秒で投げたグレネードが爆発するからだ。グレネードはそのまま宙からサンド・ライノスタートルの顔手前に転がり落ちた。


「爆発する前に伏せる!」


 周囲に身を隠せる場所がない。そういう場合は地面に伏せてなるべく頭を守るようにする。相手との距離は50メートルだが、念の為にやっておこう。


――ドォン!


『ビュォオオオオンンッ!?』


「あっ! 甲羅が傷ついている!」


 爆発したグレネードのダメージは大きく。サンド・ライノスタートルはその場で悶絶しながら地面に崩れ落ちていた。


「よし、あと5個連続で投げてやるぜ!」


 すかさずダウンしているサンド・ライノスタートルに対してグレネードを5個――いやっ、ありったけ投げつけてやった。


「伏せながら撃ってやる!」


 投げ終えてから全力で伏せ。そしてそのまま伏せ撃ちで5発を相手に撃ち込んだ。


「リロード!」


 古びたボルトアクションライフルの装弾数は5発だ。これより良い銃はもっと装弾する事が可能である。


――ガシャ――カチッ。


「オッケー」


 その直後。


――ボボボボボボボンッ!!


『ビ……ビィウユゥ……ブルルル』


 脳筋プレーかもしれない。だが、俺にはこの方法しか思いつかなかった。スマートに倒すだなんて今の自分には難しいからな。


「よし……倒せたぞ……」


 正直あっけなさが残った狩猟だったかもしれない。だが、これが、俺が機転を生かして得た結果だったことに代わりはない。


「次は現地調達でグレネードつくるのは止めておこう……」


 あの時俺がエリア1で粘着爆薬を作ることを思いつかなかったらもっと時間がかかっていただろう。


「それが無かったらと思うと……あぁ……」


 想像しただけでネガティブになる。


「よし、さっさとやることしますか」


 そう武器を背中にしまいながら思いつつ、俺はそのままサンド・ライノスタートルの亡骸に近付いた。


「よし、最初は何処を採取しようかな」


 甲羅に興味がある。俺は手始めに傷のついた甲羅にナイフを通そうと手に触れた。


――だが。


『ブルルルゥゥ!!』


「うぉぅtっ!?」


 サンド・ライノスタートルがいきなり動き出し、俺に向かってその巨体で押し出し攻撃を仕掛けてきた。


 俺はその動きを完全に読んでおらず。その面攻撃を真っ正面から受けてしまい、そのまま背後へと吹き飛ばされてしまったのだった。


「がっはぁっ!?――ゴホッ!? な、なぜ?!」


 図鑑には死んだふりをするって書いていなかったはずだ……!


 その原因が分らないまま再び戦闘が再開する。俺は歯を食いしばって痛む身体にムチを打ち。そのままサイドアームの拳銃を装備して構えをとる。隙があれば素早く背中のライフルに持ち替える算段だ。


『ブルルルゥゥ!』


「やべっ、あいつぶち切れてるぞ……」


 完全に相手は怒り状態のようだ。鼻を大きく鳴らし、目つきを鋭くして本気の目をしている。手にある拳銃で対応できるかは分らない所だな……。


「ここはひとまず様子をうかがって相手の出方を探るべきか」


――パンッ!――パンッ! スタタタッ!


『ビィユウウウウウウ!』


 右側にダッシュで移動しながら拳銃を使って威嚇射撃をすると、サンド・ライノスタートルはそれに応じて突進攻撃を仕掛けてきた。


「早い……!」


 その速さ時速35キロ。さっきよりも格段に上がっており、俺の足では避けきれるかが心配になってきた。さらに相手はホーミングでこちらの動きに合わせて移動をしてきており、どの距離で相手の導線から外れる事が出来るのかが分らないままの状況では、とにかく走って逃げ続ける事でしか対応できない。


「うぉっ、うぉおおおおおお!!」


 サンド・ライノスタートルが約10メートルに迫ってきた直後を見計らい、俺は全力でその場から前に向かって飛び込みジャンプをした。


 突進攻撃を失敗したサンド・ライノスタートルはそのまま正面の岩に激突し、その場で身動きがとれなくなってしまっていた。


「まさかツノが岩に刺さったとか……?」


 それを考えると俺の身につけている防具なんてちんけな物に過ぎない事になるな……。考えただけでゾっとする。


「だが、この隙を逃すわけにはいかない!」


 すかさず俺は背中のライフルに持ち構え、容赦なく引き金を引き続けたのだった。





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