15話:銃器屋ボルカノ
ーーカランコロン。
「らっしゃい!」
「あっ、はい……」
正直、今は自分の顔を鏡で見たくない。だが、そんな気持ちなんてお構いなしに。
「……なんだその情けない顔は。悪いが根暗な一見客はこの店に入店するのはお断りだ。悩みが吹っ切れてから出直してこい青二才」
少し離れた所にあるカウンター。その中に立つ荒くれ姿のアマゾネスの受付嬢。彼女は俺のハートを的確にエグる形で罵倒してきたのだ。思わずその言葉に、俺の豆腐メンタルハートの表面がボロンと傷ついてしまった。
「うぅ……」
俺の心を傷つけた彼女は手元に置いてあった分解済みの銃の部品の1つを手に取り、片方の手に持っている白の清潔なクリーンクロスを使って磨きの作業に暴投し始めた。ふと、
「あっ、カリト君! ここにいたのねって、……どうしたの?」
先に店内に入っていたミステルさんがホクホクした様子で俺に声を掛けてきた。そんな彼女は俺に近づくなりそう問いかけてくるので、
「うぅ、40歳まで魔法使いの呪いから解放されたいですミステルさん……!」
と、俺は切実にそう言葉を返したら、
「あはは……その何のことを言っているのか私にはわからないけど、そのなんだ。宗教的な話は遠慮してくれないかな」
彼女は笑みを崩さずに俺を変人扱いしてきた。まさかのドS発言で言葉を返してきたので、その言葉により俺はもうさっきまで抱いていた、彼女に対する淡い恋心が消えてしまった。
「あははっ! 青二才がミステルに見捨てられちまったぜ! ぎゃはははっ‼︎ 傑作だこりゃぁ‼︎」
なんて趣味の悪い女なんだろう。アマゾネスの受付嬢が俺たちのやりとりをみて愉快そうに大笑いしている。
「…………」
俺はいま目の前でコミュニケーションの壁にぶち当たってしまっている。俺はどうすればいいのだろうかと思いながら、アマゾネス女の笑い声をバックに、ミステルさんにどう言葉を返そうかと悩んでいた。
すると、
「カリト君」
「はい」
これ以上に適した言葉遣いを知らない自分。
「ダメよ。そうやってお姉さんの前でなよなよしてちゃ」
「はい」
「ははははっ、こいつオウムみたいな返事しかできね「カミル。後で下の工場にいるミゾネルさんにあなたがお客さんのこと馬鹿にしてたってチクるわよ? ちょっと黙っててくれる?」……」
ミステルさんのなんとも言えない笑みの圧力に、アマゾネスの受付嬢ことカミルが『(´・ω・`)しょぼん』とした表情を浮かべてふてくされて沈黙してしまった。その様子を見てミステルさんはふたたび俺のことを見つめてくる。
「カリト君の言った言葉の意味はよくわからないけど。呪いとかそういうのって、強く願ってしまうと本当になってしまうと私は思うの。だからせっかくこうして楽しい事を一緒に共有しようと思ってここにいるのだから。気持ちを切り替えて楽しいことを考えましょう!」
「ミッ、ミステルさん……」
笑顔を振りまくミステルさんの背後から眩い後光がさしているのを、俺はこの目で目の当たりにしていた。
俺は彼女の言葉に揺れ動かされ、
「そっ、そうですね! はははは、すみませんなんか変な感じでいてしまって」
「まぁ、君も悩みの多い年頃だろうなって私は思っている。存分に悩むんだ。私もそうやって大人の道を進んだのだからな」
また、昔の自分から遠ざかることができたのだった。
ふと、
「あのぉ、ここ。武器屋なんすけど。そういう色物をするような場所じゃないし。買う気ないんだったらさっさと帰ってくんない?」
カミラの横槍が入り、
「えっ? 色物ってなんのこと?」
「えっ? 色物?」
俺とミステルさんで言葉を返したら、
「2人して私に質問するな! 鈍感供が!」
と、怒られてしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます