第68話 運命の出会い? だぜ!
婆ちゃん家に到着した翌日。俺は婆ちゃんとジンクの3人で仲良くお出かけすることになった。
「婆ちゃん、紹介するぜ。こいつがジンクだ!」
「おはよう、ジンク君、私はアイアンちゃんのお婆ちゃんの翡翠よ」
「おはようございます。ガリウムとラピスラズリの息子のジンクです」
「あらあら、ジンク君は礼儀正しいのね」
なんでこの3人なのかって? 理由はそんなに複雑じゃない。まず父ちゃんと爺ちゃんは案の定明け方近くまで飲んでいたようで、いまも工房でくたばってる。しかも、いつの間にかガリウムのおっちゃんとラピおばちゃんの父ちゃんまで来ていたみたいで、男3人でダウンしてた。
数が合わないは気にしないでくれ。最初酔いつぶれてたのは男4人だったんだけどさ。ラピおばちゃんの父ちゃんは、朝ラピおばちゃんの母ちゃんに連れていかれたんだ。だって、今日は平日だし、ジンクの話によるとラピおばちゃんの両親は学校の教師だからな、普通に仕事なんだそうだ。まあ、武士の情け? で、俺が回復魔法をかけてあげたから、たぶん大丈夫だ。え? 父ちゃん達残りの3人にもかけてやれって? それは無理だ。母ちゃんとラピおばちゃんに怒られるからな。あと、母ちゃんとラピおばちゃんは、昔の友達とお茶してくるんだってさ。
ってなわけで、俺達は3人で街へと繰り出すことにした。
「2人はどこに行きたいのかな?」
「ジンク、どこ行こう? ここはやっぱ二人に共通のカッパーアンドレッド社か?」
「そうだな、そうしよう」
「カッパーアンドレッド社って、鉄砲とか機関銃を作ってるあの武器屋さん?」
「うん。俺の2号君や、ジンクの武装ゴーレムにも搭載されてるんだ」
「わかったわ。それじゃあお出かけはその2号君に乗るってことでいいかしら?」
「うん、いいぜ! 母ちゃん専用シートはとっちゃったから乗り心地はあんまりよくないかもだけど」
「大丈夫よ」
「ジンクもいいか?」
「ああ、構わねえよ。俺は砲身にでもまたがってるからな」
「じゃ、いこっか!」
俺は2号君を取り出し、ローダーゴーレムにちょっとの間降りていてもらう。そして、俺はいつものコマンダーシートに座って、婆ちゃんにはローダーゴーレムのいたシートに座ってもらう。ローダーゴーレムのシートも一応上下するようになってるから、砲塔の上からのんびり景色を眺めることは可能だ。ジンクは宣言通り砲塔正面に堂々と座った。
「じゃあ、私が案内するわね」
「うん、婆ちゃんお願い!」
「お願いします」
俺達は婆ちゃんの案内でカッパーアンドレッド社へと進んでいく。
「あら、戦闘用車両って聞いていたけど、思ったよりもずっと乗り心地がいいのね」
「まあな! サスペンションも付いてるし、何より履帯がゴム製だからな、ちょっとした路面の凹凸なんかは全部吸収してくれるんだぜ」
それに、魔道エンジンはモーターみたいに振動がないからな。そのことも合わさって、整備された道路なら実に滑らかに進んでくれる。
「へ~すごいのね。そうだ、ただ行くだけだと退屈でしょう? 移動の間に、お婆ちゃんがこの街を簡単に紹介してあげるわね」
「「うん!」」
「この街は3つの大きな道路によって、3つのエリアに分かれているの。その大きな道路は、街を東から見ると、ちょうどYの字の形になっているんだけどね。西側のエリアにはおっきなお城があるから、通称お城エリアって呼ばれてるのよ。ほら、あの大きな建物よ」
昨日はもう夕暮れ時で気付かなかったけど、確かにお城っぽい巨大建築物がある。
「あれ? でもお城って、ここは王都じゃないんだよね?」
「そうよ。でも、王様の中には、武闘派の王様もいてね。そういう人が、俺は王都なんて安全地帯じゃなくて、もっと前線に近い場所のほうがいい! って言ったみたいで、この街の庁舎をあんなお城風に改造しちゃったそうなの」
「「そうなんだ~」」
「本当のお城じゃなくて、あくまでも街の庁舎だから、誰でも上まで行けるわ」
「おお~、景色もよさそうだし、一度行くのもいいかもしれねえな」
「ああ、そうだな」
俺もジンクも、なんだかんだで高いところとかは好きなんだよな。
「ただ、街の庁舎や議会なんかが集まってるだけのエリアだから、それ以外に面白いところはないのよね」
まあ、それは仕方ないな。日本でも国会議事堂には修学旅行で行かされたけど、面白いところじゃなかったしな。
「それで、北東に位置するエリアが、戦士エリアね。ドワーフ軍最大の軍事拠点に、ハンターギルドの総本部。それに、いろんな武器や兵器を使うための訓練場なんかのあるエリアよ。ここにはドワーフの国最大の闘技場もあるの。もうちょっとするとこの闘技場でお祭りがあるのよ。それでこのタイミングに来てもらったの。学校へ行く前の子達のためのイベントもあるのよ!」
「じゃあ、俺達も出れるのか?」
「もちろんよ!」
「おお~!」
「こりゃあ、俺も母さんに相談しないとだな!」
「そして最後が南東エリア、兵器エリアね。兵器エリアってみんな言うんだけど、別に兵器だけってわけじゃないのよ。確かに兵器関連の工房が圧倒的に多いんだけど、いろいろ製造関係の工房が集まっているエリアなのよ」
「ってことは今いる場所は兵器エリアってこと?」
「そうよ。私のお家も、今向かってるカッパーアンドレッド社も、兵器エリアにあるの。だから、割と近いのよ。ほら、もう見えてきたわよ」
俺達の目の前に、どことなく俺達の使ってる機関銃に似たモニュメントが現れる。
「なあなあジンク、あのモニュメントって」
「ああ、間違いねえ。カッパーアンドレッド社のMGシリーズだ」
おお~、いきなりきたぜ、カッパーアンドレッド社の機関銃、MGシリーズが! 俺もMGシリーズには随分とお世話になっている。2号君に搭載されてるのが口径30mmのMG30だし、1号君に乗せてたのが口径15mmのMG150なんだぜ。
なんで30mmがMG30って名前で、15mmがMG150なのかって思うかもしれないが、口径が小さいほうがなんでか数字が細かくなるんだよな。地球でも、20mm機関銃なんかはきっちりmm単位で終わるけど、それ以下のサイズの口径だと、なんでかきっちりmm単位で終わる口径はあんまり多くない。有名どころだと、拳銃やSMGで使われてる9mmくらいのものだ。機関銃でよく使われている口径っていったら、5、56mmだとか、7、62mmだとか、12、7mmだとか、大体中途半端な3桁なんだよな。いや、12、7mmだけは表記の仕方によっては50口径ときりのいい数字なんだけど、ほかの2個はどういう表記でも半端な3桁なんだ。
だからきっと、この世界でも小口径ほど半端な数字になるんだろう。そして、MG150もそういう意味であえて最後の0を残してるんだと思うぜ。
「ふふふ、アイアンちゃんのこの30mm機関銃ともどことなく似ているわよね。ここが機関銃の老舗メーカー、カッパーアンドレッド社の本社よ」
あのモニュメントがMG30なのかはわかんない。なにせMGシリーズは口径が代わっても、見た目はほとんど一緒だからな。
そして、カッパーアンドレッド社の本社は、すっげえ大きかった。塀も高さはともかく、かなり長い。こりゃあ1辺1km以上あるんじゃねえか?
「「はあ~」」
俺とジンクは揃って口を開けてポカーンとしていた。だってしょうがないだろ? こんなでっかい敷地の工房も店舗も、見たことないんだからな。
「工房の見学は出来るかわからないけど、店舗や展示スペースはあるから行きましょうか」
「「おう!」」
俺達は店舗横の駐車場へとやってくる。うん、流石は戦士と兵器の街だぜ。駐車場に止まっている乗り物も、武装ゴーレムだとか、ジンクの家でも見た、重装甲型の荷物運搬用の魔道自動車とかばっかりだ。やべえな、この駐車場だけでも楽しめるぞ。
「おいジンク、これはすげえな」
「ああ、同感だ。ただの駐車場なのに、兵器の展示場みたいになってるじゃねえか」
「ふふふ。カッパーアンドレッド社は逃げないし。駐車場を一周しましょうか」
「「うん!」」
そして俺達が駐車場を満喫していると、1台の戦車が駐車場へとやってきた。お、6号戦車か。まあ、戦車ならここにくるのも当然か。俺の2号君にもMG30が付いてるしな。
「は? 戦車?」
待て待て待て! ナチュラルにスルーにしかけたけど、なんで戦車がいるんだよ! ドワーフの国では対モンスター戦において、武装ゴーレムのほうが優れているからって、戦車は廃れていたはずだぞ? しかも6号戦車だと!?
俺は思わず今駐車場に入ってきた戦車を2度見した。すると、向こうもこちらを見て固まっていた。
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