No.3.5【どこまでも報われない話】
あれから一週間が経つ。予定外のことが多すぎて、だいぶ遅くなったがやっと夏休みだ。
長期休暇なのだから、のんびり釣りでもしようか。それとも日がな一日テレビの前でダラダラしようか。なんならサユリでも誘って温泉でもいいか。なんてことに想いを馳せる午前二時。
いつもならぐっすりと眠っている時間だけど、最近どうにも寝不足で、かといって夜中だから何かをするのにはすこし億劫で、こうして俺は布団の中から一歩も出ずにあれこれ妄想する。
でも考えるだけで、それのほとんどを実行できていないのが現状だ。
その理由は、メグミ達と行動を共にしなくなった翌日からよく見るようになった夢のせいなのかもしれない。
誰かが、枕元に立っているのかと思うほど、必ず同じ時間に同じ夢を見る。旧友との別れが日毎にリアルさを増してループしている。
「さーくん。怖いよその顔」
見開かれた目は血走っていて瞬きすらしない。そんな俺を隣で寝ていたサユリが心配そうに覗いた。
「大丈夫。明日の予定とか立てて、ちょっとワクワクして眠れなくなっただけだから」
「あっそ。じゃあわたし寝るから……」
心配して損した、と言わんばかりに顔を歪めて、サユリは俺に背を向けてまた眠った。こうして今日も、丑三つ時と言われるこの時間を寝ずに過ごす。
* * *
真っ白な病衣。真っ白な部屋。真っ白なベッド。そこに同調するように顔を白く染めた男が眠っていた。
差し込む朝日がその白さをより際立させる。
静かで穏やかな朝。俺は眩い幻影の中にいるような、一緒に融けてなくなってしまうような―――そんな感覚に襲われる。
でも、目の前で起きていることは紛れもなく現実で、何かに連れて行かれそうなのは俺ではなく目の前の男だ。まぁその時、俺はそのことを知る由もなかったが。
「恵、大きくなったろ? 」
「そうだな」
「かわいくなったろ? な?」
男はこけた頬のまま笑って、半ば強制的に俺に同意を求めてくる。
「そうですね」
「だろ。携帯開けてみてくれよ」
言われるがまま、携帯を開くと、画面には女子中学生が父親の胡坐の中にすっぽりと収まっている姿が映し出されていた。十三歳という思春期真っ只中のせいで、画面の下のメグミは少し気まずそうに笑みを浮かべている。交通事故で緊急入院と聞いた時は焦ったが意外と元気じゃんか。あの時の俺はそう思っていた。
辟易としたところで、着信音が鳴る。「おとうさん、めーる」と抑揚のない少女の声がメールを受信したことを知らせた。
「おまえ……着信音まで娘かよ」
「これ着ボイスって言って自分の録音した声とか歌を呼び出しに設定できるんだぜ」
「いや、それは知ってるわ」
俺は、病人であろうが、どんな人であろうが、呆れる時は呆れるんだなと知った。
「ちょっと一服してくるわ」
親バカには付き合いきれないと喫煙所へ向かおうとした時だ。
「なぁ、話があるんだ」
急に真面目な声になった男が俺を呼び止めた。
「もしだよ。もし、俺が死んだらさ、和希だけじゃメグを養うのは大変だと思うんだ。だからさ、たまにでいい。俺の家族を気にかけてくれないか? 」
「馬鹿言うなよ。もうじき退院だろ? 」
この男は、車と正面衝突したが、目立った外傷と言ったら大腿骨を折ったぐらいで、後は打撲や擦り傷程度。昔からこの男はアクシデントがあってもなんだかんだ軽傷で済んでしまう奇妙さを持っている。
大学時代もバイクに轢かれたが、かすり傷程度で済んでしまったこともあるし。そんな思い出を振り返りながら俺は安堵していた。
「頼むよ―――聡」
真面目な顔でそう言われて息をのんだ。
何でと思う気持ちが胸の内の大半を締めていて、あとの残りは、返事をしたら、根拠のない予想が崩れてしまいそうという気持ちだ。俺はわざと何も言わなかった。
その日―――男は死んだ。
原因は脳梗塞。
交通事故後にまれにあるケースらしく、関節運動、膝関節で言えば屈伸運動を行うことで、筋肉の収縮と共に血液循環が行われるのだが、交通事故により男は長時間ギプス固定をしていた。それにより関節運動がなくなって血流が滞る。その結果男の脚に血栓ができた。それが巡り巡って、脳の小血管に詰まった、らしい。
流れを理解したところで、事実を受け入れることはすぐには出来なかった。
言い逃げされたまま「ずるい」と悪態をつこうとも、もうその男は返事をしない。
結局、現実をゆっくり噛んで含んで飲み込むまで俺は一カ月を費やした。
がんちゃん。そうあだ名で呼ばれていた演劇サークルの変わり者。
本名、岩田総悟は演じることに誰よりも熱心な男であり、ヒロイン役はもちろん、男役までこなすプリンスでもありプリンセスでもあるサークルの美少女と後に婚約することになる人であり、何よりも俺の親友だった。
ソウゴとは大学の演劇サークル新入生歓迎コンパで出会った。
「田舎からやってまいりました。岩田です。夢は映画に出演して、スターになることです。よろしくおねがいします」
わざわざ田舎といわずとも、言葉のイントネーションから地方出身だということはまるわかりで、そんな男が俳優?
俺が思わず首を傾げたとこで、「まずはその訛り直すところからだろ」と先輩が軽めの野次を飛ばした。
新人の緊張を解してやるための計らいとも取れるそれにソウゴはへこへこと頭を下げて、周りの温度と同調した。
「しっ心理学部の冴島です。人の気持ちを理解する一助になればと思い、知り合いの劇団で戯曲などを書いていることもあって、興味があったので入りました。皆さんのお力になれればうっ、嬉しいです。よろしくお願いします」
今では考えられないくらいドがつくほど真面目だった俺は、自己紹介の一言ですら緊張して、それでも精一杯丁寧さや誠実さを言葉に込めたつもりだった。
「お前、硬すぎだよ。リラックスリラックス」
まずは集団になじむところからだ。と思い、俺はソウゴと同様、先輩の茶化しに笑いながら相槌を打つ。
「そんなんじゃつまらない人間になっちゃうよ」
「はい、すみません。先輩に「面白い」って言ってもらえるように努力します」
明るい感じを装いつつ、頭を下げた。長いものには巻かれておけ。それは昔も今も変わらない。
「だからそういうところが、面白くないって言ってんのよ」
あとになって分かったが、あれは恒例行事のようなもので、ああやって先輩の洗礼を受けてようやくサークルに仲間入りできる。だから、他のメンバーたちは口を挟もうとはしなかった。
「そんな人が書いた話、演じたいとおもっ―――」
先輩の語尾が突然跳ね上がった。
理由は怒りを滾らせたソウゴが独裁者の胸座を掴んでいたからだ。
「真面目の何が悪い―――」
真っ直ぐな目で言い放ったソウゴに俺は胸の中で爽快感を覚えていた。
報われた。
確かにそう思うのと同時にこの時から俺は人間としてソウゴを好きになっていた。
「今年の一年は怖いねぇ。あのな、世間知らずの一年生のために教えてやるけど、大学生のサークルなんて所詮、将来のコネ作りとか、モラトリアムをそれなりにやり過ごすためにあんだよ。楽しくやらないと」
宥めるようにソウゴの肩に先輩は手を置く。威圧するためか、置いたはずの手はソウゴの肩の筋を潰すように握っている。
ぬるま湯に一石が投じられ、席に座る一同には動揺や失望といった波紋が広がる。
「本当のことでしょ。なに黙ってんの? 」
先輩(演劇団の座長)は周りの空気には我、関せずといった態度をとっていた。
まるで自分の物だったかのように隣に座っていた男子部員のジョッキを奪い取って、一気に煽った。
卓の奥に座るメンバーは顔も上げず、ビールジョッキを傾けてばっかだ。
「俺はいい。でも本気で何かになろうとしている奴を嗤うな」
言い捨てるとともに掴んでいた胸ぐらを突き飛ばし、先輩が後ろの壁に背中を打ち付ける。
場が静まり返り、周りのメンバーたちはそれぞれ感情を含みながら視線をソウゴに集める。先輩が創り上げたマジョリティの中でソウゴはまるで聳え立つ塔のようだった。
「冴島くん、一緒に飲み直そう」
突然指名されて、ソウゴに向いていた視線がすべて俺に来る。
視線はびりびりと肌に感じるほど痛かったが、集まる視線の中で一際、真っ直ぐ、俺を見るソウゴの瞳の奥に輝きが見えた気がして、つい降ろしていた腰を持ち上げる気になってしまった。
「先行くぞ」
待ってと俺は跳ぶように立ち上がり、スニーカーを履く。
確かに、この団体にいたら、俺もあのメンバーみたいになりそうな気がする。それは嫌で足早に扉に向かった。
「じゃあ、お世話になりました」
何も言わずに去るのもなんだか気が引けて、俺は頭だけを下げて店を後にした。
こうして俺とソウゴは入部して三日で演劇サークルを辞めた。
それからはいろんなことがあった。
まず元々俺が書いた戯曲を使ってもらっていた団体に本格的に入り、俺は戯曲、ソウゴは演技と日夜二人で研究しながら、お互いを高め合ったこと。
舞台のことで頭がいっぱいで仲良く二人で留年したこと。
二年に上がり、元々演劇サークルにいた和希(後のソウゴの奥さん)に猛烈にアプローチして、三人だけの劇団を作ったこと。劇団を作って、紙芝居の朗読や、影を使って手だけで演じたりして、子供たちを喜ばせられたこと。
話始めるとあっという間に日が暮れてしまうほど日々に驚きや喜びが溢れていて、あの時は毎日が濃く詰まっていた。おそらく、いわゆる青春というものを俺はあの時代過ごしていたのだろう。
そして卒業を迎え、俺たちはそれぞれの進路へ進んだ。
ソウゴは有名な劇団に入り本格的に俳優となる為に修行へ。カズキは惚れた男の支えになる為、そして新しく授かった子供のために演技の道にきっぱりと見切りをつけ、パートタイマーの主婦に。俺の進路は―――まぁ置いておこう。
何となく決めたのではなく明確な未来に向かって突き進もうとする二人の道に光は差す。そのはずだった。
俳優としてメディア出演も多くなって脚光を浴びたソウゴを朝の情報番組で見かけるようになって「あかぬけたな」なんて育て親のように鼻を高くしていた頃、あるスキャンダルがソウゴの傍で浮上した。
「有名アイドルの赤坂麗美。人気急上昇中俳優との密会」いかにもメディアが食いつきそうなネタだ。
カズキに聞いた話だが、彼女とお茶を飲んだのは本当らしい。でも二人が会っていた時間を詳しく話すと、別に恋人同士の時間ってわけでもなく、ソウゴは彼女にある勧誘を受けていた。内容をかいつまんで一言で説明するとマルチレベルマーケティングだ。
昔からソウゴは純真でお人好しだった。そこがいいところであり、悪いところでもあるソウゴは困っている演技をしている彼女の話を親身になって聞いた。
有名アイドルなんだからお金に困っていることなんてまずないはずなのに「困っている顔をしてた」ただそれだけの理由でソウゴは彼女の話に耳を傾けた。
父親が作った莫大な借金でせっかく稼いだギャランティは吸い取られ、実際は生活に困っている。そんな創られた身の上話に本気で同情し、ソウゴはどうしたものかと頭を抱えたらしい。
その反応を見て彼女はソウゴがカモだと思ったのだろう。彼女はさらに相互を引き込もうと行動に移った。
「もしよかったら」なんて言って肩をはだけさせたのだ。つまり自分をマージンとしてソウゴを惹きこもうとした。たが逆にそれがきっかけで総悟は違和感に気づいた。
とことん一途であるソウゴはその誘惑には全く靡かない。そこで彼女は焦ったのかボディタッチを増やして少々強引に迫ったらしい。ソウゴの中で違和感が確信に変わり、でもソウゴは心の片隅でかなり悩んで、やっと彼女の話を断ったらしい。
そのことに関して後日カズキに話を振ると「さんざソウゴをしぼってやった」と呆れながらそう言った。
「どこまでバカなんだか」二人で顔を見合わせて笑ったことを今でも覚えている。
その時は友達のバカ話程度に俺とカズキは捉えていたが、もうソウゴは俺たちが知っている存在ではなく、公共の電波に乗るような存在だということを見落としていた。
だから他愛のない話の一つが、如何様にでも膨らみ、気づけば此方が潰されてしまうほど巨大になっていくのは時間の問題だった。
週刊誌はちょうど彼女がソウゴに強引に迫った瞬間を捕え記事にした。
「フレッシュ俳優、実の妻から人気アイドルに乗り換えか」
そんなタイトルを付け、週刊誌を始め、各ワイドショーはセンセーショナルに取り上げた。
演じることに対しての熱量や真摯さ、そんなクリーンで真っ直ぐなイメージが武器だったソウゴに対しこのスキャンダルはひどく堪えた。このスキャンダルを受けて事務所は彼を問いただしアイドルとの関係は事実無根であると主張し、騒動は一旦納まったが、そんなソウゴに更なるスキャンダルが襲う。
誘惑してきた彼女が覚醒剤使用の容疑で捕まったのだ。
再びメデイアは憑りつくようにソウゴを追い回すようになった。事は個人単位にとどまらず、カズキの生活も当たり前のように脅かされ始める。
連日連夜いわれのない暴言や、騒ぎ立てるマスコミがどこに行くにも張り付くそんな毎日が続いた。
出演決定していた大きな舞台も、初めて掴んだ帯ドラマの主演も軒並みキャンセルになり、さらにタイヘイの件同様、根も葉もないおまけが纏わりついた嘘の塊がソウゴのこれまでもの頑張りさえあっけなく潰した。
世間の根拠のない疑念と、心のない憶測によって張りつけられたレッテルが邪魔をして肝心の演技を見てもらえない日々。それらによってソウゴの膝が落ちるのも時間の問題か俺はそう思っていた。
だけど、ソウゴは諦めていなかった。
テレビに活躍の場がないならば小さな舞台へ、舞台でもダメなら今度はデパートで行われるヒーローショーへ。手を変え品を変え、考えを振り絞り、ソウゴは演じるということにしがみつき、足掻いて足掻いて―――今までよりもさらに演技に没頭していった。
「帯ドラマを掴めた時は泣いて喜んだよ。家族で祝賀パーティとかしてさ……でも最近思うんだ。どの場でも演じることには変わりないって。俺の演技でみんなが驚いたり、笑ったり、たまには泣いてくれたりそう言ったすべてが俺はさ―――大好きなんだ」
久々に再会したソウゴは、疲れを微塵も感じさせず笑っていた。
ソウゴに比べたら全然たいしたことはないが、着いていけなさそうになる大学院での毎日に俺は不安だったが、その時、確かにこの背中に前を進むための勇気をもらったことを覚えている。神様なんてものがいるかいないか、それは分からないが「ソウゴを助けてあげてください」そう誰かに切に願った。
その願いが通じたのか、いやソウゴの真摯さが、蔓延するすべてに囚われていた人々の心に届いたのだろう。また少しずつソウゴは光を浴びるようになった。
でも、脚光を浴びるということは彼の大好きな演技の場が爆発的に増える半面、プライベートな時間、特に睡眠時間が削られる。だがソウゴは誰よりも演技バカだったからか、どんどんと自分そっちのけでのめり込んでいった。そして、過労の末に交通事故を起こした。
その先はもう語らなくてもわかるだろう。どこまでも夢に対して真面目で素直な彼に、運命はどこまでも報われなく残酷な現実を与えた。
享年三十歳。
あまりにも若く、そして呆気なくソウゴは空に駆け上がっていってしまった。
* * *
「一生懸命生きた人だからだよ。そんな人に先がないのは報われないじゃん」
メグミの言葉がふと過った。夜中で視界が真っ暗なせいか、あの泣きじゃくる姿までもが浮かび上がってくる。
「俺はいい。でも本気で何かになろうとしている奴らを嗤うな」
ふと大学時代先輩に対して啖呵を切ったソウゴの姿がメグミの姿と重なった。結局どちらも自分ためではなく人のために涙を流し、または怒っていた。
「流石、親子だわ」
煙とともに吐いた悪態にはソウゴもメグミも答えてくれない。
ああ、何でこんなことをまだ俺は引き摺っている?
ソウゴなら今何を想い、どうするんだろうか。決まっている。父親なんだから娘を心配するに違いない。いや―――違うな。そうじゃない。
ソウゴなら、サユリなら、シュンなら、母さんなら。
そんなことを考えても答えが出ないと分かっている。
俺の考えだ―――俺自身の答えがこの袋小路には必要だ。俺はどうしたいんだ?
そう自分に問いかけた時、母さんの口癖をふと思い出した。
「聡、母さんは―――大丈夫だから」
頭を撫でられる度、俺は「うん」と頷いていたけど、実はその口癖が大嫌いだった。強がるような母さんの笑みはもっと嫌いだった。
アルビノとして迫害を受け、苦しんでいた母さんを助けるために何かできないか。そしてゆくゆくは言われないことや、悩みに苦しんでいる人を助けられたら―――そんなことに想いを馳せた少年時代が音を立てて甦る。
「ダメで元々。ぶつかるしかないか……」
諦めのような希望のような言葉が吐きだした煙とともに昇る。
もう一度頑張るのかと思うと、身体がぐっと重くなる。でもそんな時、頭に残って離れない景色が俺の背中を蹴飛ばした。
自分の中にある溢れんばかりの愛を伝えようと必死に踊っていた校長の表情。
友達を失意の中から救い出そうとしたシュンの足掻いた軌跡。
自分が亡くなった先のことを考えて、残される妻のために命を燃やしたタイヘイの背中。
そしてどの頼みに対しても真剣に耳を傾け、誰よりもそれぞれが抱える悩みに感情を揺らし、取り組んでいたメグミと過ごした日々。
人が頑張っている姿ってのは、輝いているから眩しく、だから最初は憧れた。でも母やソウゴを失った後、俺はその光に瞼を閉ざし、羨む自分をひた隠してここまで歩んできた。
きっと、ここ最近俺は、必死に垂らした汗水や、譲れない想いに触れすぎてしまったのだろう。そんな日々の中で俺は心に沁みついた原風景に抗ったつもりだった。
でもそれは叶わず、目を覆えば両掌を剥がされ、逃げようと思えば後ろ髪を強く引かれ、自分の中にある何かを燃やして闘う姿についつい見蕩れてしまった。だから仕方がない。そう、仕方がないんだ。
それに―――
「親友の頼みだからな」
苦悩を超えると、気づけば外は朝焼けを迎えていた。
「……眩しいよ」
サユリは薄く瞼を開いて俺を見る。
「俺さ、少しでも変われるように頑張るよ。だからさ、見守っていてくれないか―――」
雲の切れ間から差し込む朝日が心地よく、窓を開けると珍しく涼やかな風が俺の脇腹をくすぐった。
「あっそう。じゃあまずはスウェットでもなんでもいいから履こうね。その姿を見守るのは恥ずかしいから」
「はい」
恵が連れ去られた―――。
奇妙な来客にそれを知らされたのはその日の夜のことだった。
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