第101話 久しぶりの我が家

「たっだいま~!」


 元の姿に戻って数日、ついに俺達は故郷であるパラージライトへと帰ってきた。誰もいないのはわかっちゃいるけど、ついついただいまって言いたくなっちゃうよな!


 そんなわけで俺は久しぶりの我が家の敷地へと足を踏み入れる。一月ぶりくらいの我が家か~。まだ庭だけど、やっぱこの感じ、いいよな~、落ち着くぜ。


 出かけるときに魔道具を使って敷地内に誰も入れないようにしておいたから防犯面はばっちりだったはずだけど、一応異常がないかチェックしないとだな。俺は軽く敷地を見回してみたけど、うん、ぱっと見は出かけた時のまんまだ。異常なしってやつだな!


 いや、やっぱ前言撤回、ちょっと違うところがあった。出かけるときは畑の野菜なんかがまだまだこれからって感じだったけど、いい感じに成長してる。これは、収穫ももうすぐだろうな。


 ん? でも、これはちょっとおかしくない? 畑では野菜が元気に育ってるけど、草なんかが生えてない。どこからどう見てもこの畑は手入れされた畑だ。この温かい季節、普通に考えたら草ボーボーになってても良さそうなのに。


「ねえ父ちゃん、母ちゃん、なんで草とか伸びてないの?」


 もしかして、あの結界の魔道具には畑を自動で管理してくれるシステムでもついてるのかな? 例えば母ちゃんの畑仕事用ゴーレムと連動して何かするかんじの。だとすると、今後の戦車づくりで面白いことが出来そうだよな!


「それはね、庭師の見習いの子に、留守の間の畑の世話を頼んでいたからなの。でも、この様子だと庭の木の剪定なんかもやってくれてたみたいなの」


 な~んだ、それで畑が手入れされてたってわけか。流石にそんなすげえことできないよな。


「でも、お家や工房、倉庫の中は一月の埃が溜まってるはずなの、まずはお家のお掃除をがんばりましょうなの!」

「は~い!」

「おう!」


 俺達は取り合えず荷物を外に置いたまま、家の中の掃除から始める。う~ん、たった一月とはいえ、誰もいないと結構埃が溜まるな。ま、1月だからそこまで悲惨な状態ってわけでもないけどさ。


 俺達は目立つ場所の掃除をちゃちゃっとすませる。


「これでひとまずお家の掃除は終わりなの。それじゃあ、私は買い物に行って来るの」

「ああ、俺とアイアンは工房の方を掃除しとくぜ」

「おう!」


 そう言って母ちゃんは買い物に出かける。我が家にも冷蔵庫くらいはあるんだけど、流石に1月留守にするということで、食材はお出かけの前に使いきっちゃってたんだよな。だから、今の我が家には食糧がまったくない。


 そして俺と父ちゃんは工房へと足を踏み入れ、掃除を開始する。


「あ~、早く2号君修理したいな」

「まあ、たった1月留守にしただけだからな。掃除もそこまで大変なわけじゃないし、明日から始めるとしよう」

「おう!」

「だがアイアン、2号君の改修プランはもう決まったのか?」

「それなんだけど、2号君は俺が戦車だの魔法のおかげで、オープントップである必要性があんまり無くなっちゃったんだよな。だから、基本的な方向性は今のまま、屋根をちゃんとつけて、ミスリルで作り直したいんだぜ」


 オープントップからくる視認性の高さと、天井が開いていることによる解放感、この二つの点は2号君のすばらしい利点だった。それと、オープントップって、古い駆逐戦車って感じがして、デザイン的にも気に入ってたんだよな。


 でも、オープントップから来る欠点も色々あった。2号君とはかれこれ1年以上の付き合いなんだけど、やっぱ雨や虫が入り放題ってのはいただけない。それに、車内の温度調整が出来ないのも辛い。やっぱ時代は戦車でもエアコンでしょ! 俺の場合、炎の魔法も氷の魔法も使えるから、戦車に機能としてのエアコンは必要ないけど、やっぱ外気が入ってくると、車内温度を維持しにくいしな。


 いままではそれらに目をつむってでも、視認性の良さとオープンカー的な解放感が止められなかったんだけど、俺が戦車だの魔法も覚えたことだし、これからは屋根のある生活だな!


「なるほど、2号君は開けた場所での遠距離戦用という本来の用途を考えれば十分な性能があるし、小変更で問題ないか。デザインなんかはもう考えてるのか?」

「それが、ちょっと悩みどころなんだよな」

「そうか、まあ2号君は砲塔も原形をとどめてないから、好きな形で構わんぜ」

「おうよ!」


 デザインはここ数日考えてたんだが、なかなか決まらないんだよな。現状の2号君はアメリカのM18GMC、通称ヘルニャンをモチーフに、いろいろデフォルメしたようなデザインの戦車なんだけど、オープントップな砲塔を密閉型の普通の砲塔にしちゃうと、どうにもヘルニャンっぽさが失われるような気がするんだよな。


 しかもそれだけじゃない。ヘルニャンの車体は割と近代的なデザインをしているせいで、下手な砲塔を乗せたら、モチーフ元が別の戦車になっちゃいそうなんだぜ。ヘルニャンの、現代戦車にも通ずる洗練された車体のデザインと、戦中車両丸出しのオープントップな砲塔、このバランスを生かしつつ、どうにか上手いことまとめたいな!


 よし、夕飯食べたら、いろいろとデザインを描きまくるかな!



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