第113話 ジンクの作戦フェイズ2
「あ~、熱い。暑いというか熱い。おいアイアン、まだジャイアントハニービー達は撃ち落とせていないのか!? さっきからモニターにはお前の炎しか映って無くて周囲の確認が出来ん」
よし、低空にいたジャイアントハニービー達はあらかた焼き落とせたかな? ミツロウのせいで思ったよりも耐久力があったせいで、ちいっと時間かかっちまったぜ。
ジンクの武装ゴーレムもこのまま炙って、こびりついているジャイアントハニービーの死骸を取り除いて奇麗にしたいところだが、流石に直接火炎放射で炙ったらバレるだろうしな。ここは我慢しとくか。
「待たせたなジンク。あらかた焼き落とせたぜ」
「わかったアイアン、落ちた連中は俺が仕留めるぜ。アイアンはまだ上で飛んでる連中に牽制を頼む」
「ああ、わかったぜ」
ジンクは辺り一帯を炎に包まれる中、地面に落ちたジャイアントハニービー達の相手をする。俺は火炎放射器で上空のジャイアントハニービー達を牽制しつつも、ジンクの姿を横目に見る。
ジンクは炎の中でジャイアントハニービー達を相手に剣を振るい、盾を振るい、大立ち回りをしている。
ふ~む。炎の中の武装ゴーレムってのも、なかなかかっこいいじゃねえか。やっぱ武骨な兵器には炎や煙ってのはいい化粧になるな!
あ、そうそう、辺り一帯火の海だけど、森への影響はほとんど無いから大丈夫なんだぜ。生木って意外と燃えにくいし、それにこの土地は自然魔力が普通の森よりは濃いからな。その影響を受けて、この森の木は生命力に溢れてて、燃えにくいんだぜ!
「よし、アイアン、あらかた片付いた。巣まではあと100mくらいだし、ここはフェイズ2に移行して一気に行くぞ!」
「わかったぜジンク!」
ジンクの考えた対ジャイアントハニービーの巣攻略作戦は、フェイズ1が数を減らしつつの巣への接近。そしてフェイズ2が巣への侵入と女王蜂の排除だ。連中の強さの半分くらいは女王蜂の使う強化魔法だからな、女王蜂さえ排除出来れば、戦いはグッと楽になるってな。
女王蜂は巣の上からちらちらと見えているし、巣までの距離はすでに100m足らず。3号君の火炎放射器でなら、十分な射程圏内だ。
俺は上空のジャイアントハニービー達への牽制を止め、火炎放射器の射撃モードを高圧一点集中モードに切り替える。そして、巣めがけて一気に発射する!
「は~っはっはっは! どうだこの射程距離! これが3号の火炎放射器の本来の姿だぜ!」
俺の火炎放射はジンクの武装ゴーレムの頭上を越えて、一気にジャイアントハニービーの巣に襲い掛かる。
だが、ジャイアントハニービーの巣に俺の火炎放射が後少しで当たると思ったその瞬間、見えない壁のような物に阻まれて俺の火炎放射はその場に散った。
「あれがジャイアントハニービーの結界か!」
「情報通りだな!」
「ああ、後は頼むぜジンク!」
「まかせろ!」
この結界、もちろん知らなかったわけじゃない。そもそも女性の美容に良いモンスターなんて、生態系含めて研究されつくしているに決まってるからな! 火炎放射に対するミツロウによる防御だけは想定外だったが、それはしょうがない。なにせ母ちゃんやラピおばちゃんをはじめ、戦闘で炎系の魔法を使うドワーフは少ないからな。父ちゃんなんて鍛冶するときには炎魔法を使うくせに、戦闘では一切使わないんだぜ。
そして問題の結界なんだけど、使っているのは幼虫どもだ。巣から絶対に離れることのない幼虫が結界で巣を守り、兵隊蜂が外で戦う。敵ながら完璧な連携だぜ。
でも、俺の火炎放射の狙いは、火炎放射で直接巣にダメージを与えることじゃない。そもそもそんなことしてハチミツやローヤルゼリーに被害が出たらそれこそ一大事だからな。俺とジンクだけじゃなくて父ちゃんとガリウムのおっちゃんまで大目玉確定だ。だから本命は、俺の火炎放射の下を巣に向かって猛然と走る、ジンクの武装ゴーレムの援護だぜ!
俺の火炎放射の影響で、上空からじゃあ火炎放射の下を走るジンクの姿を見ることは難しいだろ!
そして巣に対して火炎放射を発射すること10数秒、ついにジンクが巣のある木の下にまで到着した。
「アイアン、仕掛けるぜ!」
「おう! 俺はこのまま援護を続行するぜ!」
ジンクはそう言うと、右肩の兵器クローミサイルを、巣の更に上の方の木の幹めがけて発射する。そう、幼虫どもの結界に守られ、更に地上10m以上の場所のあるジャイアントハニービーの巣を攻略するためにジンクの考えた作戦、フェイズ2のキモがこれだ。
クローミサイルはワイヤー付きのクローを飛ばし、遠距離で戦う敵を掴んでからワイヤーを巻き取ることで接近戦を強要するための装備だが、その巻き取りの力とワイヤーの強度はかなり強い。それこそスタックした車を引きずり出すウインチのそれみたいにな!
だからクローミサイルを巣より高い位置にある木の幹に撃ち込んでから巻き取れば、ジンクの武装ゴーレムを持ち上げれるってわけだ! 手が届かない位置にあるから巣を攻撃しにくいのなら、手が届く距離までよじ登ればいいってな!
幼虫どもの結界が多少頑丈でも、4mという圧倒的な大きさを誇るジンクの武装ゴーレムに直に攻撃されちゃあ、ひとたまりもないだろうさ。
ジンクの武装ゴーレムはクローミサイルをウインチ代わりに、さらに両手両足をよちよち使って巣のある高さまで木登りをする。そして、巣に剣が届く距離まで近づくと、滑り止めに付けている両足の突起を木の幹に食い込ませて、剣をぶんぶんと振りはじめる。
がき~ん! ごき~ん!
お~、結構硬質な音が鳴るんだな。そして流石はジンクの武装ゴーレムだぜ、あの体勢からでも十分な威力の攻撃が出来ているようだ。ジャイアントハニービーの結界が、見る見る削れてってるじゃねえか。
ジャイアントハニービー達も慌ててジンクに対処しようとするが、時すでに遅しってやつだな。巣の周辺はさっきからずっと俺が火炎放射を放ち続けている。これじゃあ上空にいた残りの兵隊蜂どもは近づきたくても近づけねえ。いや、中には近づいている連中もいたが、まさに飛んで火にいる夏の虫。突っ込んできた連中からどんどん燃えていっているぜ!
接近戦は俺の火炎放射のせいで無理となれば、ジンクの妨害が出来る本命は魔法タイプの兵隊蜂なんだろうけど、そこは炎が目くらましになっているから大丈夫だ。なにせ一歩間違えれば自分達の巣に攻撃が当たるわけだからな。迂闊に遠距離魔法は使えない。
巣に直接火炎放射による攻撃を始めたあたりから、3号君への攻撃も増しているが、そこは装甲に金属強化魔法を使用して持ちこたえる。火炎放射と金属強化、同時に二つの魔法の使用は消耗が激しいが、致し方ない。
そして火炎放射器をジンクの援護に使っているから、3号君へ攻撃を加えるジャイアントハニービー達の迎撃に使えない。ま、3号君にはSマイン投擲機のような近接防御兵器があるからな、そいつを起動だぜ! 3魔法同時起動は更に辛いが、攻撃を受け続けるよりはましってな!
とはいえ焦っちゃあいない、この分だと俺の魔力が尽きるよりはるかに早くジンクが結界を破るだろうからな。
ぱり~ん!
そして、とうとうジャイアントハニービーの巣にはられた結界を、ジンクが打ち破った。
「っしゃあ! 破ったぞアイアン!」
「よしジンク! よくやったぜ!」
さ~ってと、あとは女王蜂を始末すりゃあ、フェイズ2終了だな!
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