九人目 罪を消すことはできない
「お前、戦争を仕掛けてそのうえ人を殺してきただと?ふざけるなよ」
暗い部屋の中の二つのシルエット。窓からの月明かりでうっすらと部屋の大量の歯車が写し出される。手に持ったランプの明かりに照らされ、見えるのは歯ぎしりをして憤慨する黒髪の男。しかしその顔には悲しげな表情が浮かんでいた。
「最近おかしいんだよ、お前も、人間の国のほうもさ…」
ポツリと呟いたのは、目の前にいる血塗れの死神に向けてか、男自信にもよく分かっていない。今回の戦争は、人間にとっても、魔物にとっても歴史に残る大事件だった。
「数年前、人間の世界の中のある国の王の弟が消えた。その年、その国は他の国々から迫害され始めた。今は独立しているが数百年、数千年前には植民地であったこともある。」
黒髪の男は淡々と話し出す。
「そのあとだよ、俺たち魔物が人間から省かれるようになったのが」
ヒュンと黒いものが空を切る。黒髪の男の尻尾だ。男はランプを顔の高さまであげる。鋭い目がグッと細くなる。
「何が言いたいんだ、ヒバナ」
窓の外を眺めていた死神がくるりと振り返る。ヒバナはふんと鼻をならし
「どうせ知ってるんだろ、九つの悪魔のことを…」
ざりっ、と靴が擦れる音が反響する。ここは時計塔、狭い部屋に不釣り合いな程大量の歯車。しかしその歯車はもう動くことはない。
「君も知っていたんだね…でも、私たちが未然に防ぐことは出来ないんだよ」
そういう死神にヒバナは妙な違和感を持つ。言葉では言い表せない、なにかが違う…
「知っているかい?九つの悪魔の話。」
死神は歌うように口を開く。
「九つの悪魔と言われているが、間違った人を正し、数々の試練を与えたと言うものだろう?」
それがどうした、と言うようにヒバナが口を開く。
「それに魔女のアイラだって、元九つの悪魔だ。他に国王側近のローレンや画家のイオラだってそうだ。皆してもう九つの悪魔の時代は終わったんだって隠居生活してるじゃないか。」
死神はふと月を見る。血に染まったように赤い月を…
「もうすぐ戦いがおきる、避けられない戦いだ。そうなれば九つの悪魔の力が必要になるだろうにな…あの時のように」
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