第110話 ジャイアントハニービーの巣

 作戦会議を終えた俺とジンクは、ジャイアントハニービーの巣が見える位置にまで移動していた。3号君とジンクの武装ゴーレムじゃあ目立ちすぎるって思ったんだけど、ジャイアントハニービーの巣はそれ以上に目立つ存在だったため、森の中だっていうのに、結構距離を置いてその様子を観察できた。


「あれがジャイアントハニービーの巣か、実際に見るとやっぱデカいな」

「ああ。凄まじいデカさだな」


 ジャイアントハニービーの巣は、ハニービーの巣っていうだけのことはあって、いわゆるハニカム構造の板状のものが、デカい木に張り付くように出来ていた。地面から巣までの高さはおよそ10メートル、巣の大きさはだいたい2階建ての建物くらいかな? 


 ちなみになんだけど、蜂ってのは種類によってぱっと見の巣の見た目が違うんだぜ。んで、代表的な巣の形は3つあるんだ。


 一つ目はハニカム構造の板状のやつだな。この板状の巣を作るのはミツバチの特徴なんだ。野生のミツバチの巣ってあんまり見かけない気もするけど、養蜂の映像なんかでよく見るやつだと思ってくれ。あれ、あの箱の中に巣を作るから板状になるってわけじゃないみたいで、野生のミツバチの巣であっても、板状なのは変わらないらしいんだ。ミツバチの習性として、木のうろとか、そういうのの中に巣を作ることが多いらしいんだけど、木の高い位置に板状のものがむき出しで何個も並んでたりすることもあるんだって。んで、今回はそういうタイプだな。まあ、体長1メートルのジャイアントハニービーの巣が入るような木のうろなんて、そうそうないだろうしな。


 二つ目は傘みたいなのの下の部分がハニカム構造になっている巣だな。こいつはアシナガバチの巣なんだぜ。ちなみにアシナガバチそのものは大人しいみたいで、蛾や蝶の幼虫を駆除してくれるから益虫って呼ばれているらしいんだけど、そもそも蛾や蝶の幼虫って、農家や家庭菜園をやってる人、あるいは庭を持ってる人でもなきゃ、そんなに困んないんだよな。だから、益虫って言われてもあんまりピンとこないんだぜ。あと、アシナガバチは肉食だから、巣を壊してもハチミツは取れないぜ!


 三つ目はマーブル模様の丸い巣だな。こいつはスズメバチの巣だぜ。見つけ次第即撃破したいハチの巣だな。ただ、スズメバチの巣の破壊は何かとリスキーだからな、自信が無いようなら業者に頼んだ方が無難だぜ! それから、スズメバチも肉食だから、巣を壊してもハチミツは取れないからな!


 まあ、蜂に関する豆知識はここまでにして、改めてジャイアントハニービーの巣を見る。うむ、立派なミツバチタイプの巣だな。こいつはハチミツが期待できるし、ロイヤルゼリーも取れるかもしれねえな!


「アイアン、準備はいいか?」

「ああ、いつでも行けるぜ!」

「よし、それじゃあフェーズ1開始だ!」

「わかったぜ!」


 俺達の考えた作戦はそんなに難しいものじゃ無い。基本的には突っ込んでからの敵の殲滅だ。それが作戦なの? って思うかもしれないが、これはしょうがないんだ。だって、3号君もジンクの武装ゴーレムも、ともにサイズがデカすぎて、隠れて何かをするのは難しいんだよ。それに、連中は飛んでいるし、巣も高い位置にあるからな、巣を奇襲しようにも方法がないってな。


 そんなわけでフェーズ1は、全力での接近だ。俺の3号君の射程距離は最大で300mくらい。ジンクの武装ゴーレムは左肩の機関銃と右肩のクローミサイルの射程はそこそこあるが、基本は3号君以上に接近戦よりの性能だからな。接近しなきゃあその性能を生かしきれない。


 俺とジンクが全力で接近を開始すると、すぐさまジャイアントハニービー達もその接近に気付いたようだ。あからさまにこちらを警戒するようなフォーメーションになる。とはいえ、すぐには襲ってこない。こいつは様子見とかそういうのじゃなくって、巣にいる女王蜂の支援魔法の範囲内で戦おうとしているんだと思う。


「ち、予想通りといえば予想通りなんだが、迂闊に巣から離れんか」


 ジンクが厄介だなって感じでつぶやく。まあ、気持ちは分かる。巣から離れれば離れるほど、女王蜂からの支援魔法の効果は弱まるからな。出来れば慌てて巣から遠い場所で仕掛けてきてほしかったぜ。だが、蜂とかそういう集団で生きることが普通のモンスターは、統率力という意味じゃあ人間以上だったりするからな、流石にそんな短慮な行動は取ってくれないらしい。


「こっちは予定通りやるだけだぜ、ジンク!」

「ああ!」


 ジャイアントハニービー達は巣から200メートルくらいかな? そのくらいの距離でフォーメーションを取って待ち構えている。恐らくそこが女王蜂の支援魔法の効果を十分に受けられる範囲ってことだな。200メートルも離れたところに十分な支援魔法を届かせられるとか、流石は補助魔法特化型のランク4のモンスターだぜ。羨ましい遠距離魔法制御能力だ。


 そして、そんな敵の警戒範囲へと近づいて行くと、上空から魔法が降ってくる。話にあった魔法を使うタイプの兵隊蜂か!


「アイアン!」

「わかってらあ!」


 魔法使いタイプの兵隊蜂達は、上空20メートル、距離50メートル付近から俺とジンクに魔法を放ってくる。使っている魔法はポイズネスニードルとかっていう、自身のお尻の毒針に似たものを魔法で作り出し、それを発射する魔法か。毒は3号君や武装ゴーレムには通用しないが、毒を抜きにしてもそこそこ攻撃力が高いのが特徴の攻撃だな。ま、俺の3号君とジンクの武装ゴーレムのミスリル合金製の装甲には通用しないがな!


 俺とジンクは3号君と武装ゴーレムの装甲に魔力を流して、ミスリル合金装甲の防御力を最大限に高める。


 がんごんぎんごん!


 はっはっは! 3号君の重装甲の前には、ジャイアントハニービーの魔法なんて、ただのドアノッカーだな! ジンクの方も、当然のように無傷だな!


 さ~て、それじゃあフェーズ1の見せ場、3号君の主砲である火炎放射器を食らうがいい!


「は~っはっはっは! 燃えろ燃えろ~! 燃え尽きろ~!」


 俺は3号君の主砲を空に向ける。そして、上空にいるジャイアントハニービー達目がけて、一気に火炎放射を発射した!

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