第112話 小細工なんて焼き尽くすぜ!

 俺は炎に包まれながらも飛び続けるジャイアントハニービー達目がけて、さらなる火炎放射を発射しようとする。すると、ほぼ同時に俺の火炎放射を浴びて燃えながら飛んでいる兵隊蜂の背後から、魔法使いタイプの兵隊蜂がそのお尻にある自慢の毒針を飛ばすような遠距離魔法攻撃、ポイズネスニードルを仕掛けてくる。


 むう、前衛を盾にその背後から遠距離攻撃とは、流石は集団で生活するモンスターだな。基本的な連携とはいえ、それ故に崩しにくい連携だ。


 俺のシャワーモードの火炎放射とポイズネスニードルが空中でぶつかり合う。


 だが、俺の火炎放射とポイズネスニードルはお互いにほとんど干渉しなかった。そりゃあそうだよな。俺の火炎放射は範囲重視でシャワーモードだし、向こうのポイズネスニードルは細長い攻撃だ。干渉するわけがねえ!


 俺はすぐさま3号君の装甲に金属強化魔法を流し込んでこれを防ぐ。


 がんごんごん!


 ったく、その程度の魔法3号君の装甲の前にはただのドアノッカーだっての! でも、それは向こうもほぼ同じか・・・・・・。俺の火炎放射も、さっきとは別の前衛の兵隊蜂どもに防がれている。そして、さっきみたいに炎に包まれながらもほとんど撃ち落とせていない。


 一点集中型の高圧モードでなら奴らの防御を破れるだろうが、流石に敵の数が多い。一匹一匹ちまちまやってたら俺の魔力も火炎放射器の燃料も持たないかもしれないな。ここは悔しいが、俺の火炎放射を防いでいる奴らの小細工を暴く方が先かな?


 俺は再度火炎放射をシャワーモードにして広域攻撃を仕掛ける。すると、さらに新たな前衛が魔法使いタイプのジャイアントハニービーの前に現れて俺の火炎放射を防いだ。ちい、同一個体が何度も防げるわけじゃないようだが、奴ら数が多いからな。こういう形でも防がれるのは厄介すぎるな。


 あれ? でも俺の火炎放射を防いだ連中、気のせいじゃなかったら一番最初に簡単に焼き落とせたジャイアントハニービーよりも白っぽくね? 魔法使いタイプの兵隊蜂と比べてもなんか白いし、もしかしてこの白さが、火炎放射を防いでいる原因か?


 一体どういうカラクリなんだ? 相変わらず燃えているところをみると、耐火性があるってわけじゃなさそうだ。いや待て、そもそも火炎放射の怖いところは炎そのものよりも、燃料が付着した場所が高温で燃え続けることだ。だから、本来ならちょっとでも燃料が付着すれば、有無を言わさず大ダメージを与え続けるはずなんだよな。にもかかわらず奴らは燃えながらも飛んでいる。


 燃えているって言う事は俺の火炎放射は確実にあたっている。でも、俺の火炎放射がその本来の凶悪性を発揮できていない。つまり、何らかの方法によって俺の火炎放射の燃料が直接連中に触れていないってことだな。その何らかが何かってのが問題なんだが、当然奴らの体の白っぽさが原因だろうな。蜂の使うもので白っぽいもの、ここから予想できる答えは・・・・・・、ミツロウか!?


 ミツロウを体に塗りたくって俺の火炎放射から体を守る。考えられないことじゃないな。ミツロウはロウの中だと燃えにくかったはずだし、モンスターであるジャイアントハニービーのミツロウならなおのこと燃えにくいのかもしれねえ。それに、なにも完全な耐火性が必要ってわけでもないしな。ロウを体に塗ることによって、俺の火炎放射の燃料の体への直接の付着を防げればいいんだし。なんなら火炎放射の燃料が付いた部分のミツロウが火炎放射の熱でとけて、ミツロウごと付着した燃料が落ちればいいわけだし。


 そう考えるとあれはミツロウで間違いなさそうだな。


 しっかしまさか俺の火炎放射の熱量にすら対抗できるミツロウとはな。流石はモンスター、ジャイアントハニービーのミツロウってか? だが、種がわかりゃあどうということはないな。


 さっきから燃えている蜂達はすぐに後ろに引っ込んでいって、次の攻撃は別の白い蜂が出てきて防ぐっていう行為をしている。つまりそれは、ミツロウを体に塗りたくっても、俺の火炎放射を一回防ぐのが限界ってことだ。ちょくちょく落ちてる奴もいるから、一回すら防げない奴もいると見た。


 ってことはだ、何も最大出力の一点集中高圧モードでいかなくても、もう少し魔力を増やして温度を上げて、その上でさっきよりも長く炙る。これだけで行けそうだな。


「くそ、アイアンどうした? 手が無いのか?」


 おっと、ちょっと考え過ぎたか。ジンクから苦情がきちゃったぜ。ジンクの武装ゴーレムも、俺の3号君同様ジャイアントハニービー達の攻撃はそう簡単に効かねえとはいえ、それはあくまでも装甲に金属強化魔法をかけているからだしな。ジャイアントハニービー達への対処方法なく攻撃を受け続ければ、確実に俺達の方が先に魔力が尽きる。


 ジンクも機関銃を空に向けて攻撃しているが、いくらデカいとはいえ空を飛ぶ蜂だ。機関銃のような点の攻撃はそう簡単に当たるもんじゃねえ。つまり、まともな対空攻撃はほぼ俺の火炎放射だけってわけだ。ジンクがヤキモキするのも無理ねえか。


「大丈夫だジンク。ネタは分かった。すぐさまこいつら一掃してやるぜ!」

「頼むぜアイアン!」


 んじゃ、いっちょやってやりますか!


 俺は3号君の火炎放射器の設定を広域のシャワーモードから、もうちょっと密度の高いシャワーモードに変更する。これでより多くの燃料が一匹一匹にかかる。そして俺の魔力もさっきよりもちょい強めにかけて、一気に攻撃だ!


「は~っはっはっは! 今度こそどうよ!? 対生もの用に火力を上げてやったぜ!」


 3号君の火炎放射器から発射された高温の炎は、瞬く間にジャイアントハニービー達を包み込む。シャワーの密度、火力共に増した3号君の火炎放射は、今度こそ一番最初の時同様ジャイアントハニービー達を次々に焼き落とす! よし、想定通り!


「おお、やるじゃねえかアイアン。俺の周りの連中も頼むぜ」

「あいよ!」


 俺はジンクの武装ゴーレムの周辺を飛び回っているジャイアントハニービー達にも火炎放射をプレゼントする。ジンクの武装ゴーレを巻き込んじゃうって? 大丈夫大丈夫、俺が3号君の主砲を火炎放射器にした段階で、こういう状況はシミュレーション済みだからな。このくらいの炎ならジンクの武装ゴーレムには何の悪影響もない。


「くう、流石はアイアンの火炎放射だ、なかなかの熱量じゃねえか! コックピットの温度が急上昇してやがる!」

「そのくらい我慢だ我慢! すぐに蜂どもを焼き落としてやるからよ!」

「わかったぜ!」


 これでジンクの武装ゴーレムにべたべた付着してたジャイアントハニービーの体液とかも燃え尽きるだろうし、まさに一石二鳥! 汚物は消毒だってやつだな!



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