第115話 ジンクの作戦フェイズ3とフェイズ4
「よしアイアン、相手の出方次第だが、フェイズ3に移行だ」
「わかったぜ」
ジンクの立てた作戦のフェイズ3は残党処理だ。どうもミツバチってのは女王蜂を倒しさえすれば勝手に瓦解するってわけでもないようなんだよな。だからミツバチ系のモンスターであるジャイアントハニービーも、女王蜂を倒しただけだとまだまだ安心とは言えないようなんだ。
ここからは相手の出方次第なところもあるが、巣にはまだ卵もあれば幼虫達もいるってことで、十中八九巣を取り返そうとするだろうな。幼虫にロイヤルゼリーを与えて育てれば次の女王蜂が生まれるって話だし。
俺とジンクが少し敵の出方を伺っていると、予想通り残りのジャイアントハニービー達は、どこかへ立ち去ることもなく巣を取り返そうと全力で突進してきた。
「やっぱそう来るよな。よし、俺は幼虫どもをやるから、アイアンは外にいる連中を頼んだぜ」
「わかったぜジンク!」
さ~ってと、女王蜂のいなくなったジャイアントハニービーの強さはどんなものか、試してやるぜ!
俺は火炎放射器で飛んでくるジャイアントハニービー達に攻撃を仕掛ける。女王蜂の強化魔法が切れた影響か、ジャイアントハニービー達の動きはさっきまでと比べてもだいぶ緩慢だ。ものすごく簡単に当てることが出来るな。
「はっはっは! ずいぶんとのろまになってるじゃねえか! そんな動きでかわせるほど、俺の火炎放射は遅くねえぜ!」
俺の火炎放射が当たったジャイアントハニービー達は次々に燃え上がり、そして地面に落下していく。というか、地面に落ちる前に死んでるっぽいな。地面に落ちた連中がピクリとも動かない。さっきまでならミツロウガードで多少は耐えていた攻撃なのに、こうもあっさりと死んでいくとはな。女王蜂の強化魔法が切れた影響は、防衛力にも大きな影響を与えているようだな。
「ほう、一気に焼き殺せるとは、さっきまでとは威力が違うな」
「いや、違うんだジンク。威力はさっきまでとほとんどかわっちゃいねえんだ。こいつら、女王蜂の強化魔法が切れたとたんめっちゃ弱くなったんだよ」
「ほ~、ならこっちも楽勝かな?」
ジンクは先ほどと同様にクローミサイルをウインチ代わりに使って木を登り、ジャイアントハニービーの巣に入り込んでいた。
そして、巣のハニカム構造の中にいる幼虫達めがけて武装ゴーレムの腕を伸ばし、ポイポイポイポイ幼虫を引きずり出しては地上に捨ててくる。幼虫達も巣から出されまいと少しは抵抗しているようだが、ジンクの武装ゴーレムのパワーの前には無力のようだ。
「おいジンク、ポイポイポイポイ幼虫を放り投げてくるけど、こいつらどうするんだよ? 落下ダメージで死ぬほど柔くも無いぞ?」
「そっちで潰しといてくれよ。火炎放射を使わなくてもひき殺せるだろ?」
「いやいや、俺がやるのかよ!? そこで潰してから投げ捨てりゃあいいじゃねえか」
「そいつは無理だ。ジャイアントハニービーの巣はミツロウの原料になるんだろう? 巣のすぐそばで潰して巣が汚れたら後で何言われるかわかんねえぞ」
「むぐぐぐぐ」
くそ、理はジンクにありか。かといって3号君でひき殺すのはな~、汚れそうだから絶対に嫌だ! ここは上空の連中を焼き殺した後に火炎放射で止めをさすことにしようかな。うん、幼虫どもはろくに動けないんだし、それが無難だな。
数分後。
「ふう~、これで終わりかな?」
「ああ、幼虫どもにも止めをさしたし、終わりだな」
女王蜂のいなくなったジャイアントハニービー達は俺とジンクの敵ではなかった。残党もそんなに多くなかったし、ものの数分で残党処理は終わりを告げた。
「よし、それじゃあ今日の作戦の最後、フェーズ4、巣の解体と確保をするか」
「わかったぜジンク。ここからは父ちゃん達に任せていいんだっけ?」
「ああ、ジャイアントハニービーの巣の解体なんて俺もアイアンもしたことないし、いつもの獲物と比べて貴重さは段違いに上だからな。ここは父さんとタングさんにお願いして、完璧な解体をしてもらおう」
「おう!」
すると、タイミングよく父ちゃんとガリウムのおっちゃんが1号君アンドトレーラーと共に現れる。どうやら残党狩りになったあたりで、父ちゃんがガリウムのおっちゃんを呼んでくれていたみたいだな。
「よし、それじゃあタング、やるとするか!」
「おう!」
「ジンクとアイアン君は戦闘の疲れもあるだろうし休んでてくれ」
「「は~い」」
そう言うと父ちゃん達はジャイアントハニービーの巣の解体に取り掛かる。
俺はお言葉に甘えてのんびり休憩だな。3号君の内部にはもちろん冷蔵庫は付いているし、お菓子用の収納だってあるからな。こういう戦闘で疲れた時には、チョコがいい感じだな!
「ふう、それなりに疲れたな。アイアンはどうだ?」
「同感だ。こういう多数の空中の敵を相手にするのは初めてだったし、いろいろと神経使った気がするぜ。ジンクもチョコ食うか?」
「ああ、常に全方位から攻撃を受けることを想定して、武装ゴーレムの全身に金属強化魔法をかけ続けていないといけなかったのには神経使ったな。同じランク4のモンスターでも、普段狩りの対象にしていた単独でランク4認定されるモンスターとは違った強さがあったな。いや、俺は俺で間食を持ってきているから気にしなくていいぞ」
「武装ゴーレムにダメージはありそうか?」
「いや、分厚くした装甲のおかげでダメージは無いな。それに、全身に金属強化魔法を使う必要があったとはいえ、攻撃の一撃そのものは軽かったからな、薄く全身に強化をかける感じでよかったから、魔力消費はそこまででもなかったし」
「それは言えてるな。でも、一箇所を集中して強化することに比べると、魔力消費の割に神経使うよな。おかげで普段より疲れた気がするぜ」
「アイアンこそ魔力は大丈夫か? 火炎放射魔法、だいぶ長時間使ってただろ?」
「魔力は平気だぜ。最初から止めまで欲張らずに、地面に落とせればいいって程度で使ってたし、そもそも3号君の火炎放射は純粋な火炎放射魔法じゃなくて、3号君の火炎放射器の炎の強化って方向で魔力を使っていたからな。そこまで魔力は消費していないぜ。ただ、3号君の燃料消費は激しいな。今の戦闘で7割くらい火炎放射器の燃料を消費しちまったぜ」
「7割か、結構使ったな」
「ああ、もっと火炎放射器の燃料を節約して、魔力で火力を上げるべきだったかな。その辺のバランスは今後の課題かな」
「それも一理あるが、火炎放射器の燃料に関しては予備燃料をトレーラーに積んであるわけだし、そういう意味じゃあ魔力を節約できた方がよかったんじゃないか?」
「ふむ、そういう考え方も出来るな」
俺とジンクがのんびり休憩、じゃなかった、今回の戦いの反省会をしている間にも、父ちゃん達は手早くジャイアントハニービーの巣の解体をすすめる。といっても、解体していると言うよりは巣を木から無理やり剥がして、それをでっかい風呂敷で包んでいるだけみたいだけど。
「なあ父ちゃん、解体って言う割には巣はそのままの形なんだな」
「ああ、金属とかならまだしも、俺はこんなものの解体方法なんて知らないからな。そしてそれはガリウムも同じだ。とりあえず保存用のシートでくるんで終わりだな」
「餅は餅屋というやつだよアイアン君。多少かさばるが、俺達が下手に手を出すのは止めておいた方がいいってな! ただ、ジャイアントハニービーの巣からは蜜の甘い匂いがするから、こうやって包んでおかないと他のモンスターを呼び寄せたりするんだ。女王蜂のいる状態の時は、幼虫達の結界で匂いはそんなに漏れないらしいんだけどな」
なるほど、父ちゃん達でも解体は出来ないのか。でもこれは教訓だな。よくわからないものは不用意にいじらない!
「なるほど、よくわかったぜ。それじゃあこれで、ジャイアントハニービーの巣の確保は完了?」
「ああ、そうだな。ミッションアコンプリッシュドだな!」
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