四人目 人間だなんて…嫌いなんだ

「ただ純粋に、自分も含めて、人間が嫌いなんだ」

鷹のように鋭い青い目を男に向けて、無表情で少年は語る。


「あれは幼稚園のときだ、普通に県内の幼稚園に通っていた…純粋無垢な子供だったときの話さ」

秋谷響あきのやひびき、都内の幼稚園に通う幼稚園児。その頃は無邪気に笑い、明るく人懐こい性格だった。先生にも好かれ、毎日母親と手を繋いで歩く姿はなんとも愛らしいと近所の人間も可愛いわねと笑っていた。しかしそんな幸せはつかの間、ある日突然先生から平手打ちをくらった。大きな音をたてて頬を叩かれた響は、ただ呆然としていた。なにか悪いことをしたのかな?と言うように首をかしげて先生を見る。だがその顔にはこれまでのような優しさは感じられなかった。目をぎらつかせ、怒りと憎しみに満ちた目で見返される。幼い響は怯む、そして泣きそうになると

「あんたみたいな化け物にうちの預かっている大事な子達は触らせないわ!!」

何を言ってるんだろう?どうしたんだろう?なんで怒っているの…?

その日から幼稚園だけでなく、あらゆる場所で暴言の嵐が飛び交っていた。勿論、実の両親にまで。

そんな悪環境で育った為か、いつしか笑うことなどなくなった。誰からも愛されず、憎しみの籠った目でみられる。まだ子供の響には耐えられなかった。

「まあ、そんなところさ。きっと今は皆、俺がいなくなって喜んでるだろうね?ところでさ、おじさんは俺のこと、殴ったりしないの…??」

真っ直ぐな目で男を見つめる。その目がこれまでの苦しい人生を物語っていた。

「ああ、私かい?何故ならね…」


「君と同じ、人間じゃないからだよ。」

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