第80話 父ちゃん方の爺ちゃんと婆ちゃんだぜ!

 あれから二日、今日はバトル大会の前日だ。そして、父ちゃんの両親とガリウムのおっちゃんの両親がセントラルシティーにやってくる日でもある。4人は住んでいる街を今朝出発して、昼過ぎにここセントラルシティーへと到着する予定だ。


 ってなわけで、お昼ご飯を食べた後、俺は婆ちゃんの家で2人の到着を待っている。あ、4人が来るのに待ってるのが2人なのは、ガリウムのおっちゃんの両親はラピおばちゃんの実家に行くから、ここに来るのは父ちゃんの両親だけなんだ。まあ、明日のバトル大会の応援にはみんな来てくれるって話だから、明日には会えるんだけどな!


「みんな~、来たわよ~」


 婆ちゃんが二人が来たことを教えてくれる。俺達はみんなで外に出てお出迎えだ。すると、道路には馬車が一台止まっており、丁度二人のドワーフが降りてくるところだった。


 父ちゃん方の爺ちゃんと婆ちゃんの名前はそれぞれタンタルとペリドットだ。タンタル爺ちゃんの見た目は、きっと父ちゃんが年を取るとこうなるんだろうな、という感じの見た目だ。顔も似ているし、職業も父ちゃんと一緒の鍛冶屋ということで、体形なんかも本当に似ている。


 地球の周期表だと、タンタルの次がタングステンだから、まさに親子の名前って感じだよな。もしかしたら俺の名前って、タングステンの次であるレニウムになった可能性もあったのかもな~、ってなことをちょっと思ってたら、父ちゃんの弟にすでにレニウムおじちゃんがいるらしい。


 ペリドット婆ちゃんはその名の通り黄緑色の目と髪のドワーフだ。鍛冶屋っていう話だけど、父ちゃんや爺ちゃんみたいにごつくはないな。いたって普通の体形だ。そういえば、ドワーフの鍛冶屋は父ちゃんみたいに筋肉もりもりみたいなドワーフが多かったけど、日本じゃあ、ゴリマッチョな鍛冶屋ってあんまり見かけないよな。力はあるんだろうけど、どっちかっていうと細めの人が多い気がする。婆ちゃんはそういうタイプなのかな。


「こんにちは! 爺ちゃん、婆ちゃん!」


 俺は元気よく挨拶する。この二人も俺が生まれて間もなくパラージの街に来てくれたみたいなんだけど、当然のように俺は覚えてない。


「「こんにちは!」」

「あらあら、アイアンちゃんはすっかり大きくなっちゃって。ペリドットお婆ちゃんですよ!」

「うむうむ、俺がタンタルじじいじゃ! 前会った時はこんなに小さかったのになあ」

「それはそうですよ、お爺さん。以前あった時は生まれて1年もたっていない時なんですもの」


 爺ちゃんと婆ちゃんに挨拶すると、抱っこされたり撫でられたりと一通りいじられた。その後は大人同士の挨拶タイムだ。


「本日はお招きいただきありがとうございます」

「いえいえ、こちらこそ来ていただいてありがとうございます」

「お久しぶりです。お義母さん」


 ペリドット婆ちゃんと、翡翠婆ちゃん、それに母ちゃんが挨拶する。


「よう、クロさん。元気そうじゃな!」

「ああ、お前さんも元気そうじゃな! 今夜は一杯やるか?」

「もちろんじゃ! タングもやるじゃろ?」

「もちろんだ」


 こっちはこっちで、タンタル爺ちゃんと、母ちゃんの父親であるクロライト爺ちゃん、父ちゃんが挨拶している。早速今夜の飲み会の話っていうのがなんだかな~って気もするけど、まあ、これがドワーフ男のスタンダードなんだろう。


 一通りの挨拶を俺達は、婆ちゃんの家の中へと入っていく。そして、俺はペリドット婆ちゃんの膝の上に乗りながら、タンタル爺ちゃんとペリドット婆ちゃんとおしゃべり中だ。


「アイアンは今年でいくつになるんじゃ?」

「7歳だぜ。爺ちゃん」

「ほう、7歳か。明日のセントラルシティーバトル大会に出るんじゃよな?」

「うん。ジンクと組んで。未就学児部門に出るぜ!」

「ジンクといえば、ガリウムの息子か」

「うん!」

「そういえばアイアンちゃんは、どんな武器を使うの? こう見えて私達は結構腕のいい鍛冶屋さんなのよ!」

「俺は2号君を使うんだぜ!」

「2号君?」

「うん。戦闘用魔道自動車って言えばいいのかな?」

「見せてもらってもいいかしら?」

「わしも気になるのう」

「じゃあ、外行こっか。いま車庫に置いてあるからさ!」

「うむ」

「ええ、そうね」


 俺はペリドット婆ちゃんに抱っこされたまま、2号君がしまってある車庫まで行く。


「ちょっと待っててくれ。今外に出すからさ」

「ええ」


 俺は婆ちゃんに降ろしてもらうと、2号君に乗り込んで二人に2号君を紹介する。


「どう!? これが俺の2号君だぜ!」

「ほほう、これはこれは」

「あらあら、凄いわね」


 俺は内部構造、砲弾など、2号君に関して隅々まで説明していく。


「うむうむ、見事なものじゃな」

「ええ、本当に凄いですね」

「しかし、大部分が鉄をベースにミスリルを混ぜた合金で出来ているとはな。正直おどろいたわい」

「本当ですね。それに、ぴかぴか弾というミスリルベースの合金にも驚きましたね」

「ガリウムが子供の頃、ミスリルなんて扱えたかのう?」

「無理でしたよお爺さん。そもそも普通の子供はミスリルを扱えるほど魔力量は多くないですからね」

「うむ、そうじゃったな」

「ええ」

「そうなの? ジンクなんかミスリル製の武装ゴーレム使ってるぞ?」

「むう、最近の子供はすごいのお」

「本当ですね」


 そんなにミスリル製のものを子供が使うのは変だったのかな? ん~、いや、確かに最初のころはぴかぴか弾一発で魔力切れになってたな。そういう意味では子供の武器にはちょっと使いにくいのかもしれない。


 俺は次に2号君に搭載されている歩兵用の装備を二人に見せる。


「あとは、いざっていう時の歩兵用装備もあるんだぜ!」

「ほほう。お、剣もあるんじゃな!」

「うん、俺の愛剣猫ヅメだ!」


 爺ちゃんは俺の歩兵用武器の中でも、特に剣に興味があったようだ。


「わしが鍛冶屋なのは知っておるかの?」

「うん。父ちゃんに聞いたから知ってるぜ! 二人とも鍛冶屋なんだろ? 確か爺ちゃんが剣を作るのが得意で、婆ちゃんが槍を作るのが得意なんだよな?」

「うむ、その通りじゃ。少し剣を見せてもらうぞ」

「うん、見てくれ! 俺の猫ヅメどうかな? 一応父ちゃんに手伝ってもらうことなく、俺一人で作ったんだぜ!」 


 爺ちゃんが剣を持った途端に、今までの好々爺っぽい雰囲気が消えて、これぞ職人という雰囲気がびしびし出てくる。


 うおう、この雰囲気。俺まで緊張しちゃうぜ。


「一人でこれを作るとは、アイアンは将来立派な鍛冶屋になれるのう」


 爺ちゃんは婆ちゃんに剣を手渡す。婆ちゃんも同じだ。やっぱり本職の鍛冶屋なだけあって、鍛冶製品のチェックは厳しくなるのだろう。


「ええ、本当ね。いい出来だわ。鉄をベースにミスリルを30%くらい混ぜてあるわね?」

「うん」

「素晴らしいわ。焼き入れなんかもアイアンちゃんがやったの?」

「ううん、焼き入れはやってないんだ」

「やってない? それは、焼き入れはタングにやってもらったってことかの?」

「ううん、猫ヅメは金属加工魔法だけで作ったから、焼き入れはやってないんだよ」


 普通の鍛冶は金属を熱して叩くわけなんだけど、叩く技術もなければ焼き入れとかの知識もない。なので俺の猫ヅメというか、俺がやる鍛冶的なことは全部、金属加工魔法まかせだ。


「金属加工魔法だけでこれを作ったの?」

「うん。金属を熱したり、叩いたり、焼き入れしたり、普通の鍛冶って難しいんだもん」


 焼き入れとか焼き戻しであれこれいじるより、金属加工魔法でいじったほうが俺には楽なんだよな。金属加工魔法のほうが、より細かい調整も出来るし。


「じゃからって、金属加工魔法で全部やるなんぞ、魔力が持たんじゃろう?」

「猫ヅメくらいなら何本か作れるよ? 流石に2号君作るときは何日かかかったけど」

「アイアンちゃんはすごいのね!」

「そんなことないさ!」


 その後も30mmボルトアクションライフルや、無反動砲なんかも紹介した。2号君にも一緒に乗って、その辺を少し散歩したりもした。


 そんな感じで爺ちゃんと婆ちゃんと遊んでいたら、あっという間に夕飯の時間になった。


「では、こうしてみんなで集まれたことに、乾杯!」

「「「「「乾杯!」」」」」


 クロライト爺ちゃんの乾杯の音頭で、夕食がスタートする。今日のディナーのメインディッシュは、俺とジンクが仕留めた軍鶏モンスターの肉料理だ。お土産として持ってきたやつなんだけど、食べるならみんな一緒の時がいいってことで、今日まで大事に取ってあったんだ。


「ほほう、この肉は美味いな。鶏肉っぽいが、何の肉なんじゃ?」

「本当ですね、お爺さん。こんなに美味しい鶏肉を食べるのは久しぶりですね」

「この肉はパラージから持ってきたお土産だ。ランク4の軍鶏モンスターの肉だぞ」


 爺ちゃんの質問に父ちゃんが答える。


「ほう、タングが取ってきたのか?」

「いや、俺じゃない。取ってきたのはアイアンとジンク君だ」

「なんと! それは本当か?」

「うん!」

「アイアンちゃんはすごいのねえ。あ、それでミサイルが付いていたの?」

「うん。ただ、こいつ倒した時はまだミサイルがなくってね、めっちゃ苦戦したんだ。だから、飛んでる軍鶏モンスターの対策でミサイルくっつけたんだよ」

「なるほどのう。この年で金属加工魔法を自在に操り、二人でランク4の軍鶏モンスターまで仕留める。アイアンはすごいんじゃのう」

「本当ですね、お爺さん」

「がっはっは、二人とも驚くのはまだ早いぜ。この程度のことで驚いてちゃあ、明日アイアンの戦ってる姿を見たら、腰ぬかしちまうぜ!」

「うむ、実に楽しみじゃわい」

「ええ、本当ですね」


 その後もまったりとみんなで過ごして、夜は更けていった。


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