第7話 嬉しい出来事

数日後


夏祭りが始まった

俺以外の全員が浴衣を着ている


そして、花火がうち上がる

その花火は色とりどりで、とても美しい


そんなことを思っていると高城さんが隣に座ってきた

そして片手に持っていたリンゴ飴を渡してくる


「……お礼」


「…俺に対して警戒するのは止めてくれ」


「別に警戒してないから。大丈夫だって信じてるから」


高城さんは、自分の胸に手を当てて考える

すると、思い出したかのように高城さんが例の事を聞いてくる


「そういえば、どうやって私を助けたの?」


「……三つの事をしただけだ。」


「三つの……事?」


「あぁ。それが―――――」



そうして、この数日間に起こした事を高城さんに話すのであった



―――――



とあるホテル


ガチャっと開くドアから一室に入る

探偵の読み通りなのであれば、ここに……


「お、高城ちゃん!?」


奥の方から声が聞こえる

どたばたとこちらに近付いてくる音が聞こえる


そして、向こうから顔を覗き込む人を確認した


「ちっ……んだよ……てめぇ誰だ?見た限り学生っぽいが……」


「俺か……俺は…じゃあ高城の兄でどうだ?」


「はぁ?兄だぁ?」


「ネタは出来上がってるぞ。今すぐ例のブツ出したらどうだ?」


「は?」


と言いつつこちらに近付いてくる

そして、その男のポケットから例のブツ。ナイフが出てきた


「お前、何者だよ。俺の高城ちゃんはどこだよぉ!」


「うるせぇよ。人生の負け組が」


暴言を吐く

そして、その後の出来事は想像に任せるが……

結果的に男は銃刀法違反で逮捕された



「……喧嘩はこっちが上…か」


そして、その場を離れる

後は頼んだぞ。警察よ




―――――



「……デカイな」


東京工匠こうしょう会社ビル

ここで高城さんの親が働いてるようだ


そして、ビルの中へ入っていく


受付嬢から声を掛けられたので、俺は答える


「今日は何用ですか?」


「あ、社長の高城さんに、少しお話がありまして。神埼さんの手伝いと言ってもらえると有難いです」


「かしこまりました」


と言って受付嬢は電話を取り、社長と思われる方と連絡を取っているようだ

そして数分後に、エレベーターの場所と、社長室へのルートを教えて貰った


神埼のお父さんは意外と地位が高く、言うことを聞かないと東京湾に沈められるとかいう噂も流れているが……


「実際は優しい人なんだよ……着いたな」


社長室の前まで到着した

さて、話し合いをするかぁ……


ドアをノックする

コンコンと音をノックした後、奥から声が聞こえる


「入ってきてもらって良いよ!」


許可を貰ったので、早速入る


うわぁ……広いなぁ…

どんだけ金を注ぎ込んだんだっていうくらいの広さ

これが……高城父か…


「いらっしゃい。神埼さんの息子の友人だね?」


「あぁ、はい。そうですね」


「そうか。とりあえずこちらへどうぞ」


礼儀良く、ソファーへと案内する

白髭に白の髪を靡かせ、高い身長はまるで外国人を連想させる

というか日本人で白髪は居るのだろうか

そこの知識は残念ながらない


「さて……多分私の娘の事かな?」


「お見通しで。そうですね。あなたの娘さん……ですね」


「ふむ……んで、どんな要件なんだい?」


そう言いながら紅茶を淹れる

そして、その容器を俺の前にある机に置く


その際、高城さんと同じ香水の匂いがし、家族なのかと再認識した

だって父が白髪なのに娘が紫染みた黒の髪だからなぁ……


「……娘さんは、寂しさを感じてるようです」


「ほう……寂しさですか……」


「えぇ、寂しさというのは私も感じたこともあります」


寂しさを感じたことは無い

むしろ孤独が好きだ。

俺は一匹狼なのだ


まぁ要はこれは事実では無い

嘘を語っているのだ

寂しさという感じたことのない感情を妹から聞いたことと嘘を混ぜて、あたかも事実を話しているように言う


「―――――というように、あなたの娘さんも寂しさを感じているんです」


「う~む……ということは会えと言うのかい?」


惜しいな

会うだけではない

一緒にいてもらうのが今回の解決に向けての案件なのだ

ここは慎重に判断しなければ…


……いや、これをあげれば良いのでは…?


「……こちらをあげます」


「おや、これは……京都旅行券?……何故これを私に……」


「娘さんと楽しい旅行を」


そう言って社長室を、ビルを出ていった

後は本人次第だな


―――――



「……寂しい思いは私も感じたな…」


小学生の頃、私の親が喧嘩を理由に行方不明になって、私1人だけで数週間も家に居た


その寂しさはよく分かっている

だからこそ、娘には寂しい思いをさせないようにと思ったが……


「私は、親失格だな」


あの少年は、正しい選択をしたよ

……将来有望だな、彼は



―――――



「っ!……だから!」


「そうだ。明後日から2泊3日の京都旅行、楽しんでくれよ」


「っ―――――あなたって、優しいのね」


そう言う彼女の方を見ると、清々しい笑顔でこっちを見ていた


あんな生活は嫌だと、自分でも気付いていたのだろう

それを修正され、しかも京都旅行二泊三日の旅行券付きだ



「ふふっ、やる気が出てきたわ。楽しく夏休みを過ごしましょう」


「……あぁ、そうだな」


そう言って、俺は打ち上がる花火を見て呟いた



「……これで良いんだよな。父さん」



そうして彼女の危険な人生たびは、花火が打ち上がる前に、問題を解決するのであった



第7話 嬉しい出来事―――――


―――――――――― 危険な道を歩む少女 終






「……ふふっ」

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