第105話 3号君の試運転

「あ~、あ~、本日は晴天なり、本日は晴天なり。ジンク~、聞こえてるか~?」

『前も思ったが、なんだよその掛け声、なんか意味あんのか? 通信機に関しちゃ問題ねえよ』

「いや、意味はねえんだけど、ちゃんと聞こえてるんならいいぜ」


 俺が2号君と3号君を作っている間に、ジンクの武装ゴーレムの修理も無事に終わっていた。ジンクもパパラチアさんとの試合では思うところがあったみたいで、武装ゴーレムの強化をいろいろとしたみたいだぜ。


「ん~、たった1mなのに、だいぶ印象が変わるな」

『たったってアイアン、3mが4mだから、結構違うぜ?』

「そうかもしれないけどよ。まあいいや、乗り心地はどうなんだよ?」

『流石にまだ慣れないな。だが、パワーの凄さは感じるぜ』


 ジンクはパパラチアさんとの戦いで、何よりも防御力やパワーの不足を感じたらしいんだ。まあ、しょうがねえよな。ジンクの戦い方は、盾でしっかりと敵の攻撃を受け止めることから始まる、堅実な戦い方だけど、パパラチアさんとの戦いでは、肝心の盾ごと武装ゴーレムの腕をあっさり切られたからな。


 だから、ジンクとしては今回の改修で、パパラチアさんの剣にも負けない、より強力な盾を求めたんだってさ。ただ、より頑丈な盾を装備するには、今までの3mの武装ゴーレムだとパワー不足だってことで、今回武装ゴーレムのサイズをデカくしたみたいだ。


 そのサイズ1m! たったの1mの気もするが、3mが4mだからな、結構でっかく感じるぜ。


「そういやジンク。武装ゴーレムがデカくなったのは良いんだけどよ。そのサイズだと重量も当然増えてるよな? 1号君は大丈夫なのか?」


 1号君は現在ジンクの武装ゴーレムの移動時の足になってる。ジンクの武装ゴーレムがデカくなるんなら、その分1号君をデカくしないと、その重量でつぶされちゃいそうなんだぜ。


『ああ、大丈夫だぜ。武装ゴーレムのサイズアップに合わせて、1号君もデカくしたからな』

「そっか、それなら安心だな」

『荷台になるトレーラーもサイズアップしたからな、大量の木材を伐採しても、問題なく積み込めるぜ』

「そうか、そりゃあ良かったぜ」

「はいはい二人とも、おしゃべりはその辺にして。エメラのゴーレムの準備が出来たから、今から動作確認の開始よ。まずは庭を一周回りながら、エメラのゴーレムの元に向かいなさい」

「おうよ!」

『ああ!』


 俺とジンクはそれぞれ庭を一周回りながら母ちゃんのゴーレムに向かって動き出す。ゴーレムは2体いるから、俺とジンクで1体づつってことだな。


 3号君の機動力に関して言えば、流石に2号君ほど機敏じゃないが、動き出しはまあ、悪くねえな。


「じゃあまずは、攻撃力のテストから始めるの。二人の目の前にいるゴーレムは、ランク4のモンスターの中でも頑丈なモンスターくらい頑丈なの。傷をつけることが出来たら、合格なの!」

「うおっしゃあ! それじゃあ早速やってやんぜ! 火炎放射器起動!」


 俺は早速火炎放射器を起動させる。砲塔内に設置された火炎放射器用のポンプが、静かに稼働を始める。このポンプのおかげで火炎放射器の射程は200mに達する予定だ。もっと射程が欲しい時は、風魔法でポンプ内の圧力を無理やり上げれば、300mくらいまでは飛ばせるんだぜ! まあ、射程は200mもあれば十分だろうけどな!


 今は母ちゃんのゴーレムとの距離が100mもないから、ポンプのパワーも70%くらいでいいかな。


「んじゃ、いくぜ母ちゃん! ファイヤー!」


 俺は火炎放射器の炎に、さらに俺自身の火魔法を混ぜて一気に母ちゃんのゴーレムへと攻撃する。増粘剤が入っていい感じの粘度になった燃料は、周囲に飛び散ることなく母ちゃんのゴーレムに襲い掛かる。


 流石父ちゃん特製の火炎放射器だぜ。火炎放射魔法と比べると、威力も射程も圧倒的に上なのに、魔力の消費がすくねえ!


 俺の火炎放射によって、母ちゃんのゴーレムは炎で包まれる。もちろん母ちゃんのゴーレムは畑の土を使ったクレイゴーレムだから、ゴーレムに引火したわけじゃないぜ。燃えているのは火炎放射器から発射されている。増粘剤入りの燃料だ! 母ちゃんのゴーレムはそれでもお構いなしに動き続けたが、次第に動きが鈍くなり。最後にはぼろぼろと崩れ去って土の塊に戻る。


「ん~、純粋な攻撃力は大砲の方が上かな? やっぱ1点突破の砲弾と、範囲攻撃みたいな火炎放射器じゃ、火炎放射器の方が多少弱くても仕方ないか」

「それはある程度仕方がないの。でも、アイアンちゃんはこの火炎放射器の扱いにまだ慣れていないから、もっといっぱい使って、魔法を効率よく使えるようになれば、今よりもっともっと強くなるの」

「そっか、そうだよな!」

「それに、私のゴーレムは炎に焼かれても火傷をしたりしないけど、多くのモンスターは炎に包まれると全身大火傷になっちゃうから、その時点で勝負ありなの。だから実際のモンスターに撃つときは、今より効果的なの!」

「わかったぜ母ちゃん! 取り合えず火炎放射器を使っての火魔法に慣れるように、特訓するぜ!」

「ファイトなの!」


 さ~て、んじゃあ練習するかな。おっと、そういえばジンクの方はどうなってんだろ? 俺がジンクの方を向くと、ジンクは母ちゃんのゴーレム相手に剣を振っていた。以前はランク4のモンスター相手だと、ジンクは傷をつけるのにそこそこ苦戦していたと思ったが、セントラルシティーで覚えた瞬間的に強力な強化をする魔法を剣にかけて、今では割とあっさりダメージを通してるみたいだ。うんうん、成長しているようで何よりだぜ!


「よし、二人とも攻撃力は十分なようだね。それじゃあ、次は防御力のテストをするよ。ジンクにはあたしが、アイアン君にはエメラがそれぞれ攻撃するから、ちゃんと防ぎな」


 次は母ちゃんが攻撃してくるのか、こいつは気合入れねえとな!


「それじゃあアイアンちゃん。いくのよ!」

「うおっしゃあ、こいや母ちゃん!」


 俺は全力で装甲に金属強化魔法をほどこす。すると、それを確認した母ちゃんは、土魔法で母ちゃんの上半身がすっぽり隠れるくらいのサイズの土の玉を作り出し、投げてきた!


 がごん!


 くう、何てえ威力だ。20トン以上ある3号君が結構盛大に揺れたぞ。だが、俺の3号君の装甲は、母ちゃんの剛速球を食らってもびくともしない。


「流石アイアンちゃんなの。じゃあ、次はもっと大きのをもっと速く投げるの!」

「へへへ、かかってこいや母ちゃん!」


 すると母ちゃんは、倉庫からでっかい岩の塊を取り出した。あれって、母ちゃんの10mのロックゴーレムの材料の岩だよな? な、なんか嫌な予感がするんだけど・・・・・・。俺はさっきとは比べ物にならない程の魔力を使って3号君を強化する。さあ来い母ちゃん、受け止めてやるぜ!


「いくのよ!」


 母ちゃんはそう言うと大岩を振りかぶって投げる! 速い!


 がっごお~ん!


 ぐおお! なんて威力だ。3号君が衝撃に耐えきれずに後ろに吹っ飛ぶだと!?


 がん! ごん! ごろろろろろ!


「いっつ~! まさか戦車に乗ってて吹き飛ばされることがあるなんて思わなかったぜ。つかこれ、完全に横向いてこけてるよな。あれ? 俺のいるスペースって、こんなに狭いっけ? っていうか、ドライバーゴーレムの反応がない?」


 俺は急いで外に出て3号君の状態を確認する。すると、3号君の前方半分が無残にも潰れており、ドライバーゴーレムがいるはずの運転席は、完全にぺしゃんこになっていた。


「う、嘘だろ。出来たばっかりの3号君が、ドライバーゴーレムが・・・・・・」

「ご、ごめんなさいなの。ちょっと力が入り過ぎちゃったの」


 嘘だろ? 嘘だろ? だれか、嘘だと言ってくれよ・・・・・・。


「エメラ、あなたは昔からなにかとやり過ぎなのよ。少しは反省しな、さいっ!」

『おい、母さん。俺の盾と武装ゴーレムの左腕、完全に切れちゃってるじゃん!』


 どうやらラピおばちゃんがしゃべりながら振るった一撃で、ジンクも盾ごと武装ゴーレムを切られたみたいだ。


「あ、あれ?」

「ラピちゃんだって一緒じゃない」

「ち、違うわよ。あたしのはエメラのせいで集中が切れたからよ!」

「違わないのよ!」


 あ~あ、ま~た母ちゃんとラピおばちゃんのケンカが始まっちゃった。


「なあ、ジンク。後で父ちゃんに直すの手伝ってってお願いしに行こうぜ」

『いや、母さん達は放っておいて、今すぐ行こう』

「ああ、そだな」



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