第109話 ジャイアントハニービー

 俺達は父ちゃんの後を追う。といっても大急ぎで後ろをついて行っているわけじゃないぜ。俺達は全員発信機付きの無線機を持っているから、ちょっとやそっと離れたくらいじゃ見失うことはないからな。今も父ちゃんの居場所は、3号君のレーダーにバッチリ映ってるんだぜ!


 だから俺達は父ちゃんの追跡の邪魔にならないように、ある程度の距離を取って追跡している。3号君やジンクの武装ゴーレムは、こっそり後をつけるのには向かないレベルでデカいからな。万に一つも父ちゃんの追跡の邪魔は出来ない。


 ちなみにこの森なんだけど、一本一本の木がでっかいせいなのか、木の密度はそんなに高く無い。だから、道路になっている部分を外れても、3号君やジンクの武装ゴーレムが動くのにそこまで不便じゃないんだよな。もちろん倒木とかもあるけど、3号君もジンクの武装ゴーレムもジャンプできるから、その点も問題ない。


 ただ、ジンクの乗っている1号君と、1号君の引っ張るトレーラーはそうはいかないから、1号君はガリウムのおっちゃんの運転で、より走りやすい道路になっている場所を走っている。


 そして父ちゃんの後を追いかけ続けること数十分、ついに父ちゃんの動きが止まった。そして、父ちゃんからこっちに連絡が入ってくる。


「3人とも聞こえるか?」

「ああ、聞こえるぞタング」

「巣を発見した。兵隊蜂共がうようよいるから、間違いないだろう」

「そっちに行ったほうがいいか?」

「いや、俺のいる位置は巣に近すぎる。アイアンの3号君やジンク君の武装ゴーレムに来られると蜂に簡単に見つかる。俺が戻る」

「わかった。それじゃあ待ってるぜ」

「ああ」


 そして程なくして父ちゃんが戻ってくる。


「ん? ガリウムは別行動か?」

「ガリウムのおっちゃんは1号君を運転しながら道沿いに来ているから遅れてる」

「なるほど。さて、それじゃあ作戦会議と行くか。この蜂の件はイレギュラーだからな、俺とガリウムでやってもいいが、二人はどうする?」

「もちろんやるに決まってる。なあ、ジンク!」

「ああ。新しくなった武装ゴーレムの試運転に、丁度良さそうだしな」

「だな! 俺の3号君も今宵は獲物に飢えてるんだぜ!」

「そうか、なら二人でやってみろ。ピンチになるまで俺は見学させてもらうとするぞ。ガリウムもそれでいいな?」

「もちろんだ。トレーラーがデカいせいでそっちに行くのに少しかかりそうだから、そっちはそっちで始めててくれ」

「わかった」

「よし、それじゃあアイアン、作戦会議をするか」

「おうよジンク!」

「それじゃあ、まずは敵の情報の確認だな」

「だな!」


 俺達はこの森に来るのにあたって、この地域に生息するモンスターの情報は仕入れていた。そして、その情報は3号君や武装ゴーレムの中にインストール済みだ。


 え~っとなになに。


 種族名、ジャイアントハニービー。モンスターランクは役割によって異なり、働き蜂はランク3、兵隊蜂及び女王蜂はランク4となる。


 働き蜂は巣に最も多くいる蜂で、その役割は花の花粉や木の樹液などを集めることである。攻撃方法はお尻の毒針による攻撃のみ。ただし、その攻撃力はランク3のモンスターとしては高く、素材にもよるが皮鎧では貫通されることも多い。金属の鎧であっても、チェーンメイルはチェーンの隙間から針が通るため、万全を期すならフルプレートアーマーが望ましい。また、毒は激痛を発するタイプであり、毒によって死ぬことは多くない。防御力はランク3のモンスターとしては最低クラスで、武器を当てることさえできれば、討伐は簡単に行えることだろう。


 兵隊蜂は能力によってクラスのような物が存在しており、毒針を直接刺しに来る兵隊蜂の強化系ともいえる物理攻撃タイプのほか、毒や風といった魔法を得意とする魔法使いタイプも存在する。巣に近づかない限り襲われる心配はないため、モンスターとしての脅威度は低いが、ジャイアントハニービーのハチミツを獲得するためには避けては通れない敵となる。


 物理攻撃タイプの個体の強さは、働き蜂を全体に強化したような強さであり、その攻撃力は非常に高く、素材によっては金属のフルプレートアーマーすら貫通してくる。万全を期すならミスリル以上の素材の鎧が望ましい。また、魔法使いタイプの蜂は、上空からの魔法攻撃を得意としており、対空攻撃手段が無いとかなり厳しい戦いとなる。ただ、ジャイアントハニービーそのものが物理攻撃よりの種族なのか、魔法のレベルは決して高くはない。


 女王蜂は直接的な戦闘力は皆無に近いが、働き蜂や兵隊蜂を強化したり回復したりといったことをする。出来れば早期に退治したい敵だが、基本的に巣の奥にいるため、兵隊蜂を倒す前に倒すことは不可能に近い。


 最後に、ジャイアントハニービーのランクは、ジャイアントハニービーが空を飛ぶことを考慮したものであり、空を飛ばせない工夫が出来るハンターや、飛行能力を持つ相手との戦闘が得意なハンターにとっては、そこまでの脅威ではない。




 ふ~む、なるほどな。魔法タイプの兵隊蜂の火力はわからないが、それ以外の蜂には、ミスリル合金の装甲を持つ3号君やジンクの武装ゴーレムなら負けはしないか。それに、空を飛べるってのは確かにそれだけでとてつもない脅威だけど、3号君の火炎放射器なら上方向でも100mくらいは軽く届くしな。ジャイアントハニービーがどの程度の高さまで飛べるかわからんが、100mあれば足りるよな?


「どうだアイアン、敵の情報は見たか?」

「ああ、バッチリだぜジンク」

「それじゃ、次はどう仕掛けるかだな」

「おう!」



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