第6話 モンスター急襲!

 これからどうしたらいいのか悩んでいるところで、突然警報が鳴り響く。どうやら何か異常事態が発生したらしい。

 何事が起こったのかと動揺していると、突然ドアが開いてさっきのスーツの人が再び現れた。


「博士! 大型のモンスターが研究所を襲ってきました、すぐに避難してください!」

「何だって? 早すぎる!」


 報告を受けた博士はすぐにスクリーンを監視カメラ映像に切り替える。すると、全長が4~5メートルはあろうかという見た事もないバケモノが研究室の入り口の辺りをノシノシと歩いていた。

 武器を持った警備の人や研究所の自動攻撃システムがモンスターを攻撃しているものの、全くダメージは与えられていないっぽい。


「グゴガァァァァーッ!」


 モンスターは雄叫びを上げるとずんずんと研究室の中に向かって歩き始めている。ゴクリとつばを飲み込みながら経緯を見守っていると、そいつは警備の人を一撃で殴り倒し、そのまま背後に投げ捨てていた。自動攻撃システムの攻撃も、モンスターの硬い皮膚に弾かれてまるで無意味なようだ。

 レーザー的な兵器ですらその進行を止められてはいない。初めて目にする近未来な兵器ですら全く役に立っていないだなんて。


「モンスターがここに来るのも時間の問題です、早く!」

「分かった。……戦わないなら君もシェルターに!」


 博士とスーツの人に言われて、僕らはすぐにこの研究所の地下シェルターに避難する。スーツの人曰く、シェルターは核戦争クラスの衝撃にもでもびくともしない強度を誇っているとの事だった。


 僕らが辿り着くと、そこには研究所の職員らしき、多分100人前後の人達が避難していた。そうして、僕が入ったところで分厚い扉がしっかりと閉じられる。

 これで安心……なのかな?


 シェルター内の職員さん達は皆一様に不安そうな顔をしている。ここまで頑丈な施設なのに。それほどあのモンスターは恐ろしいって事なのだろうか? 

 場の不安の気配に感染して僕の緊張感も高まってきたところで、ドーン! と激しい振動がシェルター全体を揺さぶった。きっとモンスターがこの場所に攻撃を仕掛けているんだ。


 強い振動はその後も何度も続き、天井からパラパラと何かが落ちてきているような気さえしてきた。もしかしたらどこかに亀裂が入ってしまったのかも知れない。

 不安がマックスに達し、何か安心出来る材料が欲しくなった僕はすぐに博士のもとに駆け寄った。


「このシェルターにいれば大丈夫なんですよね?」

「いや、この様子だとあまり長くは持ちそうにないね」

「そ、そんな……」


 僕の不安を感じ取ったのか腕の中のパルが突然飛び出し、その勢いで閉じていたはずの扉を突き破る。ほんの一瞬の出来事だったため、僕はしばらく何が起こったのか全然分からなかった。

 ワンテンポ遅れて腕の中にあった温もりが消えた事に気付き、目の前が真っ白になる。


「あああっ!」

「行ってしまったか……」


 パルが率先して出ていった事を、博士は既定路線のように無条件に受け入れていた。たった一匹で凶悪なモンスターに立ち向かう小さなパルを想像すると、僕は気が気ではなくなってしまう。


「博士! 僕も行きます!」

「やってくれるか!」

「取り敢えずこのままだとみんな死んじゃいそうですし」

「ではこれを、通信装置だ」


 僕は博士から腕時計のような小型の通信装置を受け取り、そのままパルの後を追った。何が自分に出来るか分からないけど、決して一匹だけで戦わせはしない。


 僕は博士の指示に従いながら、バトルが始まっているであろうエリアに直行する。そこは研究所の中でもかなり広いドーム状の部屋だった。

 僕が駆けつけると、既に戦闘は始まっていたようで、何かが激しく衝突する音が聞こえてくる。


「ウヴォォアー!」

「シャアァーッ!」


 モンスターとパルはものすごいスピードで一進一退の攻防を繰り広げている。レーザーすら弾くあの硬い皮膚に傷をつけるなんて流石だ。

 とは言え、戦いはまだ始まったばかり、勝敗はそんなすぐには付きそうになかった。パルもまたモンスターの攻撃で既に傷ついているし、どちらが有利か不利か簡単に判断は出来ない。

 現場に到着したと言う事で、僕はすぐに通信機に口を寄せる。


「で、どうすれば?」

「取り敢えず、頑張れとか行けーとか、そんな感じで……」


 頼りにしていた博士からの指示は……あまりにも大雑把なものだった。

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