第102話 2号君改造計画

 パラージライトの我が家に帰ってきて数日が経過した。


 俺は今、2号君を頑張って修復中だ。といっても、2号君は結構盛大に壊れていたし、主砲やターレットリング以外は鉄製だったから、総ミスリル製に変更する今回の改造は、改造というよりほとんど新造みたいな感じになっちまったけどな。


 まあ、逆に言えば改造の自由度が高かったってことでもあるから、丁度いいって言えば丁度良かったのかもしれないな。


 そんな2号君なんだけど、俺の改造プランはもうバッチリ決まったぜ。まず、砲塔に関してなんだけど、2号君のオープントップの砲塔に、無難に蓋をすることにした。通常の戦車の砲塔の屋根には、コマンダーキューポラなんかが付いているんだけど、視界の確保はセンサーを付けることと魔法で補うことにしたんだぜ。だから、キューポラなんかは付けてないぜ! パパラチアさんとの戦いで思ったんだけど、戦闘中は戦車の中で魔法を使うのでいっぱいいっぱいで、砲塔の上から外を確認する暇がなかったんだよな。


 普通の戦車なら戦闘中でもコマンダーが周辺確認、ドライバーとガンナーが戦車の操作って分担できるから、キューポラとか便利なのかもしれないけど、2号君って一人乗りなんだしな。


 ただ、それだと乗り降りする場所が無くなっちゃうから、そこは砲塔後部に乗り入れようのハッチを追加したぜ。砲塔後部のハッチって、最近の戦車には無いんだけど、1号君のモデルになったFT17なんかにはついてたんだぜ。だから、ちょっと古臭い機能なんだけど、そこはしょうがないよな。


 砲塔に関しては屋根と後部ハッチ以外は、基本的には2号君と一緒なんだけど、総ミスリル製にしたことと、装甲厚を上げたおかげで防御力は段違いに上がっているぜ! これでパパラチアさんの投げナイフにスパスパ切られる心配はなくなったかな? あと、大砲も見た目は同じだけど、G弾を無理なく発射することが出来るように父ちゃんが改造してくれたんだぜ。最も、その防御力やG弾の火力を発揮するためには、俺の魔力をもりもり消費することになるんだけどさ。


 砲塔周りの武装に関しても、ちょっとだけ改造したぜ。まず、砲塔上部に乗っかっていた30mm機関銃、MG30なんだけど、砲塔上部から俺が出られなくなっちゃったからな。今まで俺が直接動かして撃っていたのを、車内から撃てるリモート式にしたんだぜ。


 次に、砲塔左に搭載されていたミサイルランチャーなんだけど、やっぱランチャーむき出しってのは、防御力に問題があるから、砲塔左側のランチャーの前に、ランチャー用の装甲を取り付けたぜ。これで少なくとも正面からは被弾しないようになったんだぜ。本来なら、ミサイルを主砲から発射できるように改造したかったんだけど、主砲からの発射だと、ミサイルの長さ的に砲塔のスペースが足りないし、何より対空兵器だから仰角の確保が辛くってな。戦車の主砲って、上向きに20度くらいまでしか動かないんだよな。


 あと、パパラチアさんとの戦いで大活躍だった、砲塔右のスモークディスチャージャーはそのまんまだぜ! もはやスモークはいざって時に欠かせない装備になっちまったぜ。




 車体に関してはそこまで特徴的な変化は無いかな? 基本的には砲塔と同じく、ミスリル製に作り替えただけだしな。まあ、ちょっとは装甲を厚くしてるけど。ただ、父ちゃんが、俺が戦車だモード時に、サイドステップとかやりやすいように、サスペンションまわりをいじってくれんだぜ。


 それと、俺の魔力も2号君製造時よりかなり増えたし、正面を中心に装甲厚を増した関係で重くなったから、エンジンなんかはより強力な物にしたぜ!


 そして、ここまでは既存の装備をパワーアップさせたくらいなんだけど、新装備も二つほど追加したんだぜ! まず一つ目は、砲塔後部に搭載した、近接防御兵器だ。こいつは戦中のドイツ戦車なんかが装備してたのと一緒だぜ。いわゆる空中炸裂型地雷をばら撒く装備だな。まあ、ぶっちゃけた話威力はそんなに強くないんだけど、ベルちゃん達と戦ってる時に思ったんだよ。動きの速い歩兵に接近されると、30m機関銃だけじゃ迎撃しきれないんじゃないかってことに!


 この世界、身体強化魔法とかのせいで、歩兵でも移動速度や防御力が桁違いに高いからな。まあ、ベルちゃんクラスの相手だと、劇的な効果のある装備とはおもわないけど、対ゴブリン戦みたいな、雑魚多めの敵との戦いではいいんじゃないかなって思ったんだ。主砲が76mmしかないから、主砲から榴弾やキャニスター弾を撃つのは、威力の関係で向かないしな。


 そして、もう一つの追加装備は、遠隔操作式軽爆薬運搬車輌だ。そう、戦中のドイツでゴリアテって呼ばれてたあれだぜ! 小さな戦車の車体部分に、爆弾をたくさん積んで、敵に向かって突撃、自爆攻撃をするっていうなかなかやばいやつだ。


 パパラチアさんとの戦いで思ったんだけど、ただ煙幕を撒くだけじゃあ、速度と防御のある相手には、煙幕を強引に突破されるリスクがあるってわかったからな。こないだの戦いではジンクが囮になってくれたから良かったんだけど、ジンクに頼りっぱなしってのもいかがなものかと思って、ゴリアテを使うことにしたってわけだ。


 煙幕を使って距離を取ろうとする2号君、敵は煙幕に惑わされずに真っ直ぐ距離を詰めようとするも、そこにはゴリアテ君がいて自爆で攻撃してくるとか、うん、中々良いな作戦な気がしてきたぜ!


 しかもこのゴリアテ君は、有線式だ。ドイツの作りだした有線式のゴリアテは、ケーブルをプチンっと切られて無力化されることが多くて、後に無線式に改造したゴリアテを開発したっていう話があるくらい微妙な物だったらしいんだけど、この子は違うぜ。この世界だと遠隔での魔法は威力が落ちやすいって欠点があるけど、有線式なら、魔法の通りのいいミスリルケーブルを通じて、自爆時に火魔法を思いっきり追加出来るからな。爆発の威力は遠隔で魔法を使うより格段に高いんだぜ!


 それと、自爆だけだとちょっともったいない気がしたから、一応安いセンサーと武装を積んであるんだぜ。これで2号君が苦手な視界の悪い場所への偵察なんかにも使えるんだぜ!


 そんなゴリアテ君なんだけど、基本は爆薬もりもりの危険物だから、被弾されるとまずいと言う事で、普段は車体の後部に取り付けられている。なんか、2号君がさらに小さいゴリアテ君を背負っているようで、ちょっとかわいい。


 問題があるとすれば、センサーまで付けちゃったせいで、ミサイル程じゃないにしろ、2号君の武装の中だと高価な武装になっちゃったことかな? 製作費を考えると、あんまり自爆させたい装備じゃないんだぜ! あと、可愛いしな。


「お、2号君完成したみたいだな」

「ああ、どうよ。この見た目!」

「うむ、いいんじゃないのか? じゃあ、この調子で3号君も頑張って作るんだぞ」

「おうよ!」


 そう、2号君はあくまでも遠距離戦用だからな。ジンクの行きたがっている森に行くのにはあんまり向いてないんだよな。だから、ジンクのためにもさくっと3号君を作らないとだぜ!




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