第6話 崩せ。そして壊せ

「......全部ぶっ潰す」


「は?」


神埼と一緒に図書室で話す

話の内容は高城さんのやっていることを正しく治すということについてだ


「でも全部ぶっ潰すってどういうことだよ…?」


「一度崩して治す。それが有効かもしれないという話だ」


一度崩しても、崩されても、治せば良い

ドミノや、トランプタワーも、崩れたとしてももう一度やればいい

簡単だ


外からミンミーンとセミの声が聞こえる


「……蝉も言ってるぞ。どうやればいいのかって」


「蝉の声が分かるんだったら蝉の研究したらどうだ」


「えぇ……蝉ってなんかやだなぁ...」


蝉の言うことが分かるのに蝉がやだってなんなんだ…

まぁ、良い。



「神埼、やるぞ。メンバーにも事情を伝えておいてくれ」


「え、おう……わかった…」


そして、俺は読んでいた小説を机の上に置き、そのままその場から立ち去るのであった



――――――



「えっと……そろそろ先生に報告しておきましょうっと...」


私は立ち上がり、用具入れに掃除道具を入れる

そして大広間を出ていこうとすると、階段のところで何やら大声が聞こえる


恐る恐る覗いてみると……


(っ!……なんで勝ノ原君が神埼君の胸ぐらを掴んでるのっ!?)


耳を澄ませる

すると、驚きの発言が出てくる


「あの高城さんが援交なんてするかよっ!神埼、お前いい加減にしろよっ!」


「っ!」


なんで…

なんで私の…

……まさか、あの男っ!


「でも、証拠もあるっ!」


「まさか、高城さんの事を嫌ってるのかっ!皆から高城さんへの信頼をぶち壊したいのかよっ!」


「そういう訳じゃないっ!ただ本当の事を言っただけだろっ!」


嘘……

あの男、馬鹿じゃないのっ!

私の事、もしかして嫌ってた…?


でも、これで皆から私への信頼は無くなってしまう

早くなんとかしないと…


「待ってっ!」


二人の前に出る


「高城さん…」

「高城…さん?」


二人がこっちを見る

すると、勝ノ原君が口を開く


「なぁ高城さん。今の話、聞いてたのか…?」


「っ……それは…」


「高城さん、違うよな?援交なんてこと、高城さんはしない…よな?」


勝ノ原君が恐る恐る近づきながら聞いてくる

私は、こう言い放ち、立ち去った


「ごめんなさいっ!」


階段を早く降りる

その場から逃げるように


「……勝ノ原って演技上手いな」


「だろ?…で、本当なのか?」


「え?嘘だけど」



―――――



私は図書室の前まで来た

すると、玄関からまた声が聞こえる

今度は新城さんと立花さんだ


一体なんの話をしているのかと、耳を澄ませる

すると、やっぱり私の事を話していた


「えぇ~そうなんだ……もう高城さんの事信頼出来ないかなぁ」


「っ……」


「だって、金目的でしょ?金しか目が無いの?って感じでウザイなぁ」


「そうだよねー。ここに来たのは、もしかして私達にも援交の手伝いを……」


「うわぁ……それはもう無理だわぁ」


ギャハハと笑う二人

そのまま二人は外へ行く

終わった……

全て終わった……


「……終わった…」



―――――



「何が終わったんだ」


その場に座り、涙をポロポロ流す高城さんに対し、後ろから話し掛ける

俺の声に気付くと、俺の顔の方を向き小さな声で呟く


「……でよ…」


「……なんだ。言ってみろよ」


「なんでよっ!どうしてよっ!」


突然、胸ぐらを掴まれる

力を入れ、涙目で訴えている


「どうして……どうしてっ!……あなたにメリットなんて無い癖に、なんで……」


また、俺の前に座り込む高城さん

俺はずっと前の方を向き、一回も高城さんの事を見ない

そんな状態で、さらに壊していく


「高城さん。君は最低だ」


「っ……」


もっと壊すか…

もっと……壊して“みたい”


「色んな人に迷惑を掛ける奴に、この夏休みを楽しい思い出で埋める価値なんて無いんだよ。高城」


高城さんを呼び捨てにする

どんどん壊していく

高城さんが間違いに気付くまで


……………助けを乞うまで



「っ……私をどうしたいのっ……ヒック……」


泣き出した

大きな声で泣き出した

そんな姿を見る

だが俺の頭の中では、何も変わらない


ぶっ潰して、助けを乞うまで、壊れていても壊す



「っ……うぅ……なんでっ……なんで………私の積み上げたものが…」


「積み上げたものがどんどん崩れていく。それで良いんだよな。

だって、“金の為”なんだろ?

ならずっと援交してればいい。どんどん崩れて、名声も友人も思い出も全部崩れても、金目的なら大丈夫だろ?

援交してる相手も、体目的で人生を捨てたんだ。

二人仲良く未来を無くすんだな」


全部壊す言葉だ

これで高城さんが壊れるのであれば、高城さんはこのセンターに来れるはずは無い

ちなみに援交している相手の事は探偵に調べてもらった

何時かの電話の相手だ


「ここに集まってるのは実力のある者、実績のある者。そして日本を代表出来るほどの者だ。

でも高城さんは違うだろ?勉強すれば良くて、あとは援交するんだろ。

なら要らない。ここから出てけ」


そして、その場を離れようとする

すると、後ろから掴まれる

高城さんが俺のシャツを掴んでいるのだ


「……なんだ。要らないと言ったはずた」


すると、高城さんは言った

その言葉を期待していた

だからこそ、顔には出さないが、嬉しかった

それでこそ、高城さんだ――――



「……私を、助けて―――」


「……当たり前だ。お前を危険な人生どん底から助けてやる」



さぁ、やってやるか



第6話 崩せ。そして壊せ―――――

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