第67話 戦士と兵器の街セントラルシティーだぜ!
「にしても、なんだこの街、デカすぎねえか?」
「だな。城壁のレベルはパラージと同等に見えるが、その長さがすげえよな。パラージの何倍もありそうだ」
俺はセントラルシティーのあまりにも長い城壁にただただ感心していた。高さはパラージと同じくらいだけど、その横幅がとにかく長い。俺達は一番近い門から入るわけじゃなく、時計回りに城壁の外を回っていたのだが、どこまで行ってもずっと城壁が続いている。それに、門の数も多い。門がなんかそこら中にあるんだよな。開口部が多いのって防御力的にどうなんだろうって思いもするが、こんだけ大きい街だと、入り口もいっぱいないと対応できないのかな? 俺達はその後も城壁の外を進んでいく、空いてる門を探してるのか、母ちゃんの実家に近い門に移動してるのかはわかんないけど、まあここも母ちゃん達にお任せだ。
「そうそう、アイアンはこの街が何で有名な街か知ってるか?」
「いや、さっぱりだ」
「この街は、戦士と兵器の街セントラルシティーって呼ばれているらしいぞ」
「へ~、兵器の街か。母ちゃん達の故郷って以外にも、楽しめそうな街だな!」
「だろ? 俺達の使ってる機関銃を作ったカッパーアンドレッド社をはじめとした、いろんな兵器会社の本社にして製造工場なんかがあるのがこの街なんだぜ」
「マジで! そりゃあすげえ、見学に行きたいな!」
「ああ、俺も同感だ。工房を見せてもらえるかはわからんが、店舗はあるはずだからな。製品を見るくらいはできるはずだ。俺の武装ゴーレムの関節を作ってる会社もあるし、アイアンの2号君の履帯とか、魔道エンジンとかを作ってる会社もあるはずだからな」
「おお~!」
やっべえな。マジで楽しそうな街じゃねえか。俺とジンクがまったり話してる間に、どうやらお目当ての門に到着したようだ。街に入るために門の列に並ぶ。
「そういやさ、母ちゃんの実家が魔道具屋ってのは聞いたんだけど、ラピおばちゃんの実家って何してんの?」
「母さんの実家は特定の商売をしてるわけじゃないぞ」
「そうなの?」
「ああ、母さんの両親は二人とも学校の教師なんだってさ」
「そうなの!?」
「おう。母さんもエメラおばさんも、二人に教わってたんだとよ」
「そうだったのか、それでラピおばちゃんは教えるの上手かったのかな?」
そう、俺達の勉強を見るのはたいていラピおばちゃんだった。
「そうかもしれんな」
そして、列はするすると進んでいき、俺達の番になった。ちなみに街に入る手続きは超簡単だ。市民カードあたりを見せて、街に来た目的を言うだけでさくっと入れる。まあ、外国に行ってるわけじゃなくって、あくまでも国内の移動だしな。パラージでもゴールドタウンでも、街の出入りはそんなもんだった。
「ようこそセントラルシティーへ、本日はどういったご用件で?」
「里帰りよ」
そして、母ちゃんが街へ来た目的を言いながらカードを差し出すと、門番さんの目の色が少し変わった。
「このゴーレムとお名前、もしやあなたは」
「し! おしゃべりな門番さんは痛い目見るのよ」
「はっ、失礼しました。どうぞお通り下さい」
おお~、やっぱ母ちゃん凄いんだな。なんか門番さんが一方的に母ちゃんのことを知ってるみたいだし。そして、同じようにラピおばちゃんにも門番さんは感動していた。やっぱこの二人、ペアでなにかしたっぽいな。
門を無事に通過し、門前広場まで移動する。は~、流石巨大都市だな、もう夕暮れ時の時間だってのに人が多い。門がたくさんあったから、一個一個の門前広場は多少は空いてるのかと思ったら、混雑具合は、ゴールドタウンクラスだ。
「今日はこのまま真っ直ぐに婆ちゃんの家に向かうの?」
「ええ、そうよ。とはいってもお家はすぐそこよ。一番近い門から入ったからね。じゃあ、行きましょうか」
「おう!」
その後も母ちゃんのゴーレムを先頭に、のんびりと街の中を進んでいく。俺としては街の景色を楽しみたいところだったんだが、すっごいあっさりと母ちゃんの実家に到着してしまった。どうやら母ちゃんの実家は門前広場からすぐのところにあったようだ。
「さ、到着したのよ」
「ここが母ちゃんの実家?」
「ええ、そうなのよ。ラピちゃんのお家は斜めお向かいさんね」
「結構近いんだ」
「幼馴染だからね! それじゃ、入りましょうか」
「うん」
母ちゃんの実家は、ちゃんとしたお店のようだ。なにせ門からすぐのところに、店舗があるからな! 薄暗くてはっきり見えないのが惜しいが、年期の入ったしぶい店舗のようだ。ちなみに自称気難しい鍛冶屋の我が家の場合、工房はあっても、店舗はない。父ちゃん、接客とかする気がまったくないんだよな。
敷地の広さは、家よりは狭そうかな? 塀の長さからすると、一辺200mくらいかな? まあ、ど田舎といっていいパラージと、こんな大都会を一緒にしちゃだめだな。
俺達はジンク達と別れて母ちゃんの実家へと足を踏み入れる。敷地内には店舗以外に、工房と思われる建物、倉庫、そして、家があった。そして、ドアノッカーを母ちゃんががんがんと叩く。すると奥から、どたどたと足音がなる。そして扉がどかんっと開くと、色違いの母ちゃんが現れ、俺を抱っこしてきた。
「アイアンちゃん、お久しぶりね! いえ初めましてかしら。翡翠お婆ちゃんよ!」
「うん、初めまして、婆ちゃん! アイアンオアだよ」
婆ちゃんはその名の通り、翡翠の色の目と母ちゃんのような銀の髪のドワーフだ。年は知らないが、母ちゃんそっくりだ。
「これこれ、翡翠よ。ずるいぞ。わしだって抱っこしたい」
「母さん、父さん。わざわざ里帰りしてあげた娘に、何か言うことはないの?」
「あら、エメラ、タング君。お帰りなさい。それじゃあアイアンちゃん。ご飯にしましょうね。今日は腕によりをかけてお夕飯を作ったのよ!」
「うん!」
俺は婆ちゃんに抱っこされたまま、家の奥へと進んでいく。家のつくりはどことなく俺んちに似てるな。
「まあ、なんだ二人とも、とりあえず食事にしよう」
「もう、しょうがないわね」
「お義父さん、お久しぶりです」
「久しぶりじゃのう、タング君。今日はアレを取り寄せておる」
「アレですか?」
「うむ、アレじゃ。久しぶりに工房で二人の親睦を深めようではないか!」
「素晴らしいアイデアです!」
「「が~っはっはっはっはっはっは!」」
その日、俺達は母ちゃんの実家でのんびりと過ごした。母ちゃんがこの街に来たくなかった理由を聞いてみたい気もしたが、まあ、それは母ちゃんのいないタイミングを狙って婆ちゃんか爺ちゃんに聞くとしよう。いや、案外ジンクのやつがラピおばちゃんの両親から聞き出してる可能性もあるよな。まあ、焦る必要はないな。というわけで、その辺の好奇心は抑えて、俺はご飯を食べて、爺ちゃんとお風呂に入って、その後はのんびりおしゃべりだ。途中、父ちゃんと爺ちゃんが男だけの話があるとかいって、工房へ向かっていったが、まあ、十中八九男二人で気ままに飲みたいだけだろうな。
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