5話:痕跡探しと探索

「これは……うん、あいつの残した痕跡かな」


 俺は足下に落ちている赤と黄色が混じり合った鱗を拾い上げて観察し、それから腰元にある透明な瓶に入れた。後で換金できるならいいだろう。


「おっ、あっちにフライドヒラタケが自生しているじゃないか! ラッキー! いい儲けになりそうだ!」


 油で揚げて調理することでフライドポテトのようなホクホク感とサクサク感が楽しむことが出来るという珍しいキノコだ。このフィールドではもっともポピュラーな特産品として知られている。あとで商工会ギルドに売りさばけば今日の晩飯ぐらいは稼げるだろうな。


「これはいい大きさだな。銅冠クラスだろう」


 ざっと見積もって5ダラーくらいで買い取ってもらえそうだ。ちょっといい肉料理とエールのついたセット料理が食えそうだな。


「これだったら……サンドピッグのチョップステーキが食えるかもしれんな……へへっ」


 そう思うだけで活力が湧いてくる。はやくグレゴールワイバーンを狩猟しなければ。


「出来れば奴の足跡とかあれば良いのだけどな」


 足跡があれば追跡ができる。それを探すのには特定のパターンの足跡を判別しないといけない。別のモンスターの足跡が混じっていると分らなくなって追跡ができなくないことになるので、正しい痕跡を正確に見つけなければ。


「あっ、あった。奴の足跡っぽいやつ」


 三本指のY字の形をした足跡。これは資料で見たグレゴールワイバーンの足跡にそっくりな奴だ。間違いない。奴はここを北に向かって通ったんだ。


「追跡するぞ……!」


 今回の相手はワイバーン種の中でも狡猾と知られているモンスターだ。戦いになれば知性が冴えだし。ジワジワと対峙する相手を追い詰めるのが得意なモンスターだ。グレゴールはこの地で『悪魔』を意味する言葉らしく。度々目撃されれば周囲に人的被害が及ぶ為、こうして討伐依頼がだされているわけだ。


「えと、銃の確認しないとな……」

 

 俺が使っているボルトアクションライフルに装填されている弾丸は通常弾。汎用性が高く。どのライフルでも扱える基本となる弾薬だ。

 

 この異世界では主にハンターは銃を使って狩猟行為を行っている。俺が使っているのは、単発発射するごとにボルトハンドルと呼ばれるコッキングレバーを動かして、弾薬の入れ替えを手動で行うタイプの銃だ。操作が凄くシンプルで分りやすくて好んで使っている。


「支給品の予備弾薬は通常弾が99発。専用の貫通弾が30発か。まぁ、貫通弾は様子をみてからかな。貴重なダメージソースだし」


 ボルトアクションライフルだけが使用できる特殊な弾薬に貫通弾というものがある。弾薬にはいろんな種類があって、こいつの場合は一定の堅さまでなら容易くピアッシングができるという特徴を持っている。

 威力が高いぶん。ギルドからは持ち運び制限がかけられている。理由は分らないな。多分、強すぎるから大人の事情で何らかのルールが設けられているのだろうか。


「とりあえず通常弾を70発使って立ち回ってみるか。あとは貫通弾を全部使って相手の体力を削れば良いかな」


 戦いの段取りは大体考えた。あとは臨機応変に立ち回ることにしよう。


「じゃぁ、やるか」


 銃を携えて俺は奴の足跡を辿りながら前に進んでいく。

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