第97話 バトル大会未就学児部門15だぜ!
ん? ここはどこだ?
「あら、アイアンちゃん。起きたのね」
あれ? 俺はパパラチアさんのヒポドラゴンゴーレムと戦ってたはずなのに、なんで母ちゃんに抱かれているんだ?
思い出せ。え~っと確か、俺はジンクとパパラチアさんと戦ってたはずだ。んで、ピンチになった俺は、G弾に俺が砲弾だ! の魔法をかけて、2号君の主砲からパパラチアさんのヒポドラゴンゴーレム目掛けて飛び出していったんだったよな。
んで、パパラチアさんのヒポドラゴンゴーレムの右腕にぶつかって、貫通し~たかは覚えてないな。でも、確かな手ごたえを感じた後、ふっと意識が遠のいたんだった。
っていうか、なんか母ちゃんデカくないか? 母ちゃんの背は確か145cmくらい、俺は100cmちょっとあるから、こんな赤ちゃんを抱っこするような抱き方にはならないはずだよな?
マジでよくわからん。まあ聞けばいいか。そう思って俺は母ちゃんに話しかけようとするけど、あれ? 声が出ない? なにこれ? ってあれ? 手も足も存在する意識が無いんだけど、マジでなにこれ?
「アイアンちゃん、混乱しているのね、無理もないの。でもアイアンちゃん、動揺せずによく聞いてほしいの。アイアンちゃんは今、砲弾になっているの。砲弾にお口はないからしゃべれないし、手足がないから動くことも出来ないの」
マジかよ!? つい勢いでやっちまったけど、完全一体化の魔法って、勝手に解けたりしねえの? なんてこった!
「砲弾と完全に一体化しちゃってるアイアンちゃんなら、空気の振動や光の感知は出来ると思うの。だから、私の声を聞いたり、周囲の状況を確認することはきっと出来るの」
よくわからんが、そう言うものなの?
「でも、安心して。今タング君がスピーカーを取りに行ってるから、それをくっつければ喋れるようになるはずなの」
え? よくわかんないんだけどって思ったら、父ちゃんがスピーカーをもって現れた。
「エメラ、持ってきたぞ。アイアンの様子はどうだ?」
「今目が覚めたところなの、スピーカーをつないでくれればアイアンちゃんなら話せると思うの」
「そうか! 良し分かった。今すぐつないでやるぜ」
すると、父ちゃんは俺にスピーカーの配線を接触させ、魔法を発動させる。
うげ、何この体の中をまさぐられるような感じ、気持ち悪!
「何だこれ? 金属加工魔法が使えない」
金属加工魔法? 金属加工魔法って、金属視点だとこんなに気持ち悪いのか。
「タング君ちょっとまってなの。この砲弾は金属だけど、アイアンちゃんの命の魔力と融合してるから、命の魔力が邪魔してタング君でも金属加工魔法は使えないと思うの。アイアンちゃん、自分で出来る?」
なるほど、俺の魔力が邪魔で父ちゃんの金属加工魔法が効かなくても、俺自身の魔力なら出来そうな気がするな。
俺は金属加工魔法を自分と父ちゃんが押し付けてくれているスピーカーの配線にかける。すると、あっさりスピーカーが俺の一部になった。
『あ~、あ~、二人とも聞こえる?』
「ええ、聞こえるのよ」
「ああ、バッチリ聞こえるぜ」
『あ~、よかった。ところで、これって元に戻れるんだよね?』
俺は意を決して一番大事なことを聞く。2号君と完全一体化したときの母ちゃんの喜びようから考えると、この魔法にそこまで極端なリスクがあるとも思えないんだよな。
「もちろん大丈夫なの。ただ、ちょっとだけ解除にコツがいるのと、肉体の再構築には莫大な魔力が必要だから、当分の間はこのままかもなの」
『うげ、まじか~。まあ、その内戻れるのならいいかな。ところでここには俺達しかいないみたいだけど、ジンクと2号君とジンクの武装ゴーレムはどうなったの?』
「ジンク君は治療してもらって今眠っているの。アイアンちゃん並みに回復魔法の上手な人が治してくれたから、今はかすり傷一つないの。ただ、怪我が怪我だったけに、相当消耗してるみたいで、1日くらいは起きないかもなの」
そうか、いくら体力自慢のジンクだからって、上半身と下半身が分かれる位置でパパラチアさんに切られてちゃ、元気ってわけにもいかないか。
「それと、2号君とジンク君の武装ゴーレムは、どっちも大破なの。ジンクの武装ゴーレムは切られているだけだから修理出来るけど、アイアンちゃんの2号君は、G弾の発射時の高温高圧のガスの影響で、大砲より後ろがどろどろなの」
『そうなの!?』
「ああ。俺も見たが、ミスリルで出来てた主砲やターレットリングなんかですらガタガタだった。当然鉄の部分はは全滅だ。使うなって言ってた弾を、今まで以上に強化して撃った代償だ。俺から言わせりゃあ、G弾が真っ直ぐ飛んだのだって奇跡に近いぜ」
そっか、2号君、そうなのか。
『そだ、勝敗はどうなったの? パパラチアさんのヒポドラゴンゴーレムの右腕に当たって、何か手ごたえを感じたところまでは覚えているんだけど、そこで気を失っちゃったみたいなんだ』
「残念なの。アイアンちゃんの最後の一発は、ヒポドラゴンゴーレムの右腕の小手を突き破って、右腕に突き刺さったところで止まっちゃったの」
「だが、見事な一撃だったぜ。あのヒポドラゴンゴーレムの小手は、ヒポドラゴンの骨とかを使って出来ていて、かなりの強度っていう代物だからな。それを、いくら親父たちが悪乗りして作った弾とはいえ破壊できたんだ。誇っていいぜ」
『うん、わかった』
「ところでアイアンちゃん、砲弾の姿でもアイアンちゃんは可愛いけど、ちょっと不便だと思うの」
『うん、それは俺も思った』
「なら、金属加工魔法で人間っぽい体に加工しちゃえばいいの。完全一体化中の今なら、そこまで魔力消費も激しくないと思うの」
『なるほど、その手があったか! ちょっと試してみるぜ!』
俺は自分自身に意識を集中する。ん~、普段の俺の再現ってのは無理だな。体積がどう考えても足りねえし。だとすると、普段の俺をそっくりそのまま小さくした感じのイメージでいくかな。
俺は自分自身に金属加工魔法を使う。うん、首も回るし手も足も指までちゃんとあるな。
そうそう、こんなちびっこの服なんて絶対ないと思ったから、体はジンクの武装ゴーレムのテイストを取り入れてみたぜ!
『どうかな? 上手くいったと思うんだけど』
ちなみに後付けのスピーカーは口に搭載すると見た目がひどいことになるので、どこかの名探偵の蝶ネクタイみたいに首に取り付けてある。
「ぶふっ!」
「アイアンちゃん、可愛いわ!」
父ちゃん、何でふいたんだ? それに、母ちゃんも可愛い? まあ、小さいから可愛いのかな?
「アイアン、ちょっと鏡見てみろ」
父ちゃんがそう言いながら俺を鏡の前まで運んでくれる。するとそこには、3頭身の可愛らしい俺がいた。
『なあ!? 違う、俺がイメージしたのはこんなのじゃない! 等身はいつもの俺の頭身のはずだったのに、なんでこんなことに!?』
「アイアンちゃん、可愛いからいいのよ!」
ダメだ、こんなの認められん。ってか、この姿じゃあジンク達に会えないじゃん! 100%笑われる!
『もう一回だ!』
何だこれ、再度金属加工魔法を使っても、俺が思う俺の姿にならないんだけど!
『もう一回!』
どうすんだよこれ。当分この格好とか、誰にも会えないぞ!?
『まだま、だぁ』
って、あれ? あ、やば、これ、魔力切れか・・・・・・。
「アイアンちゃん、まだ疲れてるのに金属加工魔法をそんなに連発したらってあら、寝ちゃったの。もう、タング君が笑うからなのよ!」
「わりい、でもよ、まさかあんな可愛くなるとは思わねえじゃねえか」
やべえ、ジンクより早く起きて、何とか、しねえと、だ・・・・・・。
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