第3話 天使の名前
「......と、いったところで、どうでしょう?」
「どうと言われてもなぁ......設備は完璧だし、図書室もあるし、小さな校舎にしては......完璧」
「ひ、一言余計ですっ!」
先生と神埼が茶番をしていると、先生の電話がまた鳴る
先生は携帯電話をだし、応答に出る
その間、はいとしか言ってない先生の言葉に耳を傾ける
「はい......はい......はい?....はい。......あー......はいっ......はいっ!分かりましたーっ」
「はい」だけで済ませる先生は、有能か無能か......
判断しかねるな...
それを判断しない限り、駒としての信頼度も教師としての信頼度は不明というところだ
「皆、今日はこれで終わり。もうお家に帰っても良いということらしいですっ」
「本当ですか?」
高城さんが質問をしながら先生を見る
先生は笑顔でこう言う
「はいっ!このあと、少し職員が立ち入るようなので、出来るだけ早く帰る準備をしてくださいねっ」
「「はーい!」」
皆が口を揃えて言う
さて......それじゃあ帰るか
と、その前に...
_______
「え?あの子の名前?」
教室に残っていた新城にあの天使さんの名前を聞いてみる
「...あぁ......あの天......あの金髪の子の名前が知りたい。新城は知ってるだろ...」
「天?...まぁ......知ってるけど...なんで?」
笑顔でそう返してくる新城だが、その裏で何を考えているのか、ちょっぴり怖い気がした
それにしてもそんなこと考えてなかったな...
さて......どう理由を返したものか...
すると、教室に大きな風が入る
それと同時に声が聞こえる
「暁君には教えなくていいですよ。新城さん」
「「え?」」
俺達が見た先には、風に煽られた金髪の天使が......笑顔で俺を見る
その神秘的な姿に、顔には出さないがドキッとした
だが、教えなくていいとはどういうことだ...?
「暁君は既に私の名前をー......知ってますっ!」
俺に近づいてきて、俺の前でジャンプして、俺の顔を覗き込む
その時の笑顔がまた可愛く、例のごとく顔には出さないが、脳はパンク状態である
心臓が少しずつ鼓動を大きくしていく
「......もしかして、忘れました?」
「...あ、いや......すまない.....忘れた」
そっぽを向き、頭を掻く
こんな美少女は記憶に残っているはずだと信じたいが、生憎とそんな記憶がない
どうしてだろうか......人間は記憶を140年分保存出来るとかなんとか...
確かテレビで言っていた気がするが、何故無いのかなぁ...
「ねぇ、二人は......どういう関係なの?」
新城が首を傾げて尋ねてくる
俺はこの子の事を知らないから、関係と言われても分からないなぁ...
「それは、私じゃなくて......あ、すみません...ちょっと電話に出ますねー......あ、もしもしお父様?」
後ろを向き、電話に出る天使さん
その間にカバンを取り、待とうとすると、新城が近付いてきて聞いてくる
「ねぇ......本当にあの子の事知ってる?」
天使さんには聞こえない程度の声量で聞いてくる
それに対し、少し声の量を抑えて言う
「いや、知らないし、知り合いの女子は新城ともう一人......」
「もう一人?」
「いや、それは忘れてくれ......だが、あの子の事は知らないし、よく分からないんだ......だから名前だけでも知っておこうと思ったんだが......」
天使さんは電話を切り、こっちに来る
「まぁ...本人がダメっていうなら自分で探すよ」
「...お待たせしました...私はもう帰りますねっ!それではっ」
天使さんは大広間である教室を出ていく
新城も、カバンを持って大広間を出ていこうとする
「ねぇ暁君」
「どうした、新城」
新城がドアに手を掛けた時、後ろを振り返る
そして顔を赤らめて言う
「......まだ、私の事名前で呼んでくれないの?」
「...いや、新城って呼んで...」
「そっちじゃなくて.........その......下の名前...」
下の名前......
確かに過去に言われた気がするな。
下の名前で呼んでほしいって
理由は分からないが...
「......やだ」
「は?」
うわぁ......怒ってらっしゃるなぁ...
「いや、今まで人の事を下の名前で呼んだことは無いからな。さて、帰るぞ」
ガララ...
「むーっ......まぁいいや。それじゃ、行こっか」
「...あぁ...」
そして、センターを後にする
坂を下り、家に続く歩道をずっと歩いていく
_________
「......そっか...」
その頃、とある少女がセンターの玄関で呟く
その少女の持っている写真には、暁が撮られている
「......でも、最低でも明日には気付いてほしいなぁ......」
そのようなことを呟き、写真をカバンに閉まって帰宅路を行くのであった
________
「...お母さん」
「んー?なーにどうしたの?」
信頼度も料理の腕も最高峰のお母さんにあの天使さんについて聞いてみる
意外と裕福な家庭であり、解放的な新品な家に住んでいる
そのどれもがお母さんが成し遂げた様々な出来事が繋がっている
その才能が俺にも流れたんだろうな
「...スタイルが良くて透き通った金髪の子......身長が160ぐらいで、小学生のように見えて今高校生くらいの歳の女の子って知らないか?」
「う~ん......どうだろうねぇ......うん。味は大丈夫~♪」
お母さんもどうやら知らないようだ
それよりもなんだかいい匂いが......
「完成~!母親特性シチューカレーっ!」
「...わぁー......」
「うわぁ...棒読みだなぁ...零君は...まぁいいや。
「了解...」
いつも感情が無いように顔の表情も変えない
声は少し掠れているし、言葉もなんか変だし......
コンコン
「おーい美也。シチューカレーが出来たってさ......入るぞー」
鍵は開いていた
ドアを開け、部屋に入ると暗い
寝ているのか...?
「......部屋をいい加減片付けた方が良いぞ......見つけた」
部屋の奥へと行くと、布団をベットから剥がし、布団の中でもぞもぞと動くところを見つけた
その布団を剥がし、問い掛ける
「こら......何やってたんだ」
「ん......ニャアニャア?」
「ニャアニャアはもうキッチンで餌を貰ってるぞ」
ニャアニャアというのは家で飼っている猫だ
美也はニャアニャアをよく抱いている
抱き心地が良いんだと......
「こら......起きろ」
「......お兄ちゃん......キッチン......連れてって」
「はいはい...」
美也をお嬢様抱っこでキッチンまで歩く
途中階段があったので、少し手間取ったが、無事にキッチンに到着した
「あらあらぁ?お二人とも仲が良いことで...ふふっ」
「
気が付けばとっくに外は夜だった
あの子の事はよく分かっていないが、今は夕飯を食べるか
......シチューカレーって始めて食べるんだが
「......明日、名前聞こうかな...」
そう思いながら、夜を過ごすのであった
第3話 天使の名前___
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます