第96話 バトル大会未就学児部門14だぜ!
俺とパパラチアさんによる第4ラウンドが開始する。開幕は俺のスモークグレネードによる攻撃だ。至近距離からパパラチアさんのヒポドラゴンゴーレムに、俺のスモークグレネードが直撃する。
スモークグレネードからはすさまじい煙とかが噴出し、俺とパパラチアさんだけじゃなく、周辺一帯を煙に包み込む。
ダメージは一切無いだろうけど、ぴかぴか弾はさっき撃っちゃったし、今はリロードの時間を稼ぐためにも距離を取らないとだからな。この隙に俺はとんずらこくぜ!
俺は全速力で斜め後方へとダッシュする。至近距離からのスモークだから、いる場所はばれてるしな! うおっし、煙幕から抜けたぜ。パパラチアさんは、まだ煙幕の中だな! って思っていたら、煙幕の中から投擲武器が飛んできた。
「な!?」
俺と2号君が完全に一体化して、2号君のありとあらゆる性能を最大限引き出せるようになったとはいえ、鉄製の2号君の装甲で、あの投擲攻撃を防げないことは変わらない。だけど、俺は今までよりもはるかに速くなったサイドステップでこれを回避する。
「うし! 避けれた!」
さっきは砲塔の側面装甲を切り裂かれたけど、今度は避け切れた。これも、俺が戦車モードが完全になったおかげだな。
「でもなんで煙幕の中からこっちの位置がわかんだよ!?」
「アイアンちゃん、風なの! たぶんアイアンちゃんのバックの時の風の流れ、煙幕の流れから、アイアンちゃんの逃げた方向を推測したの! でも、いまはそんなこと良いから距離を取るの!」
「おう!」
俺は全力でバックして距離を取る。後の問題は攻撃だな。ぴかぴか弾が効かねえって事実も変えようがねえからな。希望があるとすれば、爺ちゃん婆ちゃん達からもらったこのG弾だけか。父ちゃんからは2号君が壊れるから撃つなって言われたけど、今の完全一体化状態なら大丈夫なのか? いや、考えても答えが出る問題でもねえな。どっちにしろ、G弾にかけるしかねえか。俺はローダーゴーレムにG弾を装填してもらうとともに、G弾に魔法を込め始める。正真正銘、これが最後の一発だな。
『逃がさんよ!』
でも、パパラチアさんは煙幕の中から飛び出してきて、有無を言わさず距離を詰めてくる。そりゃあこっちの位置が大体わかってるんだ。もちろんそうするよな。くそ、こっちとしてはG弾に魔法を込める時間を稼ぎたいってのに!
「もっぱつ、これでも食らえってな!」
俺はもう一度スモークグレネードを発射する。
「んでもって、今度はおまけ付きだ!」
さらに、土魔法で地面に干渉して、地面に頑丈な1mくらいの山を大量に作る。パパラチアさんのヒポドラゴンゴーレムは5mサイズだが、流石に1mもの障害物が大量に地面から生えてりゃ、移動しずらいだろ。
でもこれだけじゃ不十分だ、そもそもパパラチアさんは俺のいる方向はわかってるんだ。何とか居場所を誤魔化せなきゃ、パパラチアさんは強引に俺の方に向かってくるだろう。ちい、どうする?
ががががががが!
そんな風に俺が悩んでいると、突如俺の右から機関銃の銃声が鳴り響く。いったいこの銃声は?
「アイ、アン、俺が、囮に、なる」
銃声の発生源は、ジンクの武装ゴーレムだった。どうやら俺は、無意識のうちにジンクが倒れている場所の近くまで移動して来ていたらしい。ジンクの武装ゴーレムは、機関銃を右手で持って撃ちまくっている。
どうやら盾ごと左腕は落とされたが、左肩の機関銃は接続部分を切られただけで、機関銃そのものは無事だったのか。
「ジンク? お前無事だったのか?」
「無事、じゃねえが、アイアン、一人に、任せられる、かっての」
ジンクの声、明らかにおかしい。もしかして、さっきの攻防で武装ゴーレムだけじゃなくて、中のジンク本人にまでダメージがあったのか!?
でも、いまはジンクに頼るしかない。
「すまんジンク、時間を稼いでくれ!」
「ああ」
ジンクは煙幕の中に機関銃を撃ちまくる。すると、パパラチアさんは、俺から見て右斜め前方、丁度ジンクのいる方向へと、煙幕の中から飛び出してきた。
「これが、最後、だ」
ジンクは煙幕から飛び出してきたパパラチアさんに、間髪入れずに、右肩のクローミサイルを発射する。それと同時に、ジンクは機関銃を捨ててパパラチアさんへと飛び掛かる。
「うお、お!」
パパラチアさんも、流石にジンクの復活には驚いたのか、一瞬動きが止まる。だが、すぐに動き出して、その長刀でジンクのクローミサイルを容易く切り裂き、流れるような動きでそのままジンクの武装ゴーレムを、今度は右腕の付け根付近から左腰のあたりにかけて、真っ二つに切り裂いた。
「くそ、掴む腕、が。あい、あん、あとは、たのんだ、ぞ」
あの位置を真っ二つって、乗ってるジンクも真っ二つだぞ!?
ジンク、お前の稼いでくれたその時間、決して無駄にはしねえ!
魔法大砲の最大の欠点、それは、体から離れれば離れるほどに、威力が激減することだ。でも、それは仕方ない。俺の体から出る魔法が、俺から離れて威力が落ちるのは、この世界のルールだからな。
でも、いくらG弾とはいえ、そんな風に威力の落ちた砲弾じゃあ、パパラチアさんのヒポドラゴンゴーレムはきっと倒せねえ。なら、威力を落とさないようにG弾を撃てばいいだけだ! 砲弾を体から離さずに撃つことは無理? いいや、無理じゃねえ。俺が魔法で2号君と完全に一体になれるんだったらよ。G弾と一体化することだって、可能だってな!
ジンク、お前の稼いでくれた時間で、俺とG弾の完全一体化は終わったぜ!
見ててくれジンク! これが、現時点で考えられる、俺の最高の一撃だ!
この近距離からの攻撃、しかもジンクを切って不十分なその体勢、避けれるもんなら避けてみろってんだ!
ど~ん!
俺はG弾を発射する。いや、俺がG弾として発射される!
パパラチアさんは素早く右腕でガードしにくる。けど、俺はこの一撃でお前をぶっ倒すって決めてんだよ! そんな防御で、俺を止められると思ってんじゃねえぞ!
ぬああああああ!
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