第88話 バトル大会未就学児部門6だぜ!
『続きまして、第2試合を行います。まずは選手の入場です』
俺とジンクは会場へと進んでいく。
『前を進んでいるのは、戦闘用魔道自動車の2号君に、いえ、失礼しました。戦車の2号君に乗ります。アイアンオア=スミス君です! アイアンオア君は、ランク4に挑戦する良い子の中では最年少、なんと7歳だ~! はい、拍手~!』
「「「「「うおお~!」」」」」
『続きまして、武装ゴーレムを操るのはジンク=カーター君。ジンク君も8歳と、アイアンオア君の次に若い子だ~! はい、拍手~!』
「「「「「うおお~!」」」」」
『二人のことを知らないという観客も多いのではないか? それも無理はない、なにせこの二人、この街の子じゃないんだ! あのミスリルで有名な街、パラージライトから、両親の里帰りでセントラルシティーに来ている子、だ~!』
「「「「「うおお~!」」」」」
さっきの試合のせいか、観客のテンションが変に高いな。
『さあ、二人の準備はいいかな~? ウサギさんが出てきたら、すぐに試合開始になるからね~』
俺とジンクが会場の真ん中に到着すると、ゴーレム使いの人が2本角ウサギのクレイゴーレムを生み出す。
「準備は良いですね?」
「おうよ!」
「はい!」
審判の人はあの司会者みたいな、ハイテンション系じゃないみたいだ。正直あのノリは辛いので、助かる。
「では、試合開始!」
『さあ、第2試合の開幕だ~!』
試合開始と同時にジンクが走り出す。すると、早速2本角ウサギはその2本の角に魔力を集め始めた。
俺も炎金属融合魔法をぴかぴか弾にかける。っていうか、炎金属融合魔法はかけるのに10秒くらいかかるからな。試合開始前から仕込み済みだぜ。
そして、2本角ウサギは突進中のジンク目がけて雷球を発射する。だが、その瞬間に合わせて、俺もぴかぴか弾を発射する。プロンのおっちゃんからもらった2本角ウサギの資料の中に、2本角ウサギは、威力の高い雷魔法の使用時は、足を止めるっていう情報があったんだ。さっきの試合でも情報通り足を止めてたし、情報に間違いはないだろう。そして、この機を逃がすほど、俺はお人よしじゃないってな!
ど~ん!
俺のぴかぴか弾は、2本角ウサギの雷球をかすめて、2本角ウサギの胴体にぶち当たる。雷球に当たった際に、多少ぴかぴか弾に込めた魔力を削がれたみたいだけど、見事にクリーンヒットだぜ。流石に即死はしなかったみたいだけど、もうまともに動けまい。
さてと、次弾装填といくかな。まあ、あんまりやり過ぎるとジンクの活躍の場がなくなっちゃうから、一応装填するっていう程度で、ジンクがやばくなるまで撃たないけどな。
俺のぴかぴか弾がかすめたとはいえ、いまだ健在だった雷球を、ジンクは新技、瞬間強化を用いた盾で軽く弾き飛ばすと、走りながらクローミサイルを発射する。2本角ウサギは距離を開けようと走り出していたが、怪我のせいかさっきの試合の時みたいな速度は出ないようだ。ジンクのクローミサイルは2本角ウサギを容易くつかむ。
こうなるともう逃げるのは無理だな。ジンクの武装ゴーレムは全長3mの金属の塊だ。1、5mくらいしかない2本角ウサギとじゃ、体格が違いすぎる。ジンクの武装ゴーレムがクローミサイルに付いているワイヤーを引き寄せると、2本角ウサギはあっけなく引き寄せられる。2本角ウサギも必死に雷魔法で武装ゴーレムやクローミサイル、ワイヤーを攻撃してきたが、そう簡単にジンクの金属強化魔法で守られてるミスリル製のパーツにダメージは与えられないぜ。
しばらくあがいていた2本角ウサギだったが、どうあがいてもずりずりと距離の縮まるこの状況に、とうとう覚悟を決めたのか、身体強化魔法と雷魔法を併用した突進を繰り出してくる。だが、弱った体でジンクの武装ゴーレムに通用するはずもなく、カウンターのシールドバッシュであっさり角を折られ、剣で止めを刺されていた。くう、鳴き声が地味にかわいいぜ。
「流石ジンク、余裕だな」
「アイアンの一撃の時点でもう勝負あっただろ? だが、資料通りに本当に防御力が低いな。こんなにあっさり倒せるとは、ランク3の牛モンスター以下じゃないか?」
「いや、それはねえだろ。だってジンク、例の新技、瞬間強化使ってるしよ」
「そういやそうだな。最近当たり前に使いすぎてて、新技だってことを忘れてたぜ」
ジンクがこっちにきて、武装ゴーレムでこつんっと2号君を叩く。まあ、勝利のグータッチみたいなやつだな!
『え~っと、勝負あり、でいいんでしょうか?』
気持ちはわかる。あんな熱戦のあとに、これじゃあな。でも、俺とジンクは次狙いだから、ここはさくっと突破したかったんだよ。
『勝負あり! 勝者ジンク=カーター君、アイアンオア=スミス君!』
「「「「「うおおお~!」」」」」
「今回の賞品はどんなのかな~」
「なにって、パンフレットに書いてあっただろ? 高級チョコだ」
「ばっきゃろうジンク。ランク4勝利の賞品なんだぞ? どんだけ美味しいチョコなのかってのが重要なんじゃねえか!」
「さいですか」
今回のバトル大会、未就学児部門は戦いに参加するとお菓子をもらえる。勝っても負けてもお菓子はもらえるんだけど、勝った方が豪華なお菓子がもらえるんだ。
ランク1は、まあみんな絶対勝つし、お祭り要素が強いのか、そんな特別なお菓子ってわけじゃなくって、普通の駄菓子の詰め合わせだった。ちなみに賞品のお菓子はもうない。俺と母ちゃんの血肉に既になっている。
んで、ランク2は、日本だとお歳暮とかにやり取りするような、ちょっと豪華なお菓子だった。ちなみに負けると量が減るみたいだ。ちなみに賞品のお菓子はもうない。俺と母ちゃんの・・・・・・。
そんでランク3は、高級クッキーの詰め合わせだ。もし負けてたら、ちょっと高級なクッキーの詰め合わせに、ランクダウンしていたようなんだ。ちなみに賞品の高級クッキーはもう・・・・・・。
そしてそして、ランク4の賞品は、高級チョコの詰め合わせだ! なんでも、王都の有名パティシエが、この大会のためだけに手間暇惜しまず作り出した、子供向けの最高峰のチョコなんだそうだ。ちなみに負けるとこれまたちょっと高級なチョコの詰め合わせにランクダウンするんだそうだ。
控室の前までいくと、係のおっちゃんが高級チョコを渡してくれる。
「おう、坊主ども、見事な戦いじゃったな! これがランク4の勝者に渡される景品、高級チョコの詰め合わせじゃ!」
「ありがとう。おっちゃん!」
「ありがとうございます」
俺達は会場の見える位置まで向かうと、早速チョコを開ける。いや、開けたのは俺だけで、ジンクは開けてないけど。
「すっげえ、なあ母ちゃん、見てよこの入れ物。紙じゃなくて木で出来てるぜ!」
「ほんとなの! 流石高級チョコなのね! しまも、量も多いの! 3段重ねなの!」
「じゃあ、母ちゃん、早速食おうぜ!」
「アイアンちゃん、ありがとうなの!」
俺と母ちゃんは早速チョコを食べ始める。
「なにこれ、超うめえ!」
「本当なの。良い腕してるの!」
くう、俺の語彙力が無いばっかりに、この美味さを伝える術が全然ないんだぜ。俺と母ちゃんがばくばく高級チョコを食べていると、女の子が話しかけてきた。
「あら、そのような食べ方をするのは、少し勿体無いのではなくって?」
俺達に話かけてきたのは、4人組の女の子の1人だった。あれ、雰囲気はだいぶ違うけど、この魔力の感じ。
「もしかして、さっき戦ってた子?」
「あら? 気付きませんでしたか?」
「いやだって、雰囲気違うし」
「おい、アイアン、何言ってんだよ! すまない、連れが失礼した」
「構いませんことよ。戦闘時とそうでない時とでは、雰囲気が違うというのはよく言われますもの。わたくしはアクアマリン=シールドと申します」
「ジンク=カーターだ」
「アイアンオア=スミス」
「私はフローライト=マジックです」
「あたしはレッドベリル=アックスだ。よろしくな!」
「グロッシュラー=ランス」
髪の色なんかは名前の通りだな。アクアマリンが青系の色で、フローライトとグロッシュラーが緑。レッドベリルが赤か。背はみんな俺以上、ジンク未満ってところか。そっか、俺以上か・・・・・・。いや、日本人だってこの年齢の頃は女子の方が平均すると少し背が高かったはずだ。それに、司会のドワーフは俺が歳少年って言ってたから、きっと年上だ。シュタールもプロンもプロンの取り巻きも年上だし、俺は決して小さいわけじゃないんだ。
それより、この盾の子は結構な怪我をしてたと思うんだが、もう平気なのか? 回復魔法でいくら治るって言っても、大怪我をした事実は変わんないし。体力とか減るもんは減るだろ。
俺はついついこのアクアマリンって子のお腹を見てしまう。
「お腹の怪我はもう平気なのですか?」
ジンクも同じように思っていたのか、やんわりと聞いてくれる。
「あら、乙女のお腹に興味がおありなのですか?」
「いや、すまない。無粋だった」
「ふふふ、お気になさらず。わたくしは自己治癒魔法に長けておりますの。あの程度の怪我、大したことはありませんのよ。戦いの最中は魔力の多くを身体強化魔法に使用しておりましたので、怪我を治癒しきれませんでしたが、戦いが終わりさえすれば、内臓が一つ二つ無くなっていても問題ありませんの」
「そ~そ~、気にしちゃダメだよ。アクアの戦い方は傍目にはビビるけど、毎度のことなんだから。っていうか、怪我云々いうなら、あんなビリビリバチバチの相手に攻撃しなきゃいけなかった、あたしやロッシュのほうがひどかったんだよ? あっちこっち火傷しちゃってさ~」
「その通り、アクアは治療班が来る前に完治してた。私とベリルのほうが重症だった。でも、戦い方のせいでいつもアクアは心配されて、私とベリルはこっちの方が重症っていうと呆れられる、不公平」
アクアマリンさんの説明に、レッドベリルさんとグロッシュラーさんが続く。フローライトさんっていう魔法使いも苦笑いしてる。まじであの怪我で全然平気だったのかよ? それはそれで凄いな。そういや、ゲームなんかじゃあ自己回復に優れた盾って、割とよくいたタイプの盾役だよな。う~ん、実際に目の当たりにするのは初めてだけど、こんなに心臓に悪いとは思わなかったぜ。
ってか、盾の子を差し置いて、後ろから攻撃してただけの斧の子と槍の子の方が重症って、そっちの方が驚きだよ! 不公平かもしれないけど、驚きだよ!
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