第76話 2号君対ジンクの武装ゴーレムだぜ!
ヒポドラゴンゴーレムに乗せてもらったりして、充実した1日を過ごした次の日の朝。父ちゃんと母ちゃんにシュタールの言っていたバトル大会のことを聞くことにした。本当は昨日の夜聞きたかったんだけど、パパラチアさんのヒポドラゴンゴーレムに乗ったりしたせいか、めちゃくちゃ疲れてたっぽくってな。気が付いたら寝てたんだよ。
「なあ、母ちゃん。闘技場でのイベントって知ってる?」
「もちろん知ってるのよ。私は出場したことないけど、結構人気のイベントなの。アイアンちゃんも出てみたい?」
「うん。今日カッパーアンドレッド社ってところに行ったときに知り合った、シュタールっていうやつがいたんだけど、そいつが出るっていうもんでな」
「あら、さっそくお友達を作ったの? 流石ねアイアンちゃん」
「そいつ、俺みたいに戦車に乗ってたんだぜ!」
「シュタール君の家名はカノーネンシュミート、大砲鍛冶屋さんの息子だったの。私の目から見ても悪くない戦車だったわ」
婆ちゃんも俺の話をフォローしてくれる。
「なるほどな。確かにドワーフの国では戦車は下火だが、2号君を見ていると、戦車が大砲を生かすには合理的な乗り物ってことはよくわかる。大砲鍛冶屋が大砲を最大限生かせる乗り物の研究をしていてもおかしかないな」
「うん、たぶんそうだと思う。シュタールも親と作ったって言ってたから。それで、バトル大会に出たいんだけど、いいかな?」
「もちろんいいのよ!」
「ああ、構わないぞ。2号君の強さをこの街の連中に知らしめてやれ!」
「おうよ!」
きっと大丈夫だとは思ってたけど、無事にバトル大会への出場の許可が出るとちょっと安心するな。あとはジンクがラピおばちゃんから許可を取ってきてくれればいいんだけど。
朝ごはんを食べ終えて、のんびりと家族団らんを楽しんでいると、ジンク達がやってきた。ジンクは昨日とは違い今日は武装ゴーレムに乗ってきたようだ。すると、挨拶もそこそこに、いきなりジンクが勝負をふっかけてきやがった。
「なあ、アイアン。勝負しようぜ」
「勝負? それよりバトル大会への参加の許可はもらえたのか?」
「大丈夫だ。父さんにも母さんにも許可もらったからな。それよりも、ちょっと勝負しようぜ。なに、大したことじゃない、お前の2号君の主砲で、俺の武装ゴーレムを攻撃してくれるだけでいいんだ。まあ、あれだ。バトル大会の前哨戦とでも思ってくれればいいさ」
「へ?」
おいおい、なにを言い出すんだこいつは。俺の2号君が出来た時、2号君の主砲を恐れて勝負を逃げたのは確かジンクだったはずだ。それが今になって勝負だと? わけがわからん。
「はっは~ん、さては俺に主砲を防がれるのが怖いんだな。そうだよな、主砲が防がれたとなりゃあ、2号君の存在価値にかかわるもんな」
ほほう、言ってくれるではないかジンク君。その勝負受けて立ってやる!
「ぴき。いいだろう。その勝負、受けて立ってやる!」
「ぴきって口で言うかよ。まあ、そういうわけだから頼むぜ」
「最初に言っとくが、防げずに武装ゴーレムが壊れても知らねえからな」
「ああ、大丈夫だ・・・・・・。さて、じゃあ移動するか」
「おう」
俺は2号君に乗り込み、ジンクの武装ゴーレムの後に続いて走り出す。今回の同行者は母ちゃんとラピおばちゃんだ。まあ、いつものメンバーってやつだな。
「そういや、どこ行くんだ?」
「街の外だ。街の外に実験場みたいな場所があるって話でな。この辺の工房の人たちが危険な実験をするときに行くらしいんだ。そこでなら、好きに暴れてもいいんだって」
「へ~、そんなところがあるんだ」
ジンクの説明だけじゃ物足りなかったのか、ラピおばちゃんがもう少しフォローをしてくれる。
「セントラルシティーは建物がかなり密集しているでしょ? だから、パラージのように各工房が実験場みたいなものを作る余裕がないんだよ。そこで、街の外にそういう場所を求めたってわけだね」
「なるほど、確かに街のあちこちで軍事兵器の実験をやられちゃあたまんないもんな」
「そういうこと」
目的の場所は、門を出て300mくらいのところにあった。街に来たときは夕暮れ時だった上に、城壁ばかり見てて気づかなかったぜ。
「さ、行きましょう」
「「うん」」
実験場はかなり広い。街の外ということで、スペース的な制限がないからなのかもしれないが1000m×500mくらいありそうだ。構造としては、この辺の土を軽く掘ってたいらにし、その掘った土で壁を作っているようだ。だから、実験場は窪地みたいにへこんだ構造になっている。
「ここに来るのも久しぶりね」
「ほんとうね」
「昔はよく来たの?」
「そうなのよ。ほら、街の中って、ゴーレムで遊ぶには何かと狭いでしょ? だから、よくここでゴーレムを使って遊んでいたの」
「なるほど~」
ちなみに、現在この実験場にいるのは俺達だけだ。まあ、ほぼ朝一と言ってもいい時間だから、もし使う人が来るとしても、これからかな。
「お~い、アイアン。早速やろうぜ」
「おう、わかったぜ。何mくらいのところから撃てばいい?」
「100で頼む!」
「おっけ~」
ジンクの武装ゴーレムが壁の前に立ち、盾を構える。ジンクの武装ゴーレムの盾はかなりの大きさだから、盾の後ろで腰を落として、半身の姿勢で隠れられると、完全に本体が見えなくなる。このどっしりとした構え、受け流すとかそんな小細工なしに、完全に受け止める気でいるようだ。
おもしれえ、そっちがその気ならこっちだってやってやるぜ。俺は100m離れた位置からジンクの武装ゴーレムの盾のど真ん中に照準を合わせる。
母ちゃんの防御魔法があるから、もしジンクの武装ゴーレムがこの砲弾を防げなくても、ジンク本人が怪我をすることはないだろう。でも、それだとバトル大会にジンクが出場できなくなるか? いや、ジンクなら生身でもいいか。というか、シュタールのいう未就学児の部って、武装ゴーレムに乗って出れるのかな? 武装ゴーレム持ってる子供なんて、普通に考えたらそんなに多くなさそうなんだけど。その辺のことは細かく聞いてなかったな。あとで母ちゃんに確認するか。
「準備は良いか? 念のために聞くけど、ぴかぴか弾でいいんだよな?」
「当たり前だ。こい!」
俺はローダーゴーレムにぴかぴか弾を装填してもらい、炎金属融合魔法を弾頭にかける。そしてさらに火魔法で薬きょう内の火薬を強化していく。たっぷり10秒くらいかけて、本気も本気、超本気モードの強化を施す。そして。
「いくぜ、ジンク! 2号君ぴかぴかファイヤー!」
「きやがれ!」
ちゅっど~ん!
凄まじいマズルフラッシュとともに、ぴかぴか弾がジンクの武装ゴーレム目がけて飛んでいく。そして、ジンクの武装ゴーレムの盾とぴかぴか弾がぶつかった瞬間、凄まじい爆炎が周辺を襲った。
え? ぴかぴか弾は、込められた魔法こそ炎と金属の融合魔法だが、砲弾の種類としてはあくまでもAPCR弾だぞ。爆発なんてするわけねえ。にもかかわらず爆発したってことは、ぴかぴか弾が破損して俺の込めた魔法ごと粉々に吹っ飛んだってことか? ぴかぴか弾に込められた俺の残留魔力を探してみるものの、大きな反応がない。くそ、ぴかぴか弾が粉々に吹き飛んじまってる。まさか、ジンクの武装ゴーレムの盾を貫通しなかったってのか? いや、ありえない。本気の攻撃だぞ。防げるわけねえ。そうか、母ちゃんの防御魔法か。確かに母ちゃんの防御魔法を抜けないのは想定内だ。武装ゴーレムは貫いて、ジンクにかかっている母ちゃんの防御魔法に当たった衝撃で砕け散った。これならありえるな。うん、きっとそうだな。
「相変わらず凄まじい威力だな」
爆炎の中から、ジンクが声をかけてくる。いや、無線で声をかけてくる。
嘘だろ。
「俺のミスリルの盾がこうもあっさりダメになるとはな。流石はアイアンのぴかぴか弾だぜ」
なおもジンクは爆炎の中から話しかけてくる。
んなバカな。
母ちゃんが風魔法を使い、爆炎を吹き飛ばす。姿を現したのは、盾に大きなヒビが入りながらも、問題なく歩行してこちらに向かってくる、ジンクの武装ゴーレムだった。
「ま、なんだ。今回は俺の勝ちってことで」
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