1-3

2周目の高校2年生、17歳の冬。1周目の俺が死んでいた頃。俺のいたグループは、俺入れて男子5人で構成されていた。

そのグループの中で、初めて彼女持ちが誕生した。

原野光樹という名前のその男は、ある寒い日の朝、俺の顔を見るなりこう叫んだ。


「俊哉、俺、彼女できた!」


……。

………。

…………は?


「光樹、いま、なんて…?」

「だから、彼女できたんだよ!榎本さん!俺、告られたんだ!」


腰が抜けそうだった。榎本さん…榎本夏美は、学年でも指折りの美少女だ。


「そ、そうか…おめでとう」


俺はなんとか祝福の言葉を口にできたが、笑えていたかどうかはわからない。

光樹はカッコイイ奴だ。爽やかなルックスで、何より男女関係なく誰にでも優しい。榎本さんが選ぶのも頷ける。


だが俺は絶望していた。友人に彼女ができたのだから一緒に喜ぶべきなのだが、圧倒的に絶望感の方が高かった。


俺は彼女がいたことがない。


それも1周目も合わせて34年間だ。1人もできたことがない。更に言うと、その34年間で未だ初恋すら経験していないのだ。

幸い、1周目の頃仲の良かった奴に彼女持ちはいなかった。だからこそ気にしなかったのだ。2周目にして初めて、身近に彼女持ちが現れた。俺は彼女がいないことに急に焦りを覚えた。


彼女を作りたい。いや、まず好きな人からだ。意中の相手…そういえば、これまで漫画やアニメ、アイドルにもハマってこなかった。俺の理想のタイプはなんなんだ?わからない…わからないぞ。人生2周目の俺にわからないことなんてないと思ってたのに…!


激しい動揺と絶望感が混じり、俺はその場でパニックになっていた。


その後のことは全く覚えていない。

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