第71話 カッパーアンドレッド社2だぜ!

 俺は好奇心を頑張って抑えてなんとか機関銃と武装ゴーレムが並んでいるコーナーにまでやってきた。


「この機関銃コーナーは、機関銃の大きさがわかりやすいように、一押し商品を武装ゴーレムに装着させた状態で展示をしているんだ」


 シュタールの言うように、展示場には5体の機関銃を装備した武装ゴーレムが並んでいた。そして、それ以外の場所にも所狭しと機関銃が並んでいる。


「お、MGシリーズを装備したのもいるんだ」

「ああ、あれはアイアンのと同じMG30だな。MGシリーズはカッパーアンドレッド社で一番の売れすじだからな。ああやって一番目立つ位置に飾られてる。あの周囲にはMGシリーズをカスタマイズした製品もいっぱい並んでるぜ」

「へ~、どんなカスタマイズなんだ?」

「多いのは大口径化と連射速度上昇系だな。もっとも、極端なのは結局使いにくいみたいでな。口径は15~30mmくらい、連射速度も秒間10発くらいのが一番売れてるんだってよ」


 そりゃそうだな。なにごとにもバランスってものがあるからな。


「ちなみになんだが、ここにいる5体の武装ゴーレムは、カッパーアンドレッド社の選ばれし5体って言われててな。この5体に装備されることが、ここの職人の一種のステータスになっているって話だ。審査も結構厳しいらしくて、めったにゲテモノが搭載されることはない」

「めったにってことは、多少はあるんだ」

「ああ、今はないっぽいけどな。最近だとバカでかい機関銃があったって話だ。発射速度を秒間10発から落とさずに、極限まで大口径化したって売り込みだったかな? ただ、装備して二日で、あまりの重さに武装ゴーレムが壊れたらしいんだ。もうちょっと武装ゴーレムが粘ってくれれば、俺も見にこれたんだけどな」


 ここにある武装ゴーレムは、父ちゃんが作ったジンク用の3mの武装ゴーレムと違って、大人が使う5mのフルサイズの武装ゴーレムだ。それが重さで壊れるとか、どんだけデケえ機関銃作ったんだよ。でも、俺もちょっと見てみたかったな。


「俺も見てみたかったな」

「見ようと思えば見れるぜ」

「そうなの?」

「ああ、軍が安く購入して、東の砦に設置したらしいからな」

「遠いな・・・・・・」

「まあな」


 その後も武装ゴーレムが装備しているものを中心に見ていく。ガトリングガン、リボルバーカノン、ガスト式機関銃なんかもあるな。リボルバーカノン以外は名前が違うけど、シュタールの説明を聞く限り、構造的には地球にあるガトリングガンやガスト式機関銃と一緒のようだな。まあ、名前が違うのは仕方ないな。ガトリングもガストも、人名だしな。


「この辺のは連射性能を重視した奴だな。特にこの多銃身回転式のやつはすげえ連射速度だぜ。まあ、どれもこれも、MGシリーズと比較すると重いし、発射速度が速すぎて、魔法による強化を乗せにくいって欠点があるけどな」


 どれもこれもかっこいいんだが、毎秒1発までしか金属強化魔法を乗せらんない俺には、宝の持ち腐れだな。でも、ジンクのやつなら使いこなせそうなんだよな。案の定ガトリングガンをちょっとほしそうな目で見ている。


「ジンクはガトリングガンが気に入ったのか?」

「いや、ちょっと気になっただけだ。連射性能は素晴らしいが、重さが気になるな。俺の武装ゴーレムのメイン武器はあくまで剣だ。機関銃は牽制なんかを目的としたサブ武器だからな。ここまで重いと、剣での戦いの際に邪魔になりそうだ」

「その考えは正しいと思うぞ。俺の父さんも重さに関しては文句を言っていたからな。特に、本体重量だけじゃなくて、弾を大量に装備することを考えると、非常に重くなるんだ。実際その重さの欠点のせいで、MGシリーズのほうが圧倒的に売れてるって話だしな」


 でも、見てる分にはやっぱガトリングガンはかっこいいな。ただ、ガトリングガンって外部動力で動く多銃身回転式機関銃のことじゃないのかな? ソ連で使ってたようなガス圧式っぽいのとか、スロスチン式っぽいのどころか、ミトラィユーズ砲まで一緒のところに置いてあるのはどうなんだろう? いや、ここのは正式にはロータリーキャノンって名前みたいだから、別にガトリングガンってわけじゃないからいいのか。でもミトラィユーズ砲だけは絶対違うと思うんだ。だって、ミトラィユーズ砲って、多銃身だけど回転も連射もしないじゃん、あれ。


 その後もシュタールに案内してもらいながら俺達は歩く。


「ここにあるのは魔法弾機関銃だな。銃弾に魔法をかける技術だったり、それをやりやすくするための回路を組み込んだ機関銃のことを魔法機関銃っていうが、ここにあるのは全く違うものだ。銃弾の代わりに魔法を飛ばす機関銃だ」

「それって、普通に魔法使うんじゃだめなのか?」

「もちろん使える奴はそれでいいし、威力だけなら魔法機関銃のほうが上だ。でも、魔法には属性や性質によって得手不得手がどうしてもあるだろ? これなら苦手な属性の弾でも、ある程度の威力で撃てるんだよ」


 なるほどな、魔力さえあれば一定の威力の魔法を撃てるってことか。そういわれるとそこそこ便利なのかもしれないな。モンスターによっては物理的な防御力は高くても、特定の属性や魔法的な防御力が低い連中がいるって話だからな。しかもドワーフの場合、そもそもの魔力はあっても、ジンクみたいに、身体強化と武器を強化する金属あたりの魔法は得意だけど、属性魔法を撃ちだすのは苦手って連中も多いようだしな。


 そんな風にシュタールの説明を聞きながら見学していた俺達だったが、あっという間にお昼になってしまった。くう、楽しい時間ほど早く過ぎるっていうけど、本当に早いな。ここに来たのが10時ちょっと過ぎだったから、もう2時間もたってるのかよ。名残惜しいが、シュタールとはここでお別れだな。


「なあ、アイアン、ジンク。お前らは闘技場でのイベントに出るのか?」

「わかんない。気にはなってるんだけど、どんなのか知らないんだ。母ちゃん達が許可くれれば出ると思うぜ。な、ジンク」

「ああ」

「そうか、俺も未就学児部門に出る予定だから、そんときゃお互い頑張ろうぜ」

「「おう!」」

「じゃ、またな! もし俺に用があるなら、アイゼン=カノーネンシュミートの店に来てくれ、そこが俺の家だ」

「わかったぜ。俺達は、え~っと婆ちゃんちに来てくれ!」

「おいおい、アイアン。その説明じゃ誰もわかんねえだろ!」


 んなこと言われてもな、婆ちゃんの店の名前とかわかんねえんだよな。


「ふふふ、大丈夫よ。私のお家の場所は、シュタール君のお母さんにちゃんと伝えてあるから。もちろんシュタール君のお家の場所も教えてもらったわ」

「はい」


 シュタールのおばちゃんも頷いている。な~んだ、大人は大人同士でちゃんとコミュニケーションをとってたんだな。っていうか、目の前の機関銃に釘付けだった俺らより、よっぽどちゃんとしてるな。


「じゃな~!」

「「またな!」」

「それじゃあアイアンちゃん、ジンク君。行きましょうか」

「「おう!」」


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