第83話 バトル大会未就学児部門だぜ!

 ちょっとしたトラブルはあったものの、俺達は無事に受付を済ませ。会場となっているコロシアムの中へと入っていく。


「外から見ても広かったけど、中は中で広いんだな」

「だな。アイアンの2号君や、俺の武装ゴーレムに乗ったまま入れるとは思わなかった」

「そっか、お前ら初めてだったな。観客席は流石に俺達のような戦闘用の兵器に乗ったまま入るのは無理だが、選手の控室は5mの大人用の武装ゴーレムが入れるようになってるからな、かなり広いぜ」

「ほ~、それはすごいな」

「なるほどな」


 コロシアムの内部は装飾等がまったくない、石壁むき出しのシンプルな造りだったが、とにかく広い。俺達が今通っている選手控室へとつながる通路なんか、天井が10mくらいありそうだ。


 そんな通路を少し歩くと、選手控室へと到着した。


「それじゃ、開始までのんびり待つか。俺もパーティーメンバーが来るまで暇だしな、この大会のことを教えてやるよ」

「お、悪いな」

「助かるぜ」

「いいってことよ。まず、対戦相手なんだが、俺達同士で戦うわけじゃないってのはいいよな?」

「ああ、モンスターに扮したゴーレムとの戦いだろ?」

「そうだ。まず、ランク1のモンスターを模したゴーレムと戦い、それに勝てた奴だけが次に進める。ここでひとつ言っておくが、連戦するわけじゃないぜ。参加者全員が最初にランク1のモンスターと戦って、全員が終わったらランク2のモンスターと戦いだすんだ」

「へ~、そうなんだ。あ、でも、そのほうが回復出来ていいな」

「確かにな。低いランクの内は良いが、ランク3との戦闘後にランク4と連戦はちょっときついからな」

「それと、初めてだと戸惑うかもしれないんだが、会場になっている舞台はかなり広いからな。会場内がいくつかのブロックに区切られてて、何か所か同時に戦うようになってるんだ。一応各ブロックごとに結界が張られてるから、隣のブロックの攻撃がこちらに当たることはないけど、結界は透明だから、時々こっちにこないか不安になる攻撃もあるけど、安全だから気を取られるなよ」


 あれだな。日本で言うなら、大きな体育館なんかでスポーツの大会をするときに、パーテーションで区切って、同じ会場で同時に何試合もやるみたいな感じか。


「ああ!」

「おう。というか、アイアンの場合、威力の高い攻撃で結界を攻撃する可能性が高いな」

「いやいや、それは不可抗力じゃね?」

「まあ、アイアンの戦車の主砲のような、威力の高い攻撃が必要なのはランク3以降ってところだと思うけど、ランク3やランク4とのバトルになると、戦うスペースをかなり広くしてくれるから、そこまで気にしなくていいぜ」

「わかったぜ」

「んで、もう知ってると思うが、今日の対戦相手は、ランク1は角ウサギ、ランク2は牙ウサギ、ランク3はファイティングバニー、ランク4が2本角ウサギだ」

「え、全部兎なの?」

「おいおい、パンフレットに書いてあっただろ? 見てないのか?」

「見てない。ジンクも見てないだろ?」

「いんや、俺は見てるぜ。対戦相手とか書いてあるんだから、普通見るだろ」

「むぐぐ」


 そういえば婆ちゃん達が見てた気がするし、教えてくれた気もする。でも、ここのところ特訓のせいか、帰ってからは常にうとうとしちゃってたから、聞いてるようで聞いてなかったのかも知れないな。


「まあ、わざわざ言わなくてもわかると思うが、敵はウサギ系のモンスターってことで、素早さが高い。その代わり防御力は大したことないから、攻撃をしっかり当ててくことが重要だぜ。ただ、ランク4の2本角には気をつけろよ。あいつらけっこう高度な魔法を使うって話だからな」

「ランク4相手に油断なんかしないぜ!」

「だな。ところでシュタール。パンフレットにはランク4までしか書いてなかったんだが、ランク5より先はどうなってるんだ?」

「どっかの軍人が出てくるぜ」

「「軍人?」」

「そうだ。モンスターに模したゴーレムを動かすってことは、術者のランクは動かすモンスター以上のランクじゃなきゃいけないだろ?」

「ああ」

「でも、愛用のゴーレムの強さがランク5や6のゴーレム使いはいても、モンスターの真似をした、言わばお遊びのゴーレムでランク5の能力を発揮させられるゴーレム使いはいないらしくってな。だから、ランク5から先は軍人が出てくるぜ」

「「ほ~」」

「とはいえ、未就学児部門でランク4を突破して、軍人を出させた奴なんて過去にもあんまりいないぜ。俺が知ってる範囲だと、さっきのプロンってやついたろ? あいつの兄さんと姉さんが10歳になる年度の時、つまり、未就学児部門最後の年だな。その時に出せたくらいじゃないかな? ただ、今回は前回大会でランク4相手にいい勝負をした、プロンのとこの道場のくそ強いのがリベンジに燃えてるから、もしかしたらそいつらがランク5まで行くかもしれないけどな」

「プロンの家って、道場やってるんだ」

「ああ、プロンの父親はまだ現役の軍人なんだが、プロンのお爺さんが現役を引退して道場やってるんだよ。俺も時々通ってるぜ。だからこそわかるんだが、あいつらマジで化け物みたいに強いぜ」


 シュタールからいろいろと、バトル大会について教えてもらっていたら、突如アナウンスが流れ始める。


『只今より、セントラルシティーバトル大会、未就学児部門、開会式を開始します。選手の皆さんは会場へお集まりください』


 ついに始まるのか! 緊張してきたぜ! って、シュタールのメンバー来てないじゃん。


「おいおいシュタール。お前のチームメンバー大丈夫かよ。もう始まっちまうぜ」

「ああ、大丈夫だ。過去の大会で勝ち進めたところまでは、パスできるルールがあるんだよ。俺達は以前ランク3を突破してるから、今年はランク4からのスタートなんだ。俺達も今年で未就学児部門は最後だからな。何としてもランク4を突破したいんだ。そんなわけで、無駄な体力魔力の消費を避けるために、下位のランクには不参加だ」

「なにそれ、ちょっとずるい!」

「ま、お前らは来年だって未就学児部門でれるんだし、来年は下位への参加をパスすりゃいいんだよ。っと、それより今は開会式に行こうぜ」

「ああ」

「そうだシュタール、武装ゴーレムのまま行ってもいいのか?」

「もちろんだ。俺もこいつに乗ったまま行くしな」


 そういってシュタールはゴンゴンと愛車、カノーネ88を叩く。


『みなさ~ん、こちらに移動してください~』


 旗を持った武装ゴーレムに乗った係員のひとが、誘導してくれるみたいだ。俺達は案内に従って開会式へと向かう。外側から見た時も、日本にでもありそうな競技場っぽいと思ったけど、会場もまんまそれだな。広いグランドを囲うように観客席がある。


「すげえ人だな」

「ああ、観客がこんなに多いとは思わなかった」

「参加者の子供が多いからな、その家族とかがそれなりに集まるんだよ」

「なるほどな~」

「そういえば、シュタールの出番はランク4からだよな? なのになんでシュタールはもういるんだ? パーティーメンバーはまだいないんだろ?」

「俺は開会式も好きだし、ランク1や2のバトルを見るのも好きだからな。それに、ランク1やランク2に出るガキどもの応援もしなきゃだしな」

「面倒見がいいんだな」

「ははは、さっきのプロンってやつも一緒だぜ。なにせ俺が応援したいのは、プロンの道場で知り合ったガキどもだからな」


 俺達が話している間も続々と参加者が会場に集まってくる。そして、参加者が集まり終わったタイミングで、司会者がマイクを手に取る。


『参加者のみんなは、もう会場に集合したかな~? うん、みんないるね~! では、ではではではでは~! 皆様お待たせしました! これよりセントラルシティーバトル大会、未就学児部門、開会式を行います!』


 うっし! ついに開会式の開始だぜ!


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