第122話 パラージの街の危機

 俺達が迎えの船に乗り込むと、すぐさま船は出航する。とはいえ、事情を知りたいな。パラージの街が大変なことになっているって、マジで何があったんだ?


 俺達は全員で船のブリッジへと上がる。そしてそこで、事情を詳しく聞くことにする。


「おい、パラージの街が大変っていうのはどういうことだ?」

「すまないが詳細は俺もわからない。俺は親方から、街が大変なことになるかもしれないから、ガリウムさんにタングさん、それに息子さん達の計4人を大至急連れて来てくれって言われただけなんだ。他の連中も一緒だ」


 さっき俺達を呼びに来てくれた木こりのおっちゃん達はどうやら何も知らないみたいだな。にしても、父ちゃん達だけならまだしも、俺とジンクまで大急ぎで連れて来いって、一体何なんだ?


「そっちの連中はハンターだな? 何故ここにいる? お前らは何かしらないのか?」


 するとガリウムのおっちゃんは、船に乗っていたハンター達に話の矛先を変える。確かになんで木こりのおっちゃん達の船に、ハンターが乗ってるんだろうな? 木こりのおっちゃん達はモンスターを追い払うことくらいできるって話なのに。


「ああ、俺達はハンターで間違いない。ここにいる理由はそこの木こり達の護衛だ。お前さん達が昨夜泊ったという位置まで、そこの木こり達だけじゃモンスターが出た時に心許ないってことで、急遽依頼を受けた」

「親方がいればまた違うんだが、ここにいるメンバーだけじゃ戦力として少し心許なくてな」


 なるほど、俺達が船着き場にいたから要らなくなったが、まだ船着き場にいなかったら、昨日の場所まで探しに来る予定だったってわけか。


「それから街の状況に関しては、詳しい話は俺達も知らん。ただ、朝からハンターギルドが騒がしかったのは事実だな。この護衛依頼も、ホランさんからの緊急依頼だった」


 ホランのおっちゃんはパラージの街のハンターギルドのギルドマスター、トリおばちゃんの旦那さんで、普段は試験官なんかをやっているギルドの重鎮だ。そんな人からの緊急依頼ってことは、間違いなく緊急な案件ってことだな。


「詳しくは誰も知らないのか、だが、出来るだけ状況を把握したい。昨日帰ってからの出来事を全て教えてくれ」

「それくらいならお安い御用だ。まず、昨日あんた達と別れてから俺達はパラージの街に船で帰った。例の大木と、ジャイアントハニービーの巣も持ってな。それで、大木は店の倉庫に運び入れたんだが、ジャイアントハニービーの巣はそのまま港の倉庫に入れておいたんだ。既に結構遅い時間になっていたし、夜分に家に邪魔して作業をするのも迷惑かと思ってな」


 まあ、あの時間からの帰還なら当然だな。


「それで、今朝タングさんの家にジャイアントハニービーの巣を運びに、親方が出かけたんだ。俺達はその間今日の仕事の準備をしていたんだが、親方がなかなか戻ってこなくてな、どうしたんだろうと先輩が様子を見にいったんだが、その内先輩が血相を変えて帰って来てな。それで大急ぎで出航することになったんだ。護衛のハンターの人達とはその時に出会った」

「ふむ。と言う事は昨日までは異変は一切見られず、今朝突然何かが起こったということか?」

「ああ、そうだと思う」

「う~む。一体何が起こっているんだろうな。周辺のダンジョンで異常があったとしても、俺達を呼び戻す理由が分からないし、そもそもダンジョンの異常が突然今朝起きるってことも考えにくい」


 うう~む、実に謎だな。するとハンターのおっちゃん達もダンジョンがらみでは無い可能性が高いと教えてくれる。


「俺達もダンジョンがらみでは無いと思う。ダンジョン関連なら異常はすぐに街中に知らされるからな。それに、俺達はこう見えてそこそこランクの高いハンターだ。そういう戦力が必要な状況でなら、戦力として扱われるはずだ」

「ふむ。となるとますますわからんな。なぜ俺達なんだ? しかも高ランクのハンターまで護衛に付けて」


 その後もガリウムのおっちゃんと木こりのおっちゃん、それとハンターのおっちゃんが色々と話し合いをしていたが、結局なんにもわかることなく、船はパラージの街の港へと到着した。




 港へと入港すると、そこでは木こりのおっちゃんだけじゃなく、ハンターギルドの職員さんまで俺達を出迎えてくれた。


「ガリウムさんとタングさん、それにジンク君にアイアン君ですね?」

「ああ、その通りだ。その服、ハンターギルド本部の職員だな?」


 ガリウムのおっちゃんが代表で答える。


「はい。直ちにハンターギルド本部の地下訓練場へと来て頂いていいでしょうか? 魔法自動車を用意してあります。詳細の説明も車内で致します」

「わかった」


 こうして俺達はギルドの用意してくれた魔法自動車で、ハンターギルド本部の地下訓練場へと向かうことになった。そしてその車内では、この街で今起こっている、大変な出来事の詳細が語られることになった。



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