第99話 さらばセントラルシティー

『ちょ、ちょっと待ってくれ! せっかく来てくれたんだし、みんなで遊ぼうぜ』

「そうかい? アイアン君をお人形に見立てて、お人形遊びでも楽しそうだけどな」

「うん、同感」

「私もそれで構いませんよ」

「ええ、わたくしもですわ」

『俺が構うんだよ! それに、せっかくだし、みんなで体動かして遊ぼうぜ』

「それは構わないけど、何するんだい?」

『ん~、街の外の実験場で遊ばね? あそこなら戦っても問題ないし』

「戦うって、アイアン君の戦車も、ジンク君の武装ゴーレムも壊れちゃってるだろ?」

『ちっちっち、俺やジンクが生身で戦えないとでも?』

「へえ、生身であたし達とやり合えるって? 面白そうだね」

「戦士の戦いを教える」

「アイアン君の魔法には興味あります!」

「ジンクさんと手合わせというのも、楽しそうですわね」


 よし、女の子達の同意は得た! あとはジンクとシュタールだな。嫌とは言わせねえがな! それに、ベルちゃん達4人がすでに俺の味方ってことは、いざとなったら力づくでもこっちが勝つ!


『ジンクとシュタールもそれでいいか?』

「ああ、構わないぜ」

「俺もいいぜ。でも、生身の俺はあんまり強くないぜ?」

『そだ、何なら母ちゃん達も誘う? シュタールは母ちゃんに魔法大砲教えてもらえば?』

「え? アイアンのお母さんって、魔法大砲使えるの?」

『もちろんだぜ! そもそも俺に魔法全般教えてくれたのは母ちゃんだし』

「おお、それはいいな! 俺の周り、魔法大砲使える大人がいないんだよ。独学じゃ限界だと思ってたし、是非とも教わりたいぜ」

「アイアン君の魔法の師なら、私も教わってみたいです」

『なら、フロちゃんも母ちゃんに魔法教わる?』

「はい、お願いします」

『んじゃ、決定だな。母ちゃ~ん!』

「それなら母さんも呼んどくか。母さんは一応剣士だけど、一通りの武器をつかえるしな。本当は盾の使い方は父さんの分野だけど、この後飲むみたいだし」

『わかったぜ!』


 そう、我が家の男性陣は、何かにかこつけて飲むんだよな。確か今日は俺とジンクの無事記念だったかな? まあいいや、ラピおばちゃんも呼ぼう。


『ラピおばちゃ~ん!』




 というわけで、みんなで楽しく街の外の実験場に移動して、遊ぶことにした。


『んじゃ母ちゃん、シュタールとフロちゃんの相手は頼むぜ!』

「任せてなの!」

「それじゃ、残りの子はあたしの監修で模擬戦でいいかい?」

『頼むぜラピおばちゃん!』


 流石ラピおばちゃん、わかってるぜ!


「それじゃあ全部で5人だから、あたしも混じって6人がそれぞれ1対1でやればいいね。じゃあ最初はジンクとアクアマリンさん、アイアン君とレッドベリルさん、あたしとグロッシュラーさんでいいかな?」

『おう!』

「ああ!」

「「「はい!」」」


 というわけで、俺達はいっぱい模擬戦をして遊んだ。模擬戦が遊びかよって思うかもしれないけど、そんなもんなんだぜ! なにせこの世界にはゲームはないし、スポーツも大してないからな。


 でも、よくよく考えれば日本でもあんまり変わらないかもな。ダチが集まれば、やる事は何かしらの対戦が多かった気がするしな。スポーツにしろゲームにしろトランプみたいなカードにしろな!


 というわけで、まずは俺はベルちゃんと遊ぶ。


『はっはっは! そんな攻撃効かないぜベルちゃん!』

「くそ、何て頑丈さだ」

『今度はこっちの番だ!』

「そんな遅い攻撃、あたらないよ!」

『ちいっ!』


 でも、凄まじく不毛な戦いだ。俺の謎の金属で出来たG弾のボディは、ベルちゃんの斧といえどまったく通さない。でも、G弾の体は動きが鈍くて、こっちの攻撃もまるで当たる気がしない。おまけにリーチも短いし。


 その後、アクアさんと戦い、ロッちゃんと戦い、ラピおばちゃんと戦ったんだけど、誰と戦っても不毛な戦いだった。でも、こうやってみんなで遊ぶのも楽しいよな!




 そんな感じで数日間、楽しく遊んでいたんだけど、楽しい時間ってのは、あっという間過ぎていくよな。今日は俺達がパラージの街に帰る日だ。そう、もう別れの日になっちまった。


『じゃあなみんな、また婆ちゃん家に来ることがあったら遊ぼうぜ!』

「もしよかったらみんなもパラージに遊びに来てくれ」


 俺とジンクがみんなに別れの挨拶をする。ちなみに元に戻る方法は母ちゃんと特訓中なんだけど、これが地味に難しくて今も成功していない。


「学校に通うようになれば、学校間交流で行き来することもあるからね。そう遠くない未来に会えると思うよ」

「はい。セントラルシティーは国の中心にあるということもあり、交流の行き先を自由に選べますので、その際にお会いしましょう」

「ん、今は二人のほうがトータルでは強いけど、体が大きくなって、身体強化魔法の効果がフルに発揮できるようになったら、絶対負けない!」

「次にお会いするときには、今よりもっともっと強くなっておきますわ」

「ああ! 次ぎ合う時は、俺の戦車で度肝ぬいてやるぜ!」


 ベルちゃん、フロちゃん、ロッちゃん、アクアさん、シュタールもそれを受けて挨拶してくれる。へへへ、そんなこと言われたら、こっちも負けてらんないよな!




「みんななら心配いらないと思うけど、気を付けて帰るんだよ」

「大丈夫なの! もうアイアンちゃんもジンク君も、守られる存在じゃないの!」


 婆ちゃんと母ちゃんも別れを惜しんでいる。


「馬鹿言ってんじゃないよ、エメラ。ジンクもアイアン君も、武装ゴーレムと2号君が大破してて、今の戦闘力はそこの女の子達とそんなに変わらないじゃない」

「それなら十分だと思うの」

「ダメよ!」


 母ちゃんとラピおばちゃんはいつでもどこでもわいわいしてるな。


『爺ちゃん婆ちゃん、次来る時までに、このG弾を使いこなせるような、すんごい戦車作ってくるぜ!』

「ええ、楽しみにしてるわね」

「アイアンちゃんならきっと凄い戦車を作れるわ」

「こりゃあわしらも、もっと凄い弾を開発せんといかんかのう」

「うむ、期待しとるぞ」


 ジンクも、ジンクの爺ちゃん婆ちゃんと挨拶してるけど、流石にこの人数でのお別れは、場がごちゃごちゃしちゃうな!


「あ~、もう。こんなんじゃ何時までたっても出発できないじゃない! ほらみんな乗って乗って。出発するよ!」


 でもそんなグダグダな場をラピおばちゃんが締めてくれる。今度こそ出発だな!


『じゃあな~!』

「またな~!」


 さて、それじゃあ我が家に帰りますか!



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る