11話:反攻戦
それからの戦闘の流れは防戦から一転してこちら側の有利な展開で進んでいった。そして今。
「たぁあああああああ!!」
――ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!
「すげぇ……」
ミステルさんが腰に下げて撃つヘビィーマシンガンの制圧射撃が猛威を振るっており。
『ぐえっ!? ぎゅるるぅ……!!』
グレゴールワイバーンは身体に受け続けていた蓄積ダメージに耐えきれず、奇声を上げて足からズルッと崩れおちてダウン状態に入った。
その動きを見逃さず更なる追い撃ちを掛けていくミステルさんの隣で。
「ミステルさん援護します!」
「頼んだわ! リロード! 10秒待てって!」
「はい! 任せてください!」
ヘビィーマシンガンのリロードが完了するまで。スナイパーの俺が彼女の動きに合わせてつつ攻撃の手を緩めないように連携を取っていく。そして。
「ボルトアクションライフルの一撃は重いんだよ!」
総合的なダメージポイントステータスでは圧倒的な火力を誇るマシンガン系の武器に対抗心を燃やす。対してボルトアクションライフルは一発がどの武器よりも遠距離では優位に立つことが出来る性能があり、常時クリティカル攻撃をすれば最強の必殺武器とも言われている。そして弾の消費量もエコな所も魅力だ。
「ミステルさんリロード作業が完了しますか!」
「もう少し掛かるわ! バレルの冷却作業中よ! あなたの方で引きつけておいて頂戴。それくらいは下級のハンターでも出来るわ!」
試されていると感じた。それと共にやらなければいけないという使命感が湧いてくるのを感じる。
「任せてください! 俺があなたの事守ってみせます!」
「そっ、それはどどどいうことなのかなっ!?」
あれ、普通に当たり前の事を言ったのに、このひとは何で顔を赤くしているの?
「えっ、普通に背中を守るという意味で言ったつもりなのですが」
「そっ、そうなんだな……すまん。とにかく私の事など構わずに戦闘を続けてくれ」
「りょ、了解」
変な人だなぁと思いながら手にしている銃の操作を続けていく。とはいえ、このまま銃を撃ち続けてても時間が過ぎているばかりになるな。そう思って俺は。
「ミステルさんグレネードを使います」
「わかった。できるだけ遠くに奴を惹きつけて投げつけるんだぞ!」
今から使う手のひらサイズに収まる兵器には、周辺のモノを範囲攻撃で殺傷する力が込められている。この場所ではミステルさんや俺にも被害が及ぶので出来るだけ30メートル以上は感覚をあけないと生きていけない。焦りと失敗は禁物だ……。いくぞ……!
「よし!」
『グェエエエエエエエエエエエエエエ!!』
ダウン状態から立ち直ったグレゴールワイバーンが激怒したその瞬間。俺は奴に目をつけられており、そのままワザと追尾されるように逃げ始めて一定の距離をとる行動に移した。
そして腰元のベルトポーチから
「グレネード!!」
素早く背を向けて地面に伏せて頭を手で守る行動に移した。破片があたってこないことを祈ろう……。そして3秒が経ち。
――ズバーン!
『ギュゥ!?』
「おっしっ!」
グレゴールワイバーンの悶絶する声を聞いて手応えがあったと確信する。そして俺は仰向けになって銃を構えて狙いを定めて引き金を引き。
――ダンッ! ダンッ!
『ぎゅぁっ!』
「おっと!」
俺を追い打ちに構うことなくグレゴールワイバーンがこちらに突っ込んできた。そして近距離からのブレス攻撃を仕掛けてきたので咄嗟に右方向へと横回転でグルグルと回避行動をとり。そしてそうしている内にミステルさんから。
「リロード完了したわ! さぁ、ここからずっと私のターンよ!」
「了解です! ヘイトのスイッチングしましょう!」
「もちろんだ! なんならスイッチングしてからエリア移動してくれても一向に構わんぞ!」
それ完全に戦犯行為じゃないか! そんなの美女に言われても俺は嫌だぞ!? 何を考えて話しているんだこの人はよっ!?
「おかしなこと言ってないでやってくださいよ!?」
といったやりとりを終えてスイッチングを完了し。再びミステルさんのヘビィーマシンガンによる制圧射撃がグレゴールワイバーンに襲い掛かる。
5分が経過した所でついに……!
『ぎゅぁぁ…………グルルルゥゥ……』
――バタン……。
「おっしゃぁあ!」
グレゴールワイバーンを討伐することに成功した。俺は人生で初めて大型のモンスターを。通りすがりに出会った激強の先輩美人ハンターと一緒に討伐する事ができたんだ……!
「な……がかったぁ……!!」
心の奥底からくる達成感が半端ないくらいに気持ちいい!! そして。
「じゃあさっそく討伐報告と遺体の運搬要請をしよう」
「あの、お礼をしたいです!」
「ははっ、大丈夫だよ。このモンスターの素材はおおかた揃えてあるし気持ちだけでいいよ」
「そうですか……」
「まぁそう落ち込むな。もし君が良ければこの後一緒に食事でもどうだい?」
美女と食事をするって……おいまさかこれってっ!? 思わず脊髄反射的に。
「喜んでお受けいたします!!!!」
ピシッと立ち直して右手を挙げて敬礼のポーズをとった。不思議がられているけどそんなことなんてどうでもいいんだ!!
「やっぱ異世界生活はこうでなきゃなぁっ……!!」
ミステルさんに背を向けて小さくガッツポーズ。すると。
「ん? なにか言ったかい?」
「ああいえ。ただの独り言ですよははっ、ほら作業に取りかかりましょうよ!」
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