4話:地道にコツコツと

 日雇いの労働を終えた翌日。俺はいつものようにギルドの集会施設に訪れていた。今日は昨日タケツカミさんが言ってたとおり、月に一度の緊急クエストが一斉に張られる日だ。なのでそれ目当てに訪れてるハンターの数がおおく、中は密にごった返しているところだ。


「えと……俺が受けてもいいランクのクエストは……あった」


『緊急クエスト:グレゴールワイバーンの討伐』


 このクエストが上手くいけば今のランクから1つ上に上がることが出来る。ただ、それを受けるにあたって、一定数のクエストをこなしていかないといけない。ちなみに見習いハンターの俺が緊急クエストを受けるのに5つのクエストをこなす必要があった。昨日を含めて6つ受けて数をこなしているので条件はクリア済みだ。


「うん、これにしよう」


 他にも幾つか受けられそうなクエストはあったけど。ひとまず確保はしたい。俺は直ぐに掲示板に張られたそれを手に取って剥がして持ち、そのまま受付けの方へと向かっていった。


――それから1時間が経過した。


「……ふぅ」


 ここは街から少し離れたボルカノ森林地帯と呼ばれているフィールドだ。街からは荷馬車に揺られて1時間ほどの所にある。ここで今から俺の狩猟クエストが始まろうとしていた。


「この場所に滞在できる時間は今から9時間までだ。それまでの間にクエストを達成してくるんだぞ。終わったら俺達に報告するようにな。間違っても忘れてたとか。面倒くさいからとか。適当な理由で勝手に街に帰らないように。その場合はクエスト不達成あつかいになるからな」

「ご丁寧にありがとうございます」

「うむ、幸運を祈ってやる。ルーキー」


 森を管理する兵士達の人の応援を受けた後、開かれた門をくぐり抜けて所定の安全地帯まで歩いて行く。


「とりあえず拠点を作れそうな場所を探さないとな」


 安全地帯といえど幾つかあるが。


「今回の相手するモンスターの習性とか考えると。ツリーハウスが良さそうだな……」


 本で得た知識によると、グレゴールワイバーンはその小さな体躯が特徴的で、狭い道も難なく踏破する事ができるらしい。地上より木の上の方が安全にキャンプを敷設できるのでオススメと書いてあったな。


「できるだけ大きな大木がいいな」


 できる限り使えそうな巨木を探す事に。


「あっ、あれがいいな」


 さっそくお目当ての物を見つけた。直系60センチ以上はありそうな巨木だった。高さも申し分ないな。これならグレゴールワイバーンに追いかけられて逃げ込んでも無事にやり過ごせそうだ。

 グレゴールワイバーンは木登りができないモンスターなのだ。


「さっそくこいつで木登りしないとな……」


 俺は腰元に収めてある革製のホルスターから、ギルドから支給されたフックガンを手に取り出して巨木の上に向けて構えて狙いを定めた。


「狙うのはあれがいいかな」


 なるべく幹の太い場所を狙わないといけない。落ちて気絶なんて笑えないから。とりあえずバカな事はしたくはない。


――ボシュッ!――カンッ!


「よし、うまくいった! よっと」


 やってみるもんだな。狙った箇所より少し右にずれてしまったが、幹の太い場所にフックを巻き付かせることに成功した。

 あとそのまま上に上昇して幹の上に降り立つ。バランスを崩したときの為にフックガンの固定はそのままにしておこう。


「えと、次はこれか」


 俺は手のひらサイズで持てるミニボトルを腰元のポーチから取り出した。ボトル中にはログハウスの模型が収められている。その瓶のコルク栓を口にくわえて強引に抜き取る。


――ボシュンッ!


「うわっ!?」


 ボトルの栓をぬいた直後に紫色の煙が立ちこめていき、その煙はあっと言う間に晴れていき、目の前にツリーハウスが出来上がっていた。

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