第106話 森へ行こう

 3号君の試運転をした日、というか、母ちゃん達に出来立てほやほやの3号君達を破壊されてから数日、ようやく俺の3号君とジンクの武装ゴーレムの修理が完了した。


「や〜っと直ったな」

「だな。これでようやく森に行ける。今日はもうやる事ないし、森に行く予定の確認でもするか?」

「ああ、ジンクがバッチリ調べてくれたんだろ?」


 今回の作戦立案はジンクが担当だ。というか、壊れた3号君とジンクの武装ゴーレムを、俺と父ちゃんが直している間に、ジンクが調べててくれたってだけだがな。


「うむ、情報収集は完璧だ。まずはこいつを見てくれ」


 ジンクは持っていた地図を広げる。どうやらこの街の周辺の地図のようだな。


 この街は南を大河、北をダンジョンのある山に囲まれた、東西に長い形の街だ。西には牛モンスターなんかのいる西の草原が広がり、北西にはゴールドタウンへと伸びる街道がある。そしてこの地図には、街の西南西、大河の向こう岸にある森林地帯の一箇所に、赤いペンで丸が書かれている。


「さて、アイアン。今回俺たちが向かう場所は、大河を西に少し下った対岸にある森林地帯だ」


 そう言ってジンクは、街の西南西にある森林地帯の赤丸を指さす。


「大河の向こう側か〜、俺、大河の向こう側には行ったことないんだよな」

「それは俺も同じだ。だが、母さんが言うには、大河の向こう側にはいい木材が多いらしいんだ。俺もギルドで調べてきたが、結構いい木材が取れそうだったぜ」

「ほう、そいつは期待できるな。でもよ、どうやって河を渡るんだ? 俺の3号君もジンクの武装ゴーレムも、ちょっとした川なら渡れるが、流石にあの大河は渡れねえぞ? まさか今から船造るって言わないよな?」

「そんなこと言わねえよ。俺の家の船で行く」


 は? 俺の家の船だと!? ジンクの家、船持ってるのかよ!?


「なに!? ジンクの家って、船持ってるのか!?」

「ああ、父さん達が昔作った船があるんだってよ。ちなみに内装以外はほとんどタングさん製だぞ」


 マジか? 知らなかったぜ。


「何でも、昔はよく王都で開かれる馬車の見本市なんかに行ってたみたいでな。そのために作ったんだってさ。まあ、最近は忙しくて動かしてなかったみたいで、港にある倉庫の中で埃被ってたみたいだけどな」


 なるほど、行ったことはないが、地図だと王都は大河を下った先にあるからな。王都に行くなら水路の方が便利だろうな。でも、埃被ってたのか。


「それ、動くのか?」

「大丈夫大丈夫。父さんに確認してもらったら、問題なく動くって話だから」

「そうか、それならよかったぜ。でも、木材を運ぶ以上、積載量は必須だぞ?」

「その心配は不要だ。なにせ馬車の見本市に、自分の馬車を出したり、あるいは見本市で気に入った馬車を買ってくるために作った船らしいからな、積載量は抜群だ」

「それならバッチリだな。じゃあ、移動の足は問題ないとして、ちょっと気になったんだが、なんで真っ直ぐに大河を越えずに、少し下るんだ?」

「この街の対岸地域は、モンスターのレベルが高いらしいんだよ。母さん達なら問題ないらしいんだけど、俺やアイアンには少し荷が重いって話だ」

「そっか、それじゃあ仕方ないな」

「ああ。それで、現地の情報なんだが。完全な未開の地ってわけじゃなさそうだ」

「そうなのか?」

「どうも俺達みたいな木材狙いのハンターや、木工店の連中が頻繁に出入りしているほどの人気の場所らしくてな、いろいろといじってあるらしい。例えば向こうの川辺はちょっとした船着場みたいになってるらしいし、その周辺は野営しやすいように開けてるって話だ」


 ほ~、それは便利でいいな。


「ただ、人気の場所っていうだけのことはあって、森の手前側にはあんまりいい木材はなさそうなんだよな」


 ま、当然っちゃ当然か。


「だから、ある程度奥に行くつもりだ。とはいえ、奥へ行くにしても、これまで木を運び出すのに作られた道が一応あるらしいから、ある程度は移動しやすいんだとよ。てなわけで、野営せずに行けるほど近くもなさそうだけど、何泊もしなきゃいけない程遠いってわけでもなさそうだから、まずは1~2泊の予定で行くつもりだ」

「ああ、問題ないぜ」

「それじゃ、野営道具は以前買ったからいいとして、食料の買い出しにはいかないとだな」

「そうだな。今行っちまうか?」

「おう、そうするか」


 その後、俺とジンクは万が一を考えて、4泊分くらいの食糧の買い出しに行った。ま、初回ということで母ちゃん達が付いて来てくれるみたいだから、万が一なんてぜってえ起こんないとは思うけどな!




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る