二人目 人間が見ている世界は、ほとんどが未知の世界

殺風景な部屋、白に統一された家具は自己主張もせず、ただそこに静かに寝ているようだ。しかしそんな雰囲気を壊すかのようにただ一つの入り口のドアは鮮やかなピンク色をしていた。まるでおとぎ話の主人公の部屋のように、今にも頬をドアのようなピンク色に染めた可愛らしい顔をした子供が開けてにこりと笑い入ってきそうだ。しかしそのドアを開けたのは若い男性。パタンパタンとスリッパをならしながら部屋に入ってくる。

「…秋谷響あきのや ひびき、お前は何故生きている?」

意味の分からない言葉を投げ掛け、彼はどすんと部屋の椅子に座る。

「君は、君の中には、君の知らない君がいる。」

目を伏せて昔の思い出に浸る。夕焼け空に遠くで蝉の鳴き声がする。その声は、思い出したくない過去があるのか、とても


とても悲しい鳴き声だった


「…ここは?」

ベッドに死んだように眠っていた少年が目を覚ましたのは、月が顔を出した頃だった。目をパチパチとさせて、生きているのか、死んでいるのかも分からないように頬をつねったりしていた。

「残念ながらお前は生きているよ」

それまで動かなかった男性が、いきなり口を開いた。それは、少年が屋上で会った男だった。彼が助けたのか、それとも二人とも死んだが彼自身もよく分かっていないのか…しかし、彼が嘘をついて得することなどない。不思議そうにする少年に男は声をかける。

「君は屋上から落ちた。勿論誰も助けていない。そのビルからここまで運んだのは私だが、その生命力には感心するよ。しかも、軽傷で済んでいる。これが、どういう意味かわかるかい?」

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