冬人サイコパス〜僕だって思春期の男子だもん

 冬人は私のことが好きらしい。


 それは友達とか、兄弟とか、そういうものではない。男女として、異性として私のことが好きのようだ。


 気持ちは嬉しい。私は明確に誰かに好意を持たれたことがなかった。恋人がいたことがない。正真正銘の処女だ。


「秋音。遊びに来たよ」


 玄関の前に立つ冬人を、私は見た。どうもこちらに連れてきてから、急成長したようだ。それは恐らく、歴史の辻褄合わせの影響があると思われる。しかしそれでも、中学二年生にしては小さくて、童顔で、それでいて可愛らしい顔をしている。恐らく化粧を施してしまえば、女子と見間違えられてしまうことだろう。そのあたり、春野と同じ血を引いているだけある。


「う、うん。遊ぶの構わないけど。ねえ、ちゃんと分かってる?」

「うん? 何が?」


 可愛らしく首を傾げる冬人。相変わらず、いちいち仕草が可愛い。


「私たち、付き合ってないからね。私は夏木が好きなの。冬人の好意には、応えられない」

「うん! 大丈夫。分かってるよ!」


 元気よく冬人は言った。それほど元気だと、本当に理解出来ているのか疑いたくなる。


「秋姉こそ分かってる?」

「うん? 何が?」

「僕も、秋姉のこと諦めてないって」

「う、うん。分かってるよ」


 複雑な気分だった。


 冬人を部屋に招き入れると、私はデスクに座った。冬人は私のベッドに腰掛ける。


「ごめん。ちょっと忙しくて、あまり構ってあげられないかも」

「また、何か作ってるんだ」

「まあね」


 冬人が私の部屋に遊びに来て、私は開発で構ってあげられない。そういうことは、前も良くあることだった。


 久しぶりだな。冬人にとっては数日前のことかも知れないが、私にとっては四年前のことだ。


「今は何を作ってるの?」


 冬人が話しかけてきた。私が研究や開発で忙しい時も、こうやって会話には付き合ってあげていた。別に話ながらでも、作業はできるしね。


「今はね。飲むと猫になっちゃう薬を作ってる」

「えっ!? 猫になれるの!?」


 嬉しそうに冬人は反応した。


「ふふん。そうだよ。まだ色々調整中なんだけどね」


 冬人が大袈裟に喜んでくれるので、私も鼻が高い。


「名付けて、そうだな……キャットランスフォーム!」

「相変わらずダサい……」

「うん? 冬人、今ダサいって言った?」

「ううん。凄く格好良いよ、秋姉!」

「ふふん。そうでしょそうでしょ。まあ、長いから略してキャットラで良いや」


 うんうん。やっぱり冬人は私の一番の理解者だ。私を理解し過ぎたあまり、私を好きになってしまうのも仕方がないな。


「ねえ秋姉。それ、完成したらどうするの?」

「うん? そりゃ使うでしょ」

「誰に?」

「夏木に」


 すると冬人は、あからさまに不機嫌な表情になった。不機嫌な表情でも、その端正な童顔の所為で可愛らしく見える。なんて羨ましい奴だ。


「僕に使ってくれたら良いのに」


 ボソッと冬人は呟く。


「あぁー、冬人嫉妬してるー。男の嫉妬は見苦しいんだぞー」


 私はここぞとばかりに煽ってやった。


「もう、秋姉のいじわる」


 頰を膨らませて怒る冬人。畜生。こいつ、怒っても可愛いな。もっといじりたくなってくる。


「でも秋姉。夏木お兄ちゃんを猫にして、どうするのさ」

「うーん。まずはリードを付けて散歩かな」

「……それって普通、犬じゃないの?」


 ああ確かに。猫にリード付けて散歩なんて、聞いたことがない。


「良いの良いの。猫にリードを付けて散歩しないのは、猫の性格的に向いてないから。でもキャットラの猫は中身が人間だから、大丈夫」

「中身が人間でも向いてないと思うな」


 冬人が正論を言ってくる。くそう、そんな子に育てた覚えはないぞ。


「調整がまだって言ってたけど、具体的に何するの?」


 うん? 妙なことを聞いてくるな。私の発明に興味があるのだろうか。


 ふむ。確かに助手が欲しいとは思っていた。最近、企業からの案件で忙しくなってきた。私が二人いれば良いのにと思っていたところだ。


 何より、助手がいた方がマッドサイエンティストっぽいではないか。


「まあ調整と言っても、元の人間に戻る方法なんだけど」

「あ、戻れるんだ」

「当たり前でしょっ!」

「秋姉のことだから、戻れないのかなって」


 私をなんだと思っているんだろう。そんなポンコツじゃないぞ、私は。


「ただ、戻る方法がね。今のところ座薬を使うしかないんだ」

「座薬? 座薬って何?」

「え? 座薬、知らない?」


 そっか。冬人の精神年齢は四年前。知識だってそうなのだ。なら、一般常識のいくつか分からなくても、仕方がないのかも知れない。


「座薬はね。お尻の穴から摂取するお薬なんだ」

「ええ、お尻の穴からぁ?」


 半信半疑の冬人。この子も何だかんだ言って、私の言うことを全て真に受ける訳じゃない。そういうところがしっかりしていて、気に食わない。


 春野か? 春野の所為なのか?


「そうそう。そうすると肝臓を経由せずに直腸に行くから、良く効くし、早く効くし、身体にも優しいんだよ」

「へえ。秋姉、良く知ってるねえ」

「えっへん。秋姉、えらいでしょう?」

「うん。えらい、えらい」


 私の頭を撫でてくれる冬人。この子はなんでも褒めてくれるのだ。


「でもね。やっぱり座薬って嫌でしょ?」

「まあ、お尻の穴に入れるんだもんね」

「うんうん。それに座薬じゃ色々不便だからね。例えば、一度猫になっちゃうと、自力でお薬摂取できないし」


 猫は自分のお尻の穴に、座薬を入れられないもんね。


「あと、このままだと、猫になっても身体が痺れちゃって動かせないと思う」

「そっか。じゃあ秋姉の言うとおり、調整が必要なんだね」


 うんうん。物分かりが良い。さすが春野の血を引く者。


 なんて思っていたら、ちょっと催してきたな。


「おしっこ」

「もう、秋姉! おしっこじゃなくて、お花を摘みに行きます、でしょう!」


 なんだそれ。どこの貴族だよ。





 おしっこを済ませて、部屋に戻った。


 冬人は、キャットラの座薬をまじまじと見つめていた。


「あ、秋姉。これさ、具体的にどうやって入れるの?」

「どうやってって、それは……」


 ええ……それ女子の私が説明して良いのか。


「あ、これ冬人が入れてくれたの?」


 説明の内容に迷っていたら、デスクにコップが置いてあった。そのコップにはお茶が入っていた。


「ああ、うん。いるかなって」

「うん。ちょうど喉渇いてたんだ」


 私はそのお茶をごくごくと飲んだ。うん? 妙な味がするな。まあ良いか。


「とりあえず、お尻の穴に入れたら良いんだよね」

「うん、まあ、そうね。入れちゃえば、勝手に中に入っていくから」


 私が言い終えた瞬間。


 ドクンッ!


 心臓麻痺でも起きて死ぬのかと思うほどに、心臓が強く脈打った。


 なんだなんだ!? 何が……。


「ぐぅっ!?」


 またも強烈に心臓が脈打ち、私は胸を押さえた。そして身体中が熱くなる。手足の指先まで身体が火照る。


「ぐっ……ぐぁあああああ!」


 動機。目眩。呼吸困難。薄れゆく意識。


 微かな意識の中で、身体が意識とは関係なく蠢いているのを実感した。


 身体の形が、変わっていく。


 やがて、苦痛は無くなった。しかし、身体が動かない。


「ふ、冬人……」


 私の声にしては、妙に高い。


「秋姉。秋姉なの」


 私よりも遙か上空に、冬人がいた。まるで巨人のような大きさだ。


「冬人、助けて。身体が痺れて、動けない」


 すると冬人は、私をそっと抱き上げる。


「ほら、見える?」


 そして姿見鏡の前に立って、私を見せた。


 ああ、やっぱり。


 私は猫になっていた。


「すごいや秋姉。本当に猫になっちゃった」


 嬉しそうな冬人。


「ねえ冬人。もしかしてあなたが?」

「うん。そうだよ」


 くそう。通りで色々聞いてくる訳だ。さっき飲んだやつに盛ったのか。確かに、お茶にしては変な味だった。


「秋姉がいけないんだよ。いつも、いっつも、夏木お兄ちゃんばっかり。僕はこんなにも、秋姉のことが好きなのに」


 そして、冬人はうっとりとした表情で私を見つめる。


「でも、こうなっちゃえば、こっちのもんだよね」


 まさにその通りだ。猫の姿じゃどうしようもない。せめて身体の自由が利けば良かった。しかし私の調整が足らないばっかりに、身体が痺れて動けない。


「ふふ。猫になった秋姉。可愛い」

「ふみゅっ!?」


 あろうことか冬人は、猫になった私にキスをしてきた。


「ちょ、冬人。汚いって。動物の口内は、細菌が多いんだよ」

「大丈夫だよ。秋姉が猫になってから全然時間経ってないんだから。口内の衛生状態は、人間の時と同じ状態でしょう」


 まあ、確かにその通りではあった。動物の口内が汚いのは、その舌で所構わずペロペロ舐めているからだろうし。


「おーい、秋音」


 唐突にガチャリと、部屋のドアが開く。現れたのは私の兄だった。相変わらずノックをしない。だから私のオナニーが目撃されてしまうのだ。


「お、おにぃ……がぶぁっ!?」


 兄に助けを求めようと口を開くが、冬人に口を塞がれた。身体が痺れているから、全く抵抗が出来ない。


「あれ、秋音は? というか冬人。なんだその猫」

「えへへ。拾ってきたんだ。可愛いでしょ」


 口を押さえながら言う台詞かっ!


 しかし私は身体が痺れている。抵抗どころか、暴れることすら出来ない。


「おいおい。うちでは飼えないからな。ちょっと出かけてくるから、秋音に言っといて」

「うん。わかった」


 そして無情にも、兄はドアを閉めて行ってしまうのだった。


「ふう。ダメじゃん騒いじゃ。ばれちゃうでしょ」


 言動が猟奇的過ぎる……!


「冬人。あなた私をどうするつもりよ」

「うん? まずは、散歩かな」

「へえ。リードでも付けるの。良い趣味してるじゃない」

「何言ってんの。秋姉の趣味じゃん」


 ぐうの音も出ない。


「でもさ」


 冬人は部屋中を見渡す。


「リードは用意してないみたいだね」


 冬人の言う通り。リードは完成してから買うつもりだった。


「散歩じゃなくて、早く戻して欲しいんだけど」

「まあまあ。せっかく可愛い猫になったんだし」


 そう言いながら、痺れてぐったりした私の猫の身体を、抱っこした。うぅ……。これ、なんだかお姫様抱っこっぽい。


 そして冬人は私を抱っこしたまま外に出た。私の鍵を使って律儀に鍵を掛けていく。


 くそう。私にキャットラを盛って猫にして拘束する以外を除けば、こんなにも良い子なのに……。





「あれ、冬人じゃん」


 春野の声だ。


 冬人に抱かれながら街を散歩していると、偶然にも夏木と春野に出くわした。二人きりか。身だしなみも小綺麗だ。さてはデートだな。くそう、私をのけ者にしやがって。おかげでこんな目に遭ってるぞ。


 案の定、冬人は指で私の顎を押さえた。身体が痺れている私は、それで一切口が開けなくなる。


「あれ、その猫どうしたの?」

「うん。拾ったんだ。ねえお姉ちゃん。うちで飼おうよ、この猫」


 飼う!? 飼うって言ったか今。こいつ、私をこのまま人間に戻さない気か!?


「うーん。うちじゃ難しいんじゃないかな」


 春野は苦笑いを浮かべて言う。


「あはは、そうだよね」


 あっけらかんと言う冬人。こいつ、さては私をからかっているな。


「じゃあ夏木お兄ちゃん。飼ってよ」


 やっぱり飼う気かっ!?


「いやいや、うちも無理だって」


 手を振って断る夏木。


「ええ。こんなに可愛いのに」


 冬人はそう言うと、ほらと私を夏木に向けた。すると夏木は、恐る恐る手を伸ばして、おなかをさする。


 すると頭がボーッとして、身体の奥底から得たいの知れない何かが湧き上がってきた。


 ああ、やばい。気持ち良い。


「ゴロゴロゴロ……」


 あまりの気持ち良さに、つい喉が鳴ってしまう。


「ゴロゴロゴロ……」


 くそう。止まらないぞ。我慢すらできない。


「やばい。喉鳴らしてる。超可愛い」


 夏木が私を撫でながら言った。くそう。普段では絶対に言ってくれない台詞に、思わずときめいてしまった。





 夏木たちと別れて、冬人は土手を歩いていた。


「どう? もう猫の姿も慣れた?」


 夕日がオレンジ色に世界を照らしていた。私を抱きかかえて歩く冬人を、ジョギング中の女性が追い越していく。河川敷に設置されている野球グランドでは、フリスビーを投げて大型犬と戯れている人がいた。


「慣れたわよ」


 短く私は言った。身体の痺れもほとんどなくなっていた。それでも私が逃げ出さないのは、冬人に人間に戻してもらわないといけないからだ。


「今日はおかげさまで、ずっと冬人といたなあ」

「楽しかったね、秋姉」


 にっこりと微笑みかける冬人。くそう。皮肉が通じない。


 ひゅうっと風が吹き抜けた。それによって土手に生えていた草が揺れた。もう冬だから、風が冷たい。


「冬人は、私みたいだね」


 好きな人を振り向かせたいが為に、周りの人に迷惑を掛け、そして本人にも迷惑を掛ける。今までの私って、そんな感じだ。


 分かるよ、冬人。必死なんだよね。相手が既に好きな人がいるなら、尚更だよ。頑張って自分に振り向かせたいんだ。


 恋しちゃったら、そうなっちゃうよね。


「冬人にされて分かったよ。私のやり方は、間違ってた」


 ようやく分かっちゃった。こんな強引なやり方じゃあ、ちっとも心は動かないんだ。よく夏木は私のことを、嫌いにならなかったよね。


「分からないよ」


 冬人は立ち止まって言う。


「だってさ、どうしようもないじゃん」


 その言葉の後に、私を抱き寄せた。気持ちが昂ぶって力んでいるのだろう。少し痛い。


 しかし甘んじて受け入れるべきだろう。この痛みは、まさしく冬人の心の痛みなのだ。


「秋姉が夏木お兄ちゃんを想う度に、僕は苦しくなっちゃうんだ。だったら、こうやって強引に僕のことを考えてもらうしか、ないじゃん」


 冬人の可愛げな顔が、歪む。泣くのを必死で堪えているのだろう。


「私もそう思ってたよ。そう思って色々してきた。それで、結果はご覧の通り」


 夏木は今現在も、春野と交際中だ。私ではなく、春野と。


「冬人。私たちのやり方じゃ、愛がないんだ」

「分からないよ」

「つまりね。独りよがりなんだ。自分しか幸せになろうとしていないんだ」


 特に今までの私って、そんな感じだ。私の発明で、夏木や春野が感謝したことがあっただろうか。喜んでいたのは、私だけだったのだ。


「冬人はどうして私を好きになったの?」

「それは……。秋姉は僕に優しくしてくれるし、夏木お兄ちゃんやお姉ちゃんよりも遊んでくれたもん」


 冬人に特別構っていたのは訳がある。私は人見知りが酷い。しかし年下の冬人にならある程度心の余裕が持てた。だから冬人に甘えていたに過ぎない。


 でも、それで冬人が私のことを好きになってくれたのなら、やはりそれは素直に嬉しいことだ。


「そっか。それで私のことを好きになってくれたんだね」

「うん……」


 さすがの冬人でも、顔を紅くしていた。思春期の男子なのだ。当然だ。


「じゃあさ。冬人も私に優しくすれば、私も冬人のことが好きになっちゃうかも知れないね」

「そう、なの……?」

「少なくとも冬人は、私に酷いことをされたから、私のことを好きになった訳じゃないんだよね」


 冬人はハッと息を飲む。私の言いたいことを察したらしい。


「そっか。僕は今、逆のことをしちゃってたね」


 悲しげに冬人は言った。


 簡単なことだったんだ。それをされて相手が喜ぶかを、ただ考えれば良いだけだった。私も冬人もそれが見えていなかった。端から見れば、馬鹿だなって思うかも知れない。でも、そうなっちゃうんだよね。恋は盲目だから。


「僕のこと、嫌いになっちゃった?」

「ばーか。私は秋姉だぞ」


 私は笑う。


「冬人が大好きな、優しい秋姉、なんだぞ」





 日が暮れた頃。私と冬人は帰宅した。でかけた兄はまだ家に帰っていないようだ。


「じゃ、じゃあ、挿れるよ」

「う、うん。優しくね」


 人に戻るには、座薬を入れないといけない。私は自室にて、冬人に座薬を入れてもらう。四つん這いになって、後ろ足を広げた。


「ええっと、ここかな」


 冬人が私のお尻の穴を凝視する。猫である私の、お尻の穴を。


 大丈夫。私は猫、私は猫。決してアダルトではない。小学生が見ても大丈夫な、健全な光景だ。座薬を入れるって、健全な行為のはずだ。


「えい」


 冬人の掛け声と同時に、お尻の穴から強烈な違和感が発生した。


「ふぉおおおおおおおっ!」


 あまりの違和感に、猫あるまじき奇声を上げる私。突き刺された何かが、全身を猛スピードで駆け抜けて、そのまま声として排出されたような感覚だった。


「だ、大丈夫?」


 冬人が心配になって声を掛けた。


「だ、大丈夫。はやくして」

「う、うん」


 再び、強烈な違和感。


「ふぐっ……ぐぅぉおおおおん!」


 やはり上げてしまう、奇声。


 そして実感する。妙に薬が大きい気がする。その所為で、全然奥に入っていない。


「な、なんだか大きくない?」

「ごめん、まだいれてない」


 驚愕の事実に、私は一瞬言葉を失う。



「僕の小指いれてた」

「なにやってんの!?」


 鬼かこいつは!?


「慣らした方が良いかなって」

「薬より大きいもので慣らそうとするなっ!」


 くそう。さっきの苦しみは何だったんだ。徒労じゃないか。


「良いから。さっさと入れてよ」

「う、うん。分かった」


 そして再度、お尻の穴に違和感。今度はちゃんと、薬の大きさだ。


「うっ、くぅうううううっ!」


 やはり、気持ちの悪い違和感。しかし薬のサイズだから、するすると奥に入っていく。


「はいった。はいったよ、秋姉!」

「う、うん。良かった」


 やがて、猫になった時と同様の苦痛が発生して、一通り悶えた後、元に戻った。


「あ、秋姉」

「ちょっ!? そうか。猫だったから服が……」


 私は全裸だった。即座に肝心なところを手で覆う。


「あ、秋姉の裸……」

「良いから出て行けっ!」


 私は冬人を追い出して服に着替える。


 ああもう、これだから思春期の男子って奴は。

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