第16話 入院3日目(手術日)
前夜はあまり眠れなかった。水分摂取禁止になる21時前に水をたんまり飲んだので、トイレに何度も起きる結果となった。もちろん緊張のせいもあるけど。
朝7時に看護師さんが浣腸しに来た。看護師さんにとっては日常業務のはず。
9時に主治医の先生が点滴を入れるために来室。前腕(手首に近いところ)に長~い針が入った。点滴開始。
11時過ぎに夫と母が来てくれた。手術は13:30からの予定で、食事も出来ないのでやることもなく、緊張のまま過ごした。テレビを付けていて、大阪で行われてる首脳会議の様子が映っていたのを覚えている。
何度か看護師さんが体温や血圧を測りに来たが、12時頃測った時、血圧の上が150mmHgを越えて驚いた。いつもは110mmHgとかだ。それから熱も37.5℃だった。点滴のせい?いや、たぶん精神的な緊張が原因。おそろしやー。
全身麻酔も手術も初めてだ。自分の意識がなくなり、お腹を開かれ臓器が取り出されるなんて、怖すぎる!
そして13時頃、いよいよ看護師さんが迎えに来た。前の手術が早く終わったので13:15からになったという。
普段は立ち入り禁止となっているドアが開かれ特別なエリアへ。そのドアで夫と別れた。背中を優しくさすってくれた。
そして看護師さんとエレベーターに乗り手術室の階に着いた。廊下で名前の確認があり、手術担当の看護師に引き渡された(そんなイメージ)
シャワーキャップのような帽子をかぶり、手術室へ。テレビで見るような、ザ・手術室ではなかった気がする。パジャマのまま手術台に仰向けになる。あ、5本指靴下はいてきちゃった。この靴下は隣のクラスの若い女の子が、入院前にプレゼントしてくれたもの。天然素材の良いものだ。応援してくれる気持ちを感じて少し心強くなった。
いよいよ硬膜外麻酔を入れるために横向きになり体を丸める。入れやすいように出来る限り体を丸めた。「協力するから上手に入れておくれ」と思いながら、膝をギューっと抱えて、これから切られるお腹を見ていた。
仰向けに戻り「まだ、心の準備が…いや、心の準備なんていつになっても出来ないんだ」なんてことを考えてた。
そして、酸素マスクがされ深呼吸するように言われる。「まだ眠くなる薬は入ってないですよー」と言われ、そのうち、なんか匂いのある気体が入ってきた。記憶はそこまで。
何か夢を見てるところで名前を呼ばれ目が覚めた。気持ち良く寝てた感じの目覚め。
「手術終わりましたからね」と言われて、あーそうだった、と状況がわかった。呼吸の管は目が覚める前に外されていて喉が少しイガイガした。
そのうち体が震えてきた。かすれた声で「なんか震えちゃう」と看護師さんに伝えたら「寒い?」と聞かれたが寒いのかわからない。長い時間の手術だと体が冷えるとか、体温調節が出来ないとかで、よくあることらしい。長い時間と言っても手術時間は3時間半くらいだった。
ホットパットみたいなもので体を暖めてもらうことになった。
まだ震えが止まらないうちに夫が来た。ということは、ここはもうHCUなんだとわかった。後から聞いた話では、私が酸素マスクをして震えている姿を見て泣いてしまいそうだったという。痛々しい姿になるであろうことを予測して、母には見せないよう夫に言ってあった。母は少し前に帰ったという。
30分程で震えはおさまってきた。お腹の痛みは感じない。
夫は既に先生から手術の結果を聞いたとのことで、安心出来る内容だったことを教えてくれた。
私はただ頷くだけ。とりあえず終わって良かったー。
夫は帰って行き、いよいよHCUでの夜。
いろんな方のブログで、HCUでの一夜がとても辛かったとの感想があり、手術よりもむしろ恐れていた。
脚に付けられたマッサージャーがシュポーシュポー、そして時折お腹の中をザーっと温かいものが流れるのを感じたのを覚えている。痛みはなく、口の中が乾いて2度ほど口をゆすがせてもらった。
ちょうど壁掛け時計が見える位置で、少し眠っては少し時計が進むといった感じで時間が過ぎていった。
一晩中なんども看護師さんが、傷口チェックと体温、血圧の計測をしてくれる。1時間おきだったと思う。カーテンで区切られてるので、このHCUに何人の患者がいるのかわからないが、手早くせっせとお世話をする、という印象だった。
朦朧とした私には、傷ついた兵士を寝ずに看病する野戦病院の看護婦さんのように見えた。
この看護師さんが担当してくれたことはラッキーだったと思う。淡々と仕事をする感じの方だったが、どうすると患者が楽かということがわかってるようだった。
口をゆすぐ時、背中に枕を入れてくれたり、それから、リクライニングに、なっているベッドを一旦フラットにして体を上に引っ張りあげるという作業を、何度もしてくれた。そうしてもらうと、そのあと姿勢が楽なのである。
そういうものなのかと思ったけど、朝になって担当が変わると、体がズリ落ちてきてしまっても、何もしてくれなかった。これで一晩は辛かったと思う。
私も人の体を扱う仕事。とても勉強になった。
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