第5話 高校野球狂騒曲がはじまる夏
野球ファンなら「佐々木
論点は幾つかありますので、少し整理してみます。高校球児の憧れ・甲子園大会を目前に何故、監督はエースを温存したのか。佐々木君とチームメイトも含め、大船渡高の野球部員全員が甲子園を夢見ていたはずです。彼を中心に作り上げたチームなら、何か方策がなかったか少し残念です。球数制限も課題のひとつでしょう。身体が発達途中の高校生に致命的な故障をさせないための考え方で、登板過多は大学生やプロの世界でも問題になっています。実際、故障者も少なくありません。
県予選を振り返ります。3回戦まで危なげなく勝ち上がった大船渡は、4回戦の盛岡四高と延長12回、続く準々決勝は久慈高と延長11回を戦い、ともに2点差で勝ち上がりました。佐々木君は森岡四戦に先発し、12回を投げ切りました。球数は194球。久慈戦は登板していません。準決勝に先発した佐々木は一ノ関工業を129球で完封しました。スコアは5-0。で、決勝の花巻東戦。佐々木君は先発はおろか、登板の機会さえないまま大船渡は2-12で敗れ、物議を醸しているのです。
結論から言うと、私は決勝戦で佐々木君の登板を回避した監督の判断自体は評価します。ただ、問題がなかったとは言いません。佐々木君やナインは口にこそ出さないものの、ベストメンバーで甲子園を目指したかったと思います。指導者としての監督に注文をつけるなら、決勝までの佐々木君の起用法に疑問を呈します。決勝までの試合の中で、佐々木君を含めた投手陣で継投できなかったのか、と。
負けたら終わりのトーナメント制なので、対戦相手や試合展開によってフレキシブルな対応は求められます。が、決勝まで見据えた佐々木君の起用法には何かもっと工夫があったのでは、と思ってしまいます。「決勝までに敗れたら意味がない」とのご批判もあるでしょう。しかし、やっと辿り着いた決勝の舞台。恐らく予選の中で一番強敵のライバル相手にベストメンバーで戦えずに敗れるナインのやるせなさは推測して余りあります。県大会を制した花巻東ナインの心境も複雑でしょう。2度の延長戦も想定外だったかもしれません。しかし、監督は用意周到に佐々木君の他に4人の投手を育てていたのです。批判されるとするなら投手陣の起用法にあったと考えます。
「たられば」は通用しないのがスポーツの世界です。佐々木君に無理をさせなかったことが後に「正解」だったと思えるような将来の活躍を期待したいと願います。
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